絵で聴く子どもの優しさ

 (この記事の2005年1月11日当時のものです)

 深川市の渡辺貞行先生が、5年前(2000年)「寺内さんって、すごい人がいるから、山崎くんに会わせたいなあ」と言っくれました。実際にお会いして感激しました。(あーあ、娘が生まれてからすぐだったらもっとよかったのになあ。)寺内先生との出会いから、私の授業も変わってきました。まだまだですが。
 この著作は寺内先生のものです。その一部を紹介します。
 
絵で聴く子どもの優しさ_b0068572_20573868.jpg
 「子どもと向き合うというのは微笑みながらうなづきあう生活を日常化することから始まります。子どもの描いた絵を両手で受け取り、ゆっくりした会話で、表現した気持ちを聴き取ることです。私はこれを「絵を聴く」と呼んでいますが、それだけで子どもの優しさと自信が見えてきました。
 子どもの心が消えてしまったわけではありませんでした。大人が子どもの心に共感すれば、その優しさと自信がふくらむと確信できたのです。
 しかし幼児期の優しさと自信には響き合えたもののそのあとの実践研究はまだ進んでいません。児童期の人間関係と自己表現の関わりは子育てや教育の現代課題としてこれからも取り組みたいと願っています。」(「はじめに」より)

「絵を聴く」というのはおかしな言葉遣いだが、「絵を描いた子どもの心を聴きとり共感する」という気持ちを表した筆者の造語である。芸術鑑賞で音楽は聴く、絵は見ることを通して内なる表現を自由に感じとるのが、受け手の喜びである感性である。しかし子どもは絵で気持ちを訴えるから、おとなが自由気ままに観て楽しむのでは、その心に寄り添えない。子どもの絵は観るより聴くものなのである。」(p.219)

「家族の向き合う生活が減少する情報化時代に、子どもの気持ちが伝わらない悲劇が始まった。絵が描きたいのに描けない子どもたちに、だれでも描けるようになる技法を教えるよりも、だれだって描きたくなるおとなの共感が何よりも望まれる。」(p.220)


寺内定夫「絵で聴く子どもの優しさ」萌文社(1890円)より引用

《関連記事》

☆「絵を通して子どもを知る

☆「子どもにはよいおもちゃを

☆「絵日記は心の交流誌

(記事初掲載 2005年1月11日)

