美術科と他教科の関連について考えてみました

美術科と他教科の関連について考えてみました_b0068572_1304512.jpg 鳥取の書道の蔵田先生(高校)からメールをいただきました。私のブログで紹介された絵手紙の授業は「どの教科でされたのですか?」というものと「年賀状の時期に、墨の淡墨、濃墨による表現のため、生徒に墨絵学習をさせています。絵手紙をさせている学校もあると聞きます。絵と字が融合した世界ですから、なにか共通の課題がありそうです」というものでした。
(なお、このメールをいただいてからこの絵手紙の授業が美術の中で行われたことがわかるよう記事に手を加えました。

美術科と他教科の関連について考えてみました_b0068572_11401213.jpg このメールがきっかけに美術の「教科性」についてあらためて考えてみました。
 ブログで紹介させていただいた「絵手紙」をよーく見ると「文字」が主体のものもけっこうあります。実際に国語の資料集の紹介もしていますから。この作品づくりは「国語科」でやっても不思議はないわけで、事実、私の学校では1年生の授業で草野心平氏の「河童と蛙」をイラストで表現してみようというものもあります。2年生の短歌の学習では短歌とともにイラストを添えています。

 というわけで、他教科と美術科の関連について考えてみました。



私の学校では、 
 技術科では照明器具づくりをしています。選択教科の国語では「篆刻」選択教科の「技術」では金属による鋳造。選択社会では学んだことを「イラスト」も使ってまとめる。総合学習では学んだことを「スケッチ」して表す。理科や社会の授業でもスケッチする場面が結構出てきます。先日社会科では「雪舟」についてのビデオ鑑賞もしましたし、定期テストでは美術作品に関する問題も出題しています。
 また「道徳」の授業で扱ったビデオ資料の中に美術関連のものはフレデリック=バックの「木を植えた男」・デザイナーの川崎和夫氏のTV録画「私はあきらめない」・星野冨弘さんのビデオ・プロジェクトX関係などけっこうあります。(私が道徳授業で使うように推奨しているものも含まれますが)
 先日埼玉県立近代美術館の山田一文さんからいただいた資料の中に鑑賞授業が「道徳」の時間で設定されていたものもありました。(思わずこの手もあるのかと思ってしまいました。むろん、ねらいは違いますが。)

 私の「自分という人間の存在証明」の授業では自分についての作文を書きますから生徒が「先生、何か国語の授業みたい。」と言われたこともありました。
 以前取り組んでいたポスター等は「表面的なポスター」にならないように、アイディアスケッチをする前に、自分達で主張したいことについて調べたり、作文にまとめたりというプロセスを経ました。さながら「総合学習」のようでした。(週2時間のころはよかったなあ〜)
美術科と他教科の関連について考えてみました_b0068572_11414111.jpg 授業時間数のカウント問題もあります。「写生会」など図工美術の授業としてカウントするのか、それとも総合学習などでカウントするのかなどという問題も聞いていますし。
 私が授業でポスターを扱わなくなった(非常に残念ですが…)のは授業時間数の関係が第一としてありますが「総合学習」の中でも似たようなことをしているということもあります。また「マンガ(簡単なイラストも含む)」については「総合学習」はもちろん他教科の中で実際にけっこう扱われていますので、美術科ではあえてやっていません。(マンガやイラストについては子どもは毎日膨大な量に触れたていますし。)ただ美術科の中で取り扱う「マンガ」と他教科で扱う「マンガ」ではその意図やねらいも違っていて、単純に言いきれないものがあります。
美術科と他教科の関連について考えてみました_b0068572_1292176.jpg私が美術科で扱っている「マンガやイラスト」は想像画の中の一表現手段としての扱いです。想像画の授業では「映画」「絵本」などについても関連づけています。
 この関連づけて美術科の視点から考えさせるというのはとても大事なことだと思っています。日頃の美術科の学習した内容を子ども達がつなげて考えるようしたいですから。「美術の力って大きいんだなあ」と感じとらせたいわけです。(色彩の授業の時は私の服装に対し生徒から一言突っ込みがはいることもあります。(涙)。)
 また実は写真やビデオ撮影の技術などは、生涯学習の基礎を培う義務教育で扱われるほうがよいと思っていますが、これを今何とか「総合学習」の中で扱えないかと思っています。学習成果のまとめとしての発表物の作成にあたって「見やすい掲示物・レポートのつくり方」などは「総合学習」として実施しています。「レイアウト」という言葉も使います。(この「レイアウト」という言葉を美術の授業の「構図」という言葉と関連づけます)

美術科と他教科の関連について考えてみました_b0068572_127414.jpg「美術」を教育の中の「添え物」にしてはならない。基礎基本も含めて「美術の授業でなければ、培うことができない」ものを明確にしていくべきだと思っています。
 授業時間数の確保されていた頃の美術教育では、このあたりを深く考えなくてもよかったのでしょうが。 
「クロスカリキュラム」などという言葉もありますが、限られた授業時間数で「美術」で何をすべきかあらためて考えなければと思います。とにかく時間は限られていますから。
 この「他教科と美術の関連と美術科でなければできないもの」について考えていくためには、全教科の教科内容の総点検が必要だと思います。(と言いつつ手をつけていません。日常的な会話では。社会や国語、技術などの先生と美術科の関連についてけっこう話しています。総合は私が担当していますから、けっこう考えることができます。余裕はありませんが)
美術科と他教科の関連について考えてみました_b0068572_1141013.jpg 同じ石狩の美術仲間の川名義美さんが、委員会活動でつくった掲示物のことを思いだしました。これって美術の授業でできたものみたいと思いました。かっこいい看板でした。美術科の存在を校内に感じさせるものです。
 
