美術を通して何を育てるのか 上野行一先生の講演

 今日は上野行一先生から美術教育の本質に関わる大切な話を伺いました。「美術による学び研究会」代表である上野行一先生から120分たっぷりのお話です。(この企画をした石狩教育研究会に感謝)しかも「対話による鑑賞」のお話はほとんど抜きで、です。
 最近注目していた教育美術3月号の上野先生の書かれた文章「前略、せんせい様」は私はとても重要だととらえていましたが、その延長上にあるものでした。

 さらに上野先生の最新刊「私の中の自由な美術」は、鑑賞教育が副題となっていますが、実は美術教育の本質を語っている本でもあるととらえていましたが、まさにそうでした。この本は超おすすめの本です。
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 この講演会には、石狩はもちろん、札幌や旭川、空知などで活躍されている先生もかけつけてくれたことは、今後の北海道の美術教育のことを考えると、心強いことです。
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 さてInner Creativityは 上野先生のつくられた言葉、現場で教師をしているころから使われていたそうです。「子どもの学び」を何より大切にされていますが、その具体的なものの一つがInner Creativityということになるのでしょう。(山崎の解釈)





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 「美術による学び研究会」の主旨

 近年、アメリカやイギリスの教育界ではeducationという言葉が影を潜め、learningという言葉が多用されてきています。
 これは学校教育の場に限ったことではなく、美術館など社会教育の場でも同様の現象だといわれています。同様にわが国でも、「学びの○○○」や「○○○な学び」のように、学び(learning)を視点とした教育論や授業改革が広まってきています。

 教育(education)という言葉にまとわりついた「教師→学習者」という一方通行的な、知識伝授のイメージを払拭し、教育を学習者の視点から捉え直し再構築するという意味で、学び(learning)という言葉が流通しているのでしょう。

 学習者間の相互作用や共同性、体験や身体性からの育ち、一人ひとりの学びかたや個々に達成されたことなどを重視する学びという視点は、美術の教育においてこそ必要不可欠であると考えます。
 たとえば、相互性や共同性の具体的な表れである対話やしぐさに着目した授業分析、個々と集団における意味生成を充実させる鑑賞や表現のあり方、一人ひとりの育ちや変容の具体的な探究などが、学びという視点からの研究の焦点といえるでしょう。

1953年に翻訳刊行されたハーバート・リードの『美術(芸術)による教育』(“EDUCATION THROUGH ART”)は一つの時代を画しました。それから55年間、わが国の美術教育界ではその時の世相や社会の動向に敏感に応じながら様々な研究がなされてきました。

 それらに敬意を払いつつ、いま私たちはこの名著になぞらえ、「美術による学び」(LEARNING THROUGH ART)について研究することを提唱します。
2008年2月23日
上野行一
by yumemasa | 2011-10-08 23:26 | Comments(0)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明