Commented by ききょうぼけみ at 2005-01-13 16:12 x
深川小・育休中・桔梗です。先日は全国教研後夜祭?にお邪魔させていただきました。育児真っ最中の私が寺内先生に会えるのは幸せですね、赤ん坊背負っていった甲斐がありました。子どもはこれから一緒に生きてく人たち。誰だって教え込まれるより、心に響く何かを共有したいと思っている。学校を離れても、育児と育自と暮らしは図工美術とつながっていると思います。生き方、なんでしょうね。・・・はずかしながら、ブログ、かいてます、お暇があれば、どうぞご覧ください。
Commented by yumemasa at 2005-01-13 19:10
桔梗さん、なーんだ、ブログ持っていたんですね。(早く教えてよー)でも、また、つながりがひとつ増えました。(うれしい!)
あの日私も赤ちゃんさわりたかったのだけど、私はバイキンだらけなので(涙)、あきらめました。
このブログでは美術教育を考えていくのですが、子育て真っ最中の方々ともつながっていくことも大事だと思っているんです。美術教育を狭くとらえていては本物にたどりつかないような気がします。ですから。なぐりがきから始まって広く広くとらえていきたい。これまでも児童画の発達ことについては研究がされてきましたが、実際に子育てをしている当事者の声は反映されずらかったような気がします。それがたとえ、一部であっても親の声をまったく聞かないのと、聞くのとでは大きな違いがあります。寺内定夫さんは在野の研究家として、このブログでとりあげている大橋さんや千里敬愛幼稚園さんは実際の授業(保育)実践を通して成果をあげておられますし。最近多くの人がつながっていくことが力を生み出すだろうと感じています。
Commented by ききょうぼけみ at 2005-01-14 16:15 x
 私はばい菌、必要だと思いますよ。(笑)
 図工を通して小学校の子どもたちと関わっていたとき、その子に見えている宝物を、絵で、私も分けてもらいました。それが宝物だって気がついたのは、渡辺貞之先生と、寺内定夫さんの伝えてくれたことのおかげです。もちろん3才だった息子の絵に「連作」や物語、生活をかいまみるようになったのも、「絵を聴く」ことからできた楽しみのひとつです。子どもは天才、というか、みんな「天」から「才」を持ってきてるんですよね。忘れちゃう人が多いんでしょうね。私は昨年4月、図工専科だったとき、「星の王子様」の「うわばみ」の話をしました。帽子の中に象が入っているような、あれです。「うわばみが、象を飲み込んだところ、怖いでしょ・・・」って絵を、大人はバカにしたってやつです。そんな大人にならないようにしたいモノです。
Commented by yumemasa at 2005-01-14 19:19
実際にお会いできてうれしかったですね。寺内さんの「手のひら絵本」実際に多くの人に見せたいけれど、あれだけはバーチャルじゃあダメなんだろうなあ。あの、繊細な感覚。もしかしたら現代の子どもを取りまく環境で最も不足しているものかもしれないと今、書いていて気がつきました。桔梗さんのコメントのおかげです。桔梗さんのTrackbackをたどれば、寺内さんの温かさがわかりますね。
ところで、桔梗さん、もし時間があったら、ブログで渡辺先生や寺内先生のこと書いてみませんか。同じ子育てをしている人や図工の先生が読んだらいいと思います。
Commented by ききょうぼけみ at 2005-01-15 10:10 x
昨日のが初トラックバックです。うまくいったのかな、良かった。
 そうですね、渡辺先生とのことも寺内先生とのことも、一度きちんと文章化しておくといいのかもしれません。大事な言葉、一杯もらって自分の中に蓄積されているのですが、私の主観で表していいのか?と思っているウチに時間が過ぎていきました。表現することは、誰かとつながること、ですから・・・やってみたいとおもいます。広めなければ、といつも言っているのに、ここに気づきませんでした。あとは、表すことにちょっと恐れをなしていたかも。
 ところで、久保さんとは何つながりなのでしょう。すごいですねえ。
Commented by 山崎正明 at 2005-01-15 11:02 x
桔梗さん、ぜひやてください。学んだことに感謝する恩返しの最良の方法かも知れません。渡辺先生からも寺内先生からも私と桔梗さんでは、きっと学んだ視点が多少違ったりするでしょう。それがよいのだと思います。そうでなければ「方式」であり、「宗教」です。また桔梗さんは子育て真っ最中ですから、そのような人たちにも紹介する意義は大きいでしょう。
ところで、久保さんとの付き合いは、彼が何かの掲示板で私のことについて書いたということでメールをくれたのです。そして彼のサイトに行ったら、漂う空気が似ていたのです。音楽の趣味などほとんど同じ。うれしくなって。
つながることは、パワーを生み出します。特にこのブログは、双方向のやりとりを可能にした画期的ツールでしょう。ホームページや掲示板とは明らかに違います。
Commented by ままごん at 2005-10-31 08:16 x
山崎正明さま・・

先日はTB&コメントありがとうございました。
ほんとに美しい自然と、美術のことが、ギュっとつまった素敵なブログですね。。
 子供の心を絵で聴くんですね・・・寡黙なタイプのお子様ほど、絵にいっぱいメッセージを込めていそうですね・・うちの娘は、どちらかというと、音楽や踊り?で表現するタイプだな~(^^;)

また、色々と教えて下さいませ~♪
Commented by yumemasa at 2005-11-01 00:11
ままごんさん、あのようにして親が絵を飾る、素敵ですね。音楽や踊り、いいですね。実は子どもの絵を聴いていくと意外なことが、わかったりするんです。子どもの絵は大人の見方しちゃいけないってこと、この本は教えてくれています。
これからも、よろしく、ところで今指導要領改訂前の話し合いがなさえているところですが、芸術系の教科が、この先どうなるかわからなくなってきています。このブログでも話題にしています。
by yumemasa | 2012-05-07 12:06 | 本(美術) | Comments(8)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31