美術館に展示されている抽象絵画の前で、親子がお話しています。
「自分が選んだ言葉カードにあう作品をさがしてきてください」と美術館のボランティアスタッフの方が言いました。
子どもは、自分が、なぜ、こう感じたのか、どの部分を見てそう感じたのか、色や形を根拠に説明しています。
お母さんは、それを聞きながら、笑顔で共感しています。
このようなことが美術館で起きています。素敵です。
子供をとりまく環境はかわってきています。タブレット端末で幼児がひとりで画面を見ていたり、長時間ゲームをしていたり。心配でもあります。物理的な対話は不足するのは当然です。そんな中、出会ったのは、美術館で見た親子の素敵な対話でした。
このような姿がうまれたのには、理由があります。この場面は、
東京国立近代美術館が開催している
「おやこでトーク」の中で起きた出来事なのです。東京国立近代美術館の「教育普及」担当の一條彰子さんと担当のボランティアスタッフさんが、美術作品と親子の豊かな出会い、親子の豊かな対話をつくったと言ってよいでしょう。
私は、1時間ほどのこのプログラムを見学させていただいたのですが、このプログラムが終わって解散した後、ほとんどの親子が展示室にもどっていきました。中にはスキップして会場に向かう子も!ここは遊園地ではなく、国立近代美術館です。
このプログラムのすごいところは、ガイドスタッフのみなさんが、美術館の中で単に楽しい時間をすごしてもらうことを目的にしていなことです。そのため、どの作品をどのような方法で見せるか綿密に考えられています。4、5歳児が楽しくみることができるように、3つの視点で取り組んでいるそうです。 (1)色や形 (2)言葉や物語 (3)体を使って です。 親子の関わり方もきめ細かく考えられていることが伝わってきます。
だからこそ、親も子も、美術館で作品を主体的楽しめるようになったのです。
そして、もうひとつ驚いたことがあります。プログラムが終わって見学していた私のところに来て「なにか、もっとこうした方がいいというところありませんか?」って尋ねてこられたことです。この姿勢に心うたれました。こうしたことがあってのこのような姿なのです。
子供向けのこうしたプログラムはいろいろありますが、こうした育てるべき心や力を大切に大切しているこの「おやこでトーク」は素晴らしいです。この考え方から 学ぶべきことはたくさんあります。
作品を前に 親と子が笑顔で話している姿を見て、あらためて社会全体で子供を育てていくことの大切さを実感しました。
ここで学ばせていただいたことを、生かしたい、そう思いました。