絵日記は心の交流誌

 全国教育研究集会の夜の部で寺内定夫先生を囲んで、いろいろなお話を伺いました。
その中で、寺内先生が話された内容の一部をここに紹介させていただきます。
(公開については寺内さんからご了解いただいています。)

この話は寺内先生が取り組んでおられる「絵を聴く会」の中で取り上げられたものです。

絵日記は心の交流誌_b0068572_20274916.jpg(小学校3年生)「この前、学校のハムスターを見ていたら、ハムスターが寒そうにふるえていました。えさをあげてもふるえていました。
 わらをつめると少しおちつきました。生き物係なのでちゃんとできるかどうか心配です。」
 ユリカさんが学校で書いた絵日記です。このハムスターを描いてから文章を書いた絵日記です。ところが、ユリカさんは、巣の中のハムスターを正面から描いたこの絵が気に入らず、顔の部分を消しゴムで消してしまいました。
 そして描き直したのが次の絵で、巣にもぐりこんでいたハムスターがお尻をこちらに向けています。ユリカさんはどうしてわざわざ描き直したのでしょうか。その気持ちに共感することが絵を聴くという人間交流です。



絵日記は心の交流誌_b0068572_20281245.jpgユリカさんの描き直しは、文章と絵があわない、と感じたからです。このハムスターの絵は写実的に見えますが、実際のスケッチではありません。日頃からよく観察して、心に残っている姿を思いだし、顔のある絵を描き、文章を書いています。ハムスターはあまり寒いと冬眠状態になるということですから、巣にもぐりこんでいる姿に心配したのでしょう。
 ところが文章の「寒そうにふるえていました。えさをあげてもふるえていました。」と書いてみて、巣の中にもぐりこむ後ろ姿でなくては実感が出ないことに気がついたのでしょう。子どもがいかに誠実に小さな生命を見つめているかと、心を打たれました。これが子どものリアリティ感覚で、小さな動物に寄せる気持ちが簡潔に表現されています。

(補足〜山崎)子どもが持って来たのは最後の後ろ向きの絵でしたが、よく見ると消しゴムで消したのですが、うっすらと最初に描いた形が見えたのです。それを再現したのが最初の正面向きの絵だということでした。

寺内定夫絵で聴く子どもの優しさ」萌文社P150-151より引用

(記事掲載については寺内定夫さんのご了解を得ています。)

絵で聴く子どもの優しさ

 この記事は2005年1月11日に書いたものです。
Commented by hawaiianbreeze at 2005-01-14 06:37
おはようございます
「絵を聴く」ってなるほどと思うと同時に深いものなんだなと思わされました ユリカさんはこのハムスターをいつも観察していたから寒そうだとかが分かるんですものね、それを表現した絵なんですね 子供が描く絵は子供たちの思いも沢山詰め込まれているんですよね 娘もお絵かき大好きで良く描いていますが私はそこまで深く考えて受け答えをしていなかったと思いますね
最近はこれは何を書いたとか伝えてくれるようになりましたけどね。
Commented by yumemasa at 2005-01-14 15:03
娘さんの絵を通してたくさんお話を聴いてあげてください。それは、実は絵の指導ではなくて、子どもと心を通わせるということなのですね。だから絵を聴きながら微笑みが出てくるのでしょう。おおはしわあるどの大橋さんは絵は「心の窓」なんて言い方をしています。娘さんが絵を通して話をして、それが膨らんでいくと楽しいですね。
Commented by ビアンカ at 2005-10-03 17:59 x
この記事に深く感じ入りました。絵は技術よりもまず心なのだと、しみじみ思いました。子供達の描く絵を通して、子供達に共感してやりたいと思います。
by yumemasa | 2013-01-17 20:18 | 子どもの表現 | Comments(3)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
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