美術教師の喜び

 今の時期は、実は私にとってもっとも喜びを感じる時期です。それは3年生が卒業制作「自分という人間の存在証明」に取り組んでいるからです。始業前から教室に来ると、すぐに制作がはじまります。あちらこちらで、いろんなことをしています。
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 生徒に次のようなことを言いました。「高校の受検は今まで学んできたことが、どこまで身に付いているのかを、他の人が測定する場でもあります。美術の卒業制作も今まで学んできた事を発揮させるのですが、どのように、どこまで発揮させるかは自分で決めます。一人一人出す答えが違います。それは生きることと同じだと思います。卒業制作にプライドを持って取り組んでください。」



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最初に宇宙空間を作ってから、アクリルガッシュで描き込んでいます。イーゼルの使用を推奨しています。
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モデル人形を置いています、描きたいイメージを実現のものとしたいとき、想像だけで描くのは難しいということは、話しています。モデル人形の他に、鏡を見たり、友達にポーズをとってもらったり、デジカメでポーズをとったものを参考にしたり…。このよう生徒が「こうしたい!」と思った時に様々な方法が選択できるようにしています。でも一番大事なことは生徒が本当に「こうしたい!」と思う事です。
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↑かつては、このような授業は中2でしていました。心棒は人体解剖図も見せながら心棒と骨格と針金の関係を例示します。モデル人形を見せて、心棒のことを考えさると理解されやすいということに最近気がつきました。
このような制作では生徒が実際にポーズをとったり、友達に聞いたりしています。
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↑理系が好きな生徒らしいです。ルービックキューブを手に持っています。これは透明水彩絵の具を使っています。パレットに色を出してかためたものを美術室に常備しています。
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↑まだアイディアスケッチの段階ですが、やっと決まりかけてきました。困難を乗り越えてくような絵になるようです。
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↑喜怒哀楽を表現したいとのこと。絵の具を楽しんでいます。色のバランスをとるのが難しそうでした。彼女は授業中ずっと立って仕事をしていました。本気で全体の調和を目指していたからです。そして座って描くのと立って描くのとでは筆の扱い方も違ってきます。この絵で、筆はリズムカルに動いていました。
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↑「先生、絵の具を使うのは苦手なので、鉛筆だけでもいいですか?」と聞かれたので、そのままにしておくと、一生絵の具を使うのは苦手と思われてはいやです。彼の前で水彩絵の具で描くところを見せてプレゼン。出来そうな見通しができたよう。

なお、本当は「苦手」なんて言わせないような授業がしたいです。まだまだですね、山崎くん。
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この前、「マイ サイン」とうの題材名で、木彫に取り組んでいました。日本の子どもだから、木のよさを知ってほしいという願いがあります。この生徒は卒業制作でも取り組んでくれるのは、何だかうれしいです。もちろん表現内容は違います。
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バレーでスパイクを打っているいるところです。同じバレー部の子にいろいろ相談していました。こういう教え合う姿は見ていてうれしいです。さて横顔がうまくいかないと相談されたので、鏡2枚使うか、横顔の写真とってもらうのもいいかも、と言ったらデジカメで撮ってプリントせずにモニターを見て描いていました、下がきが完成した時の彼女の笑顔がよかったです。
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通学路を描いています、今回は片付けの時間を節約したくて、ペーパーパレットを用意ていました。紹介したら気に入ってくれたようです。
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絵をつくるための準備です。でもあまりに紙が小さいので、「大きな紙の方がやりやすいよ、どう?」って聞くと、大きな紙に描く事になりました。もっと早く気がついて、声をかけてあげれればとも思いました。
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バレー部の子が、レジーブする手を描いていました。何度も描きなおしながら、納得できた様子。

自分が生徒の役に立てる、これはうれしいことです。

Commented by miyazaki at 2011-01-27 20:17 x
ここまで幅を広げているんですね。
以前、一度チャレンジしてうまく行かず、今は、基本となるもの(紙の大きさだったり、粘土のみ というふうに)を決めてそこから発展させています。

うーん ここまで育てるのには、まだまだ経験不足だな・・・・
Commented by yumemasa at 2011-01-27 21:05
miyazakiさん、感想ありがとうございます。これは、本当におもしろいです。もう、戻れません。でも、私も最初は自画像かレリーフ。その次に頭像も入れました。そして今は、それ以外のものもOK。実質的に何でもよいという感じです。
3年がかりで、どうですか?
おもしろいですよ、毎日、毎日楽しいです!
Commented by 石垣文子 at 2011-01-27 22:00 x
みんながみんな美術が好きで中学校に入ってくることはありません。そこには、根深い劣等感があります。特に中学生ってそれはそれは、はっきりそこを意識しますよね。でも、3年間の授業の中で、山崎先生は、《君は君で良いよ》というメッセージを発信し続けているんですね。きっと・・・・・だから、安心してみんなが制作に入れるんですよね!!
Commented by miyazaki at 2011-01-27 22:37 x
「9年間の集大成」「そしてチャレンジ」よくこの言葉を3年生の美術では使います。図工その前の遊びから始まった様々な表現を駆使して、道具や画材を選ばせいます。子供達は、「何で着色してもよいよ」という一言だけでもわくわくし始めます。おそるおそる「"クレヨン"でもいいんですか」「エアブラシ使ってみたいんだけど」もちろん、それが自分の思いを表すのに適切な画材かどうか、じっくり話をしてから結論ですが・・・・私の場合は、まだ、平面スタートなら半立体までかな。意外と許容範囲は広くなりますが。
その後の「評価」の大変さを忘れて、授業が始まってしまいます。
石垣先生 初めまして。
1年生の最初でいかに劣等感をなくすか・・同感です。常に課題です。苦手ならいいんです。努力してみようよ!って言えるから。嫌い!って言われると難しい。先に進めない。
でも、そんな子でも6年間で好きな図工の時間が必ず1〜2時間はもっているので、そこをどう思い出させ、つなげるか。いつも悪戦苦闘です(とはいえ、その発掘のような時間がまた楽しいんですが)。
もう一度、小学校で、図工だけでも授業をやってみたいと思う今日この頃です。
Commented by yumemasa at 2011-01-27 23:46
石垣さん、ありがとうございます。他の方から客観的にご意見をいただけることは、ありがたいことです。
そうですね、入学してくるときには「嫌い」という子がけっこういます。酒井式でやってきた子は、その反動で中学校で好きになってくれます。
でも、かつての私の授業では、今のように楽しんではくれなかったように思います。
きっとどうすれば、自分を高められるか、ということを大事にしているのがよいのかもしれません。
それにしても、最近子どもがかわいくて仕方がないです。
Commented by yumemasa at 2011-01-27 23:55
miyazakiさんも自由度が高いじゃないですか!生徒にどんな環境を準備するか、それは 子どもの学びの広がりや深まりに大きな影響を与えますもんね。
エアブラシもあるんですか。いいなあ。

さて、miyazakiさん、石垣さんは山梨の「学び研」で発表されたのですが、特別支援の子どもたちの指導には、学ぶべきことがたくさんありました。
miyazakiさん、秋田でお会いできますよ。このブログで知り合いが増えると、リアル世界がおもしろくなります。
by yumemasa | 2011-01-26 23:32 | 美術の授業(山崎) | Comments(6)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明