 美術と他教科の関わりについて自分の考えはよくまとまっていませんが、とりあえず文章化して「教科性」について今後考えていくきっかけにしたいと思っています。日頃頭の中ではよく考えているのですが。
 この件を考えることは実は美術科の存在理由を考えることにもつながっていくと思います。
(散漫な文章になってしまいました。頭の中が整理されていないといこうことです。)

*写真は「小樽運河」です。

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 ★「書道」と美術
Commented by korobb at 2005-02-27 18:50
うちの小学校では、担任の持ち時数対策もあって、総合は、ほとんど学年が管理しています。図工の教師による総合的図工を提案したことや、それらしいことを図工の時間の中でしたこともありますが、総合と図工の間には壁があります。
近くの西宮市で、「ルネッサンス」とか「レオナルドダビンチ」などのテーマで調べ学習から模写などに展開していた例を見たことはありますが、わが市は、そこまで行ってはいませんね。いい悪いは別にして(^^;)
ところで、yumemasaさんは、総合の計画も立てているのですか。
考えてみれば、中学校では学年の誰かが自分の教科以外に総合を担当しないといけないのですが・・・。改めて、尊敬します!
Commented by yumemasa at 2005-02-27 20:06
美術の時間が少ないので総合でカウントできないかなあと思ったりしています。総合はどのようなテーマにするかで、教科との関連が出てきますよね.内容によっては国語と理科、社会とつなげています。でもこれはカリキュラムを全て見直してやっているわけではなく、関連しやすいものをやっているだけです。そのほうが長続きしますから。
尊敬するなんて言われるとビビります。親父ギャグ連発の教師なんです。自称ヤン様ですし。
ただ「総合」は力を入れました。昨年はハードな日々でした。(涙)。3つの学年の関連性を大事にしながら、学年の担当者と打ち合わせをたくさんしました。外部講師や外部機関との打ち合わせ等大変でしたが、得るものも非常に大きく、これは楽しい仕事です。
ところで西宮市のもの、おもしろそうですね。ところで「図工展」大事にしてくださいね。あれ、最高です。サイトで紹介していることの価値の大きさ!図工美術の存在をアピールしています。子どももあれだけの規模の展覧会なら、きっと一生忘れないでしょう。
Commented by korobb at 2005-02-28 16:14 x
3つの学年ですか。やっぱり尊敬します。(^^)
今年度末で移動の目もあるのですが、次の図工展のことは、ひそかに計画を進めています。この時期が楽しいですね。

ところで、職場はフィルターがかかっていて、掲示板関連のところにはアクセスできません。市の総合教育センターに申し入れて、こことうちのページは、見えるようにしてもらいました。
自分のページの更新は、職場からはできない状態なのですが、コメントをつけることはできるのが最近わかりました。またおじゃまします。
Commented by yumemasa at 2005-02-28 20:16
最初は総合学習や外部講師にもどちらかというと懐疑的でした。今は本気で大事な時間だと思っています。平和や人権、共生、環境、国際理解をテーマに取り組んでいます。どの問題に切り込んでいっても暗く、重苦しいテーマです。しかし身近なところを見渡すと、そんな問題を少しでもよい方向にしていこうと前向きに頑張っている方がたくさんおられます。そんな人を講師に招きます。知識ではなく生き方を学んでほしいと思っています。
Commented by yumemasa at 2005-02-28 20:17
続き>1年生のときは、たくさんの講師に来ていただいて子ども達に「感じとる」ことを大事にしてもらっています.知ることより感じること、生き方を学ぶ…1年生はいわば総合学習の入門期です。それを2年生、3年生へとつなげていくのです。1年生の学習を2、3年生につなげていくためにどうしても理論的に一貫していなければなりません。それで、束ねる人間が必要になってくるわけです。ただし、私のたばねかたはABOUTです。あまりにも細かくすると長続きしないと思ったからです。ポイントは先生方が本気になることでしょう。心の底から環境について真剣に考えて欲しいいう強い思いがあれば、総合はうまくいく気がしています。
Commented by yumemasa at 2005-02-28 20:18
続き>それから総合の結果できた成果物の出来にとらわれないようにしようとも言っています。子どもがどう感じ、どう考えたのかそこを大事にしようと言っています。たとえば以前はパソコンを使っての派手なプレゼンなどに目が向いた時期もありましたが、問題はかっこいいプレゼンを出来るようにすることではなく、本気で子ども達が伝えたいと子どもが思えるような総合学習にしようと確認しています。こどもが本気になれば、表現もそれにともなって工夫しますから、よくなっていきます。
美術と非常に似ていると思っています。たいして描きたいとも思わないのに技法指導ばかりしていてもダメなのと同じだと思うのです。
でもこうやって理論らしきものは出来ていますが、やはり簡単ではありません。しかしやりがいがあります。子どもが未来への展望を持つきっかけをつくる、自分の生き方を考える、そんな総合学習を目指しています。
Commented by yumemasa at 2005-02-28 20:20
続き>たとえば、小野有五という環境の大学教授は自分のサイトで「苦しくとも楽しい世界」と言っています。子どもによい大人、素敵な大人が実はいっぱいいるんだと知って欲しいのです。小野有五教授は今地球環境がどれだけ深刻な状況であるかを誰よりも知っていると思うのです。しかし、行動しながら人とつながり、未来を切り開いて行こうとしています。環境問題を調べて深刻になり、それを訴えるだけの総合学習にはしたくないのです。リサイクル・省エネルギーだけ言っていても環境問題を解決することにはつながっていかないわけですから。あー、最近総合学習のデザインを感あげているのでついついたくさん書いてしまいました。書きながら自分の考えを整理できました。なんか自分のためのコメントみたいです。
by yumemasa | 2005-02-27 11:01 | 美術科の存在理由 | Comments(7)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
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