鑑賞学習をデザインする

 最近日本文教出版から刊行(非売品)された「ベラスケスの「ラス・メニーナス」…鑑賞学習をデザインする」は、兵庫教育大学の福本謹一教授の企画によるものですが、とても勉強になる内容だと思います。こんな研究の仕方をやったらおもしろいだろうと常々思っていたものですから。

鑑賞学習をデザインする_b0068572_2111258.jpg 1、一つの題材を巡って8人の方の実践が紹介されています。しかも小学校・中学校の両方で。この「比較」しながら研究していくという手法は非常におもしろいです。比べることで何が大事なのかが見えてきたり…。鑑賞教育の中で自分の立っている位置が見えてきたり。
 そして福本先生のまとめの言葉の中に「まず肩の力を抜いて実践することが大切」と述べられています。私もあまりに考え過ぎずにやってみてはどうだろうと思っていますので…。
 もし、ラスメニーナスを 自分で授業をするとしたら、どうするだろう?とを考えてから、この本を読まれるとさらに面白いでしょう。

2、本とホームページがリンクしています。本が概略を示し、俯瞰しながら全体を把握する役割を果たしています。「詳しくはネットでどうぞ」というスタイルもあるのだなということで新鮮でした。おまけに少ないページ数でもネットと併用すれば、分厚い書籍に負けない効果が得られます。省資源で、ローコストも見習いたい。
 研究紀要のこんなスタイルもありえますね。

3、鑑賞授業をデザインする。このデザインするという言葉を使うと細部にとらわれすぎずに、全体の構成をよく考えられるようになります。不思議と。私も学校の研究で「総合学習をデザインする」という言葉を使い、好評でした。

4、出版物の表紙が福本先生ご自身によるもの。これも美術教師ならではですね。WEBデザインもかっこいいです。

5、さらに兵庫県造形教育研究大会で「ラス・メニーナス」の鑑賞授業が公開されています。本とネットだけではないのです。←小学生が実物大(?)の絵を前にして鑑賞している写真が公開されています。まず、この大きさに感動するだろうなあ、子どもたちは。

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《関連サイト》

ラス・メニーナス鑑賞プロジェクト
 ↑この本とリンクしているWEBサイト

日本文教出版

ファシリテーションによる鑑賞学習(zakkyの美術教育deトーク)

*この記事については日本文教出版様のご了解を得ています。

「ラス・メニーナス」を小,中学校の教材として取り上げる
(zakkyの美術教育deトーク)
Commented by 小崎真 at 2007-11-28 23:07 x
ラスメニーナス・プロジェクト(当時はそう呼ばれていました)について,紹介していただき(もう1年も前になるんですね・・)本当にありがとうございました。福本先生には,今でもご指導いただいてお世話になっております。次の企画がどんな展開になるか,楽しみです。
Commented by yumemasa at 2007-11-29 20:36
福本先生のこの企画素晴らしいなと思っています。比べてみることで見えてくるってことがありますから。そしてこの研究成果がwebで公開されていることの意味も大きいです。
by yumemasa | 2006-12-10 21:46 | 鑑賞教育 | Comments(2)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明