審議経過報告を読む(その9)総合的な学習・選択教科

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以下の茶色い文字は「審議経過報告」から転載したものです。黒い文字は山崎のコメント。

3) 総合的な学習の時間などの改善

○ ここでは、総合的な学習の時間の改善、中学校における選択教科、部活動の扱いについて、議論を行い意見を整理している。


ア 総合的な学習の時間の改善

(創設の趣旨及び現状)

審議経過報告を読む(その9)総合的な学習・選択教科_b0068572_1323785.jpg○ 総合的な学習の時間を創設した趣旨については、平成10年7月の教育課程審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について(答申)」において、「各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保すること」であり、また、「自ら学び自ら考える力などの[生きる力]は全人的な力であることを踏まえ、国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するために教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保すること」であるとしている。

○ 総合的な学習の時間のねらいについては、同答申では、「各学校の創意工夫を生かした横断的・総合的な学習や児童生徒の興味・関心等に基づく学習などを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることである。」としている。また、「情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付けること、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成すること、自己の生き方についての自覚を深めることも大きなねらいの一つ」としている。これらを通じて、「各教科等それぞれで身に付けられた知識や技能などが相互に関連付けられ、深められ児童生徒の中で総合的に働くようになる」ことを目指している。

○ 総合的な学習の時間については、義務教育答申では、「大きな成果を上げている学校がある一方、当初の趣旨・理念が必ずしも十分に達成されていない状況も見られる。また、「義務教育に関する意識調査」の結果によると、総合的な学習の時間については、全体として評価が高いが、小学校と中学校では教師、保護者、子どもの意識や評価に差があることが明らかになった。」と分析している。

○ その上で、「思考力、表現力、知的好奇心や自分で考える力などを育成する上で総合的な学習の時間の役割は今後とも重要であるが、同時に、授業時数や具体的な在り方については、各教科等との関係を明確化するなど改善を図ることが適当である。その際、全国的に一律に定めるのか、学校の裁量による弾力的な取扱いができるようにするのかなどを考慮する必要がある。」としている。

○ さらに、「学習が効果的に行われるよう、学校に対する支援策を充実することが必要である。さらに、総合的な学習の時間の充実のためには、学校外の人材の協力と地域との連携が重要である。」と指摘している。

○ 教育課程部会及び専門部会においては、例えば、「課題発見能力や課題解決能力など見えない学力をはぐくむためにも重要である」、「自分の生き方を見つめさせることが重要である」、「地域の特色に応じた課題に取り組むことにより、地域の潜在力が引き出されている」などの意見が数多く示され、総合的な学習の時間の必要性や重要性については、共通理解が得られている。

(支援策等)

○ 一方で、「義務教育に関する意識調査」の結果やスクールミーティングでの意見等を踏まえ、準備・計画の負担が重い、教科の時間とのバランスを考慮すべきとの意見が目立った。現状のままでは、そのねらいとするところを達成することが必ずしも容易でないことから、講ずるべき所要の手立てについて議論を行っている。

○ 専門部会においては、例えば、各学校における実態に差があるとの状況を改善するためには、子どもに身に付けさせたい具体的な力を明らかにするため、各学校における実践を踏まえつつ、総合的な学習の時間のねらいの明確化や学習活動等の示し方について検討する必要がある。

○ 総合的な学習の時間については、各学校において、例えば、
① 国際理解、情報、環境、福祉・健康等の教科横断的な学習
② 子どもによる課題設定と調査研究、作品製作、学習成果の発表会等の学習
③ 自然体験、職場体験、奉仕体験等の学習
 などが行われている。

○ 上記①については、国際理解、情報、環境、福祉・健康など特定の領域の教育について、関連する教科の内容との関係を整理する必要がある。

○ 上記②については、子どもの主体性をはぐくむ上で重要な学習であるが、中学校の選択教科の学習との重なりを指摘する意見があるので、両者の関係を整理し、検討することが必要である。

○ 上記③については、子どもの個性を伸ばし、主体性や自立性を高め、目標に挑戦する力を育てていく上で重要な役割を果たすものである。特に、学習面では、課題探究型の学習と結び付くことで、学習意欲の向上にも資するものと考えられる。
  その一方、特別活動との関係を整理することが必要である。

