小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて

下の写真は3月19日に行われたアルテピアッツア美唄で開催された「鑑賞ワークショップ」の一場面。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_11173141.jpg

室内で「対話による鑑賞」をした後、デジタルカメラを持って、外に鑑賞に行きました。しゃがみこんでローアングルで撮影しています子もいます。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_11174518.jpg

 この子は、彫刻の周りを回って、お気に入りの角度を見つけました。さらに下がって撮影しています。見方を工夫することで新たな良さを発見する喜びを味わっています。撮影後、私が近寄っていくと「私って天才かも?」って笑顔で撮影した映像を見せてくれました。創造の喜びから生まれる言葉です。



小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_12122965.jpg
まずは受付。東京の ARDAさんがされている方法も参考にしながら、「今日の気持ちにあったカードを選んでね」〜自己紹介の時にその理由を聞くのですが、良いアイスブレイクになっています。カードは美術出版のもの。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_12135124.jpg
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_12324862.jpg
アートカードを使ったアイスブレイクをした後、最初に「対話による鑑賞」をします。絵画を2枚を鑑賞しました。参加した小学生(4年生)が、絵を見ることの面白さを感じ取っていることがわかります。対話が弾みます。ファシリテーションをする泉さんの自然な感じでの話し方もよく、子供の発言に共感しています。テクニックとして「ほめる」ことで発言させるといこととは違います。心の底から、子供が、どう感じたのか、どう考えたのかに耳を傾けています。だから自然と笑顔があふれてきます。だから和やかで暖かい雰囲気になっています。(実は鑑賞すべき、2枚の絵、何を見せるか、迷いに迷って決めました。対話を予測しながら作品を選定しています。この予測も面白いのです。実際にどうなるか。とにかく、とても丁寧に準備を進めてきています。)

小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_1243138.jpg
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_12431536.jpg
「対話による鑑賞」の最後は、安田侃さんの立体作品。白布をかぶせておいて、布をとり、作品を見せました。子供の表情が変わります。2枚の絵画を見ていますから、主体的に発言するようになってきています。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_1252212.jpg

最後に、安田侃さんの作品が外国に置かれている写真を紹介しました。子供たちの反応は「見たことある」「(作品に)乗ったことある」「イイなあ」「あー、奥にもある」など、美唄の子供ですから、知っている作品が海外に置かれているのはとても、嬉しいことなのでしょう。こうしたことをすることで美唄にも誇りを持つことにつながるでしょう。
 これらが終わって、安田侃さんの作品鑑賞を始めました。「作品を撮影しよう」という方法を通して。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_1353472.jpg

小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_1353065.jpg
少し雨が降っていたので体育館にある作品からスタート。ここで撮影をすぐ始めると思ったら、なんと泉さんは、また子供を集めました。一瞬私は、「まだやるのか、もう撮影入って良いのでは?」って思ったのですが.
彼女は「この作品を置く場所は、ここだ!って決めておいたんですよ」って説明したら、子供が「なんでだろう?」「窓の方において光のこと考えたのかな?」「ここのところ、キラキラ光っている」その後、作品の周囲や、天井やスポットライトの位置や、他の作品の置き方の関係など、様々な視点で見ていきました。作品を見ながら、安田さんがどのようなことを考えたのか想像しているのでした。彼女のナビゲートが作品の見方を広げ、深めたのでした。安田侃さんを直接、知っていてアルテピアッツァ美唄を愛しているからこそのナビゲートでした。最小に絞り込んでの知識のさりげない提供が鑑賞をより豊かにした場面でした。
 こうした地域の美術館の常設展示ならでは鑑賞の良さを実感する場面でもありました。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_13435974.jpg

霧が深い中の撮影です。季節が変われば、鑑賞の雰囲気もかなり変わるでしょう。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_13474956.jpg
彼は、この写真を撮るために、前に行ったり、後ろに下がったり、ズームを使ってみたり、見えたものをさっと撮るという行為とは明らかに違います。自分なりの美しいを探しているのです。カメラを使った鑑賞の良さでもあります。しかし、触るという行為は少なめになるかもしれません。美術館や授業で行う鑑賞の方法は、そのねらいに応じて決めることが大切であるということがよくわまります。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_135836.jpg

光の方向と、曲面の感じの良さ、そして穴の向こうに見える面白さについて語ってくれました。この会話は「こんな美しさや面白さを見つけたんだね(実際にはこの言葉は使いませんが)」っていう共感的な会話になります。こういう会話は子供同士でも生まれていました。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_1471148.jpg
「あ、いいこと考えた!」幼児から小学生、中学生までよく使う言葉です。あのひらめいた時の喜び!。どこかいいところないかなって探していたら、いい場所を見つけたのです。人と違う自分らしいものを生み出したいという創造的な気持ちがあってこその行為です。

 こうした鑑賞を通して、何を感じ、何を学んでるのか、鑑賞の方法は果たして良かったのか、それは鑑賞中の子供の発言はもちろん、表情や仕草、視線などからも見とることができます。また「ビデオによる学び分析」も効果的です。

小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_1421316.jpg
戻ってきたら、自分の撮影した写真を一枚選んでプリントします。これは APA「美術授業にカメラ」の中で、自分の撮影した写真から一枚を選び、プリントという方法を取り入れています。数多くの選択肢の中から一つを選び、決めるという行為が価値意識や美意識を高めていくからです。それは人生とも似ています。
 さて、こうして撮影した写真をみんなで見ながら、自分の決めた一枚について語るのは非常に興味深いです。その人の感じかや考え方が伝わってきます。自己理解や他者理解の面白さも感じます。

小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_143857.jpg

プリントされた写真を額に入れて渡しました。子供達は早速、額縁に模様や名札をつけはじめました。こうなるは作品が気に入ったからこそです。「将来、一人暮らしをしたら部屋に飾ろう」なんて言っている子もいました。
小学校4年生の美術鑑賞〜アルテピアッツア美唄にて_b0068572_14424421.jpg
 
この笑顔、素敵です。今回は少人数ですが、一回目から優れた鑑賞プログラムができたのは、これまでに多数重ねてきた研修の成果によるものでしょう。今後も教育普及に取り組んでいきますので、楽しみです。
教育普及は私にとってもっとも大切な仕事だと思っています。
こうして道内にファシリテーターが増えることは、子供達にとっても、とても良いことです。

(ブログ掲載については、本人及び保護者の方の了解を得ています)

《関連記事》

 ☆地元小学生のための鑑賞教育〜アルテピアッツア美唄

 ☆NPO法人「アルテピアッツアびばい」の会報で美術教育が話題に

 ☆鑑賞教育 JP

 ☆「美術の授業にカメラ」 北海道 レポート2008年

 ☆だれもがいつでも写真を撮る時代、だからこそカメラの授業を

 ☆動き出す釧路の鑑賞教育
by yumemasa | 2016-03-21 11:44 | 鑑賞教育 | Comments(0)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明