「美術教育の名言」
2005年 02月 18日
自分なりにも、再度いろいろ考えようと思っています。そこで自分が「価値葛藤」できるような本を、もう一度読んでみようと思いました。その本の一つが、以下に紹介する「美術教育の名言」です。
この本は「一人ひとりの個性を生かす教育が叫ばれて久しいが、素直な感情表現の大切さを忘れた今日の美術教育は、子どもの自由な創造力をつみ取っている。」という考え方がもとになっています。
「美術教育の名言」滝本正男・島崎清流編著(黎明書房)1994年刊
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教師になってすぐにローウェンフェルドの「美術による人間形成〜創造的発達と精神的成長〜Creative and Mental Growth」(黎明書房)を買いました。
それまでは他の本の引用でこの本の存在を知っていただけでした。感銘をうけました。この本との出会いは自分にとって大きかった気がします。
子どもの成長を軸に教師がどう関わるべきかが、克明に述べられています。今読んでも教えられることが多い本です。しかし、大作で気軽に読めないため、いつのまにか本棚に眠っていました。
そして、1994年、この「美術教育の名言」と出会いました。100の名言が取り上げられていますが、その名言に解説を加えたものが本書です。本書が取り上げた名言は、チゼックの以下の言葉が根底にあるようです。(チゼックの思春期の造形活動に対する見解は、違うと思いますが)
「先行の段階を終わることなく次の段階にはいるべきではない。先行段階をすべて卒業した子どもだけが、長い生涯にとってのよい基礎を身につけることができる」
ここにある言葉を読んで、自分の授業を振り返ってみたり、我が子との関わりの中でも「そうだよなー」と思うことが多々ありました。
美術教育の本質を考えるための本として、とてもよい本だと思います。手軽に読めるので、私も時々読みながら自分の実践を見直してみる一つの手がかりにしています。
美術教師はもちろん、専門外で美術を教えるのは難しいと言っている先生、保育園、幼稚園の先生、親になった人にもぜひ読んでみるとよいと思います。
なお、本書の最初に「児童画の発達段階」の表が示されています。何を大切にしているか、このことでも本書の意図が理解できると思います。
以下に、いくつかの言葉を紹介します。
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○「適した時期に、適した材料を承知していて、子どもに与えることが、教師の仕事である。」(ローウェンフェルド)
○「子どもを尊重してやる気持ちがあり、子どもに対する理解ある愛情をもち、それがどういうことかが、よくわかっている人なら、専門外の先生でも、優秀な美術教師としての本質的な資格が十分ある。」(リチャードソン)
○「「描くこと」は、「考えること」を手伝っている。」(宮武辰夫)
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本書は以下の項目にそって名言が紹介されています。
美術教育とは
美術の指導とは
美術の教授のあり方1(幼児教育)
美術の教授のあり方2(小・中学校教育)
美術の教授のあり方3(用具・教材)
子どもの美的作品の見方
子どもの絵の発達とは
美術教育における教師とは
本書4ページに示されている表です。これが本書の基本的な考え方ですが、日本の子どもはこれよりも若干発達が早いとしています。
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