○ 総合的な学習の時間は、本来、学校の裁量を拡大するとのねらいがあるのであり、授業の準備を含めて現場での実践が容易ではないことは理解するが、徐々に定着しせっかく良い芽が育ち始めているということもあり、各学校や教員にもう一段の創意工夫を求めたいとの意見も強く示されている。

○ しかし、その場合であっても、優れた先進事例の情報提供やコーディネートの役割を果たす人材を育成・確保する、地域や教育委員会の支援システムを構築するなどの支援策を講じることが必要である。

○ 平成18年度政府予算案でも、学校におけるコーディネーターを育成するための研修会の開催経費その他が盛り込まれているが、国及び自治体のそれぞれの段階において、具体的な支援策を積極的に進めていく必要がある。

○ また、小学校・中学校・高等学校の連携を求める意見も多く指摘された。小学校においては、どちらかと言えば、体験的に理解することに中心が置かれ、中学校・高等学校と発達の段階が上がるに従って、主体性を重視することとなるが、地域によっては、同じ題材が繰り返されることがあることから、子どもたちの発達の段階を踏まえた連携の必要性について意見が出されている。

○ なお、子どもの主体性を重視するという観点から、総合的な学習の時間における学びの足跡を学習ファイルや作品、卒業論文として残していくことを心掛けなければならないといった意見もあった。

○ 総合的な学習の時間の授業時数については、教科等との関係の整理、具体的な支援策の動向等も踏まえつつ、総授業時数及び各教科等の授業時数について全体として見直す中で検討することが必要である。


イ 中学校における選択教科

○ 中学校における選択教科は、各学校の主体的な判断により生徒の特性等に基づく多様な学習活動を幅広く展開できる時間として、総合的な学習の時間と並んで、例えば第3学年においては105から165単位時間(週当りで3から4.7単位時間。1単位時間は50分)位置付けられている。
  
○ 選択教科については、創意工夫により生徒に対してその興味・関心、能力・適性等に即した多様な学習機会を提供している学校も見られるが、「義務教育に関する意識調査」においても、教員で選択教科などで学習内容の選択幅を広げることに賛成(「賛成」、「まあ賛成」の計)なのは24.3%に過ぎないなど選択幅を広げることに消極的である。

○ 教育課程部会においては、限られた時間数の中で教育課程が複雑になるとそれぞれが薄くなってしまうので、必修教科を重視し、時間を掛けて徹底すべきなど、時間数の在り方を工夫すべきとの意見があった。他方で、選択教科の子どもの選択能力の育成という趣旨を踏まえる必要があるとの意見が出されている。



上記の意見の前半部分に全面的に賛成します。「選択教科の子どもの選択能力の育成」の力は必修教科で「確かな力」をつけることが先決だと考えます。幅広く学んでこそ価値がわかると思うのですが。なにしろ総授業時間数が限られているのですから。子どもが学習を選択するということについては、プランとしては魅力的にも感じますが…。
 なお、 選択教科はその性質上、学級の枠を取り払っての学習となりますが、生徒指導の困難校においては、この時間が非常に厳しい時間になっているという実態もお含みおき願いたいです。もちろん選択教科でよさを存分に発揮する生徒もいますが。
 
 必修教科の美術の時間が1年生で45時間。2、3年生で35時間しかありません。一単位時間は50分ですが…。準備と後片付けにもっとも時間のかかる教科です(理科や技術家庭でもそのような面もありますが)。そして教師の指導もあります。残った時間は…。子どもが盛り上がってきたときに、さあ、後片付け。このような教科特性もご理解ください。
 教科書には豊富な題材が提示されていますが、実際に現実可能なのはその中のごくごくわずかにすぎません。選択教科の時間を必修教科の時間の戻していただきたい。義務教育の中で一定の成果を得るためにも時間の確保は必要です。

ウ 部活動の取扱い

○ 部活動は、主として放課後に、特に希望する生徒によって行われる活動であり、学校において計画する教育活動として位置付けられている。

○ 部活動については、部活動がこれまで中学校教育において果たしてきた意義や役割を踏まえ、部活動を学習指導要領に位置付ける方向で検討すべきとの意見が出されている。これについては、今後引き続き検討を行うこととしている。

by yumemasa | 2006-03-21 07:44 | 新学習指導要領 | Comments(0)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明