図工美術で大事な「題材設定の理由」
2005年 02月 05日
内容は高学年で「神社の絵」を描く事になっているのだが、どう指導したらよいのかという問い合わせでした。
学校のカリキュラムの中ですでに「神社」は決定しているとの事でした。
私は以下のようなアドバイスを自分なりにしてみました。
・本当はなぜ神社なのかという理由があっての授業なので、来年以降、学校で見直したらよいとアドバイスをしました。地域によっても神社と子どもの関わりも違いますし。
・神社の絵が一般化したのは造形的におもしろいこと、神社が子どもの遊び場であったこと(地域や時代で違いますが)、いわゆる「絵になる風景」などと言われること、複雑な形をしているので描き込みやすいこと、緻密な表現でコンクールでの入賞したものを目にする事、などが考えられます。しかし、今の子どもの生活と照らし合わせるとどうかという疑問が残ります.
神社を描く意味が子どもにとってどうかを吟味する必要があるのでは?本当にふさわしいかどうかは考え直してみる必要があります。
・神社を描くのが決まっているので、その中でベターな方法として、子どもに神社に興味を持つような(描きたくなるような)話をしてみては?
・本気で考えてみて、神社を描かせる適切な理由が見当たらないなら、別に神社そのものを描く必要がないのではないか。神社の周辺にある木なども対象になるだろうし、神社の一部を描いてもいいのでは。子どもが興味を持った事をかけばよいとしては?
・以上を踏まえて、導入の語りかけを大事にしてください。
ただし山崎の考え方ですのでこれが正しいということではありませんので、あくまでも参考です。
(いろいろな考え方に触れるためにも私のHPは「リンク集」を大切にしています。リンク集の中から他の人の内容を推薦することもあります。)
返信が来ました。
その先生は神社へ出かけていって、神社の方に神社の歴史を聞いたそうです。(最高!)
ずいぶん前の建築で、歴史の授業とすこし関連するとのことでした。また狛犬があるのですが、50年以上前のもので、つがいになっていること。神社を守る役目なので、力強い形をしていたそうです。非常に古い木があって、木の歴史について解説がついていたことなどを発見。古いもののよさ、昔の人の暮らしと今の暮らしなど考えてみると、なんだか子ども達にぜひ描いてもらいたい気になったとのことでした。
こんな行動力を持ち自ら価値を探っていこうとする先生の姿勢に、自らよい授業をつくりたいという熱意を感じました。
その先生なりに題材設定の理由が見えて来たようでした。こんな感覚で導入時に語れば、ただ神社を描きましょうとか、神社を描く時のポイントだとかを話すより、子どもの絵に向かう気持ちは違ってくるでしょう。子ども達の描こうとする気持ちがまったく違ってきます。教師の語りかけによって見える風景も違ってくるのだと思います。
この絵の指導はもちろんこれが全てではありませんが、導入は子どもの描く意欲を引き出す上で、とてもとても大事だと思います。
(注)この絵は娘が小学校4年生の授業で描いた神社の絵です。実は神社は、学校の横にあるのですが、この神社は娘の級友の親御さんの神社なのです。わざわざ遠いところまで出かけていって描いた事になります。
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