絵は自分を表す

絵は自分を表す_b0068572_22383526.jpgこの絵は中学校2年生が、冬休みの課題で描いた時のものです。彼が、笑顔で私のところに、この作品を持ってきました。

 以前の私なら、「あのねえ、冬休みという長い時間あったんだから、もっとじっくり描いてこいよ。」もしかしたら「手を抜いたらだめだよ」と言っていたかもしれません。そして彼はせっかく表現したことを何も理解されないまま、絵をかくことはつまらないことと思うでしょう。(昔の生徒の皆さん、ゴメンナサイ!)



 私は、まず絵を見て、描き直した線や筆や色の使い方を注意深く見ます。そして、絵のことを聞きます。(と言ってもなかなか聞けないので、絵の裏に書いてもらっている「感想」を読みます。

今回は、「えっ?このリンゴの下のモチ?」と聞きました。何やら冬休み中剣道部の合宿で青森に行ったとき、お供え餅の上にみかんじゃなくて、リンゴがのっているのを見て、あとで思いだして描いたものなのだそうです。その後は二人で剣道の話をしました。私としてもリンゴが載っているのがおもしろかたし、剣道の遠征の話等もしました。

 この絵を描き、みんなにこの作品を見てもらうことを通し、次のようなことを表したかったのだろうと思いました。
・「青森じゃ、みかんではなくて、リンゴが載ってるんだよ。面白いでしょ!」
・「この冬休み合宿で、青森まで遠征してきたんですよ。すごいでしょ!」
・「私は、剣道を誇りを持ってやっています。」

彼との会話があって、はじめてわかったことです。最後に「この絵、気に入っている?」と私が聞いたら「はい」と答えてくれました。

なお、この絵をクラスで鑑賞したとき、最初はシーン。そしてリンゴの下に餅があると知って、爆笑.(ただし、人の描いた絵を、バカにしたり、否定的な発言が、あったら、必ず指導します。今回の爆笑はそのような意味ではありません。)
そして、青森遠征の話を加え、「この作品はA君が2年生の冬休みに、一番力を入れたという証」であるというような解説をしてみました。

鑑賞の時間、通して絵は自分をあらわす(自己表現)ということを、学ぶことになりました。このような例が最初に出てくると、鑑賞の時間がよい雰囲気になるのでした。

いつもこんな感じで授業が進められたらと、思います。いつも出来るようにしたいものです。
Commented by cobatack at 2005-01-20 00:14 x
みた時の第一印象。リンゴがいびつな形。それがいい。それにしてもシンプル。絵が得意でない、まったく悪気のない、ユーモアのあるのんびりした感じの生徒の作品かな、と想像。
生徒が笑顔で持ってきた、という文章を読んだ後で、この絵を見た時点で既に笑えました。(笑)
餅の存在は、コラムの「続き」を読んで初めてわかりました。おかしみがあります。ここで笑える子供っていいなあ、と思います。
Commented by yumemasa at 2005-01-20 00:43
いやあ、ほんと、今日はこの絵がきっかけで爆笑のあとシーンとなったり、いい感じでした。でも、こんなよい雰囲気になれるのは、この学級を担任している若手の先生が努力しているから何だと思います。この授業の様子は担任の先生に伝えました。いつも、うまくいくといいのですが…
ところで、報道される中学生は、悪いかよいかのどちらかですしね。こんなかわいい姿もあるんです。
Commented by cobatack at 2005-01-20 00:43 x
しかし、毎日中学生の相手をされるわけですから凄いですよ。叱らなきゃならない場面もあるでしょうし、体力勝負な部分もあるでしょうねえ。私なんて、毎日、気難しい職人気質の工場長(50代)を相手にしている気の弱い営業マンですから(笑)。たまには、中高生(おっかなくない中高生限定)と話もしてみたいですが、まったくチャンスはありません(残念!)
Commented by yumemasa at 2005-01-20 01:02
そうなんです。しからなきゃならないこともあります、あります。体力勝負もありますね。いつも笑顔が理想ですが…。
cobatackさんは、営業マンなんですか。私の父(故人)はカーテン屋の社長でした。私は社長の御曹司です!ただ従業員が一人だけ。母でした。浪人していたころ(大学にはいるのに浪人、おまけに教師になるために2年浪人)販売をさせられました。シビアでした。商品のクレーム処理にいったとき、お客さんからがんがん怒られたことを思いだしました。といっても製造工程の話だったのですが。ひたすら頭を下げて。それから、カーテンの見本帳を持ってお客さんのところに行って、私の好きなカーテンをすすめたら、お客さんも喜んでくれました。おまけに売り上げは10万以上。しかし、仕入れ値を確認せず、値引きしてもうけは雀の涙なんてこともありました。教師浪人しているときに問屋さんの方から「ウチで営業の仕事しないかい?」と声をかけられましたが…、今営業マンをやっていたら、どうなっていたのかなあ。
Commented by artshore at 2005-01-21 02:51
このリンゴの絵、いいですねぇ。妙に惹かれます。日の丸みたいだけど、日の丸より味がありますよね。具象であって抽象絵画を見ているような感じもします。
ところで私の父は教員でした。ときどき、教員をやっていたらどうなっていたかなぁ、と考えることがあります。
Commented by cobatack at 2005-01-21 20:57 x
yumemasaさん 営業の話ありがとうございます。自分が営業マンなのでその場面が手に取るように想像できます。ところで、こうやってyummemasaさんが生徒の絵を紹介した事に対してまったく面識のない人間が感想を述べる。これって凄いことですよね!見ず知らずの人間の感想というのは、受け手によってとらえ方が違うでしょうが(ここがインターネットの怖さですが)、基本的に子供は人に褒められると嬉しいでしょうし、ただ絵からわかる事を指摘してあげるだけでも、生徒は自分の事を人が見てくれていると感じるでしょう。作品の事でたくさん話をすると、子供のコミュミケーションの能力も高まっていくと思われますし。
うるさい大人は、得てして、子供から嫌われますが(笑)、昨今では、町内のうるさくて人情味ある元気いいオヤジが絶滅危惧種になっておりますので、こういう新しい形のコミュニケーションも一つの可能性かな、と思います。
PCは気がつくと、時間ばかりが異常に経過していることがままあるので、あまり画面にばかりしがみつかないよう自己管理、子供がユーザーの場合、親からの生活指導も必要だと思いますが。
と、学校の先生みたいな事を書いてみました(笑)
Commented by yumemasa at 2005-01-22 03:11
>artshoreさん、
子どもの絵が、こうやって批評されるのもまた、おもしろいですね。特に、まず表には出てこないような絵が。
また作者のことを知っている私と、まったく知らない方の感想、これ、いいですね。artshoreさんが教師だったら、子どもの絵を多面的にとらえていたんだろうなあと思ったりして。
Commented by yumemasa at 2005-01-22 03:25
>cobatackさん
山崎でいいですよ。なぜかyumemasaはピンと来ないので。
おもしろいですね、いろんな絵のコメント。良識ある大人だけが、コメントしてくれるのなら、これも面白い方法ですね。なるほどなあと思いました。会員制にしたりして。でも感想はメールにすればいいのかあ。一つのアイディアとして残しておきます。実は似たようなことを構想していたので、発想がふくらみました。あっ、子どもの美術展に芳名帳を用意していたけれど、感想ノートとかあり得るなあ。
 ところで、気がついたら長時間PCに向かうということ、確かにありますね。
こうしてコメントをもらうと、うれしいです。やっぱり。
by yumemasa | 2005-01-19 23:31 | 美術の授業(山崎) | Comments(8)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明