小学校4年生「絵をつくる」(寄稿)田尾明敏さん 埼玉

埼玉の田尾さんから授業についてご寄稿いただきました。感謝。
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4年生で木の絵をかきました。
最初にどんなシーンの絵にするか、絵の雰囲気をつくる色画用紙づくりをします。
雨の日、夜、夕方、冬、雪の日、宇宙、などなど思い思いのシーンを色でぬります。
思いつかななったら好きな色をぬっていい。四切の画用紙に色が広がると、あれこれ工夫して色だけで表情があらわれてきます。その日は色をぬって終わり。乾燥させなければなりません。

次の週は、校庭に出て、じっと見ながら自作の色画用紙に木をかきます。「よおーく見て、そっくりにくんだよ。クレパスでしっかりかいてね」そっくりにかけなくても一向に構いません。クレパスでぐいぐいかいていたら、もうそれでいい。一言「ステキな絵だね」。絵をかくのに外に出る、対象を見て描く、これは子どもが喜びます。その楽しさが絵にあればいい。

クレパスでかけたら図工室で木に色をつけます。ここからは、もう眼前の「木の色」は気にしません。はじめはコワゴワ「赤い木にしてもいいの?」「色を混ぜてもいいの?」と聞いていきます。「いいんです、ぬってみたい色、やってみたいことをどんどんしてください」。筆の絵の具を振っている子どもに、「それ、いい感じになってきたね。もっとやってごらん」というと、近くの子が「おれもやろう」。黙々と自分で考えかき込んでいる子に「このあとどうなるの?」「山にするの」「校庭の木が山の絵になるんだ、スゴイ!」。

校庭の木から、みんな自分の絵をつくります。

指導らしきことはわずか。①下地の色ぬり、②校庭での写生、③室内での着色という絵づくりの手順だけです。あとは絵のよさを見つけほめること、子どもが自己規制している部分を解いてやること。そして「もっとやってごらん」と気持ちを押すこと。思いもよらない作品がたくさんできてくると、もううれしいかぎりです。
Commented by 黒木 健 at 2012-01-19 05:27 x
画面から木がのびのび生き生きと広がっていっているんですよね。はじめに画面があってそこに木が押し込められているのではなく。観察の前に「思い」があるとこうなるのなぁ。
十人十色とよく言いますが,これが素晴らしく実現されていると思います。
Commented by 井上哲義 at 2012-01-19 15:55 x
田尾先生の授業、とても自然体でフラットな取り組みでいいのですね。子どもの達が、伸び伸びと自由に描いる姿が見えてきます。クレバスの表現が暖かく、1人ひとりの感じ方を大切した授業だと思います。何よりも、教師のまなざしがいいのです。子どものこうしたい気持ちを、テーマ設定の中で上手く引き出しています。子どもから、いろんな発見や感動が拡がっていくんだなあ。作品の題名もそれぞれが良く考えて、工夫されています。羨ましい限りです。
Commented by 石垣文子 at 2012-01-19 23:26 x
どの子も、画面に真摯な気持ちで向き合っていることが、よくわかります。よく見る事は、深く感じる事、そして感じたように描いていいんだよとそっと背中を押してあげる・・まさにアートの世界に子供たちを引き入れる最高のスチエーションですね。
Commented by akaneo at 2012-01-20 17:53 x
最近就労継続支援施設で造形ワークショップするようになって見えてきたものに、想像力と知的好奇心というのは、だれでも、いくつになっても持っているものだと思うようになって来ました。内に眠っているものを、揺さぶる体験が大切なんですね。紹介して頂いた2005年のブログもじっくり読ませていただきました。夫の持っている本が出てきて、びっくり。ありがとうございました。
by yumemasa | 2012-01-18 23:59 | Comments(4)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明