2時間で完成の「絵文字」

この絵文字は2時間で完成。(A4の台紙にはって感想を書いたのは別の時間)
1時間目「アイディアスケッチ〜したがき」
2時間目「彩色〜完成」
ただし、時間内で出来ない生徒はおよそ30%。しかし、その30%の子ども達も大幅に遅れている訳ではありません。準備と後片付けの時間も含まれていますから子ども達はよくやっていたと思います。1年生です。この題材の前は「自然から学ぶ」という題材で12時間じっくり取り組みました。(ただし、この中にはアクリルガッシュの使い方、スケッチ、色彩の学習、筆の使い方、デフォルメなど多様なものが含まれてます)
2時間で完成の「絵文字」_b0068572_021124.jpg しかし、ここで終わると美術というのは時間がかかるものだし、じっくりやらないといけないみたいに考えてもらっては困るわけです。
 そこで設定しているのがこの「絵文字」です。短時間でも楽しみながら作品が出来るという体験をさせたくて設定しています。授業もいつもと違って時間のことを随分いいます。「あ、あと10分ね」(ただし絵文字そのものが題材としてよいかどうかは別ですが…検討の余地はあるでしょう)
 これまでの授業とテンポがまるで違います。追求したり、楽しんだり、教育課程ではそのバランスが大切だと考えています。

 もうひとつのねらいは、過去に学んだことをつなげてあげることです。1学期にしたレタリングでの形のとらえ方、「自然から学ぶ」でやった多数のアイディアスケッチをしてからアイディアを練っていくこと、色の使い方など。一見バラバラにやっていることを、教師の方で振返る場をつくり、学びをつなげてあげることで、子ども達は力を発揮させると思うのです。

 過去の私はこの学びをつなげるというところが弱かったのです。この「学びをつなげる」ことが時間数、削減のうえで特に大事な力だと思っています。
 なお、この考え方はいわゆる「短時間題材」とは違います。



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↑台紙は上質紙です。枠を印刷しておきました。こうするとかっこよいのです。また全体を並べて掲示したと全体としての統一感が出てきます。完成した作品を台紙に貼ることはとても大事です。これをするのとしないのでは作品から受ける印象もちがいます。台紙にはるとき、子どもは学習のふりかえりもしますし、人に見てもらうという意識にもなります。
 感想・解説欄は枠は2分割。新聞の段組みを参考にして2分割したことを伝えました。段組みは読みやすさを考えてのこと。これは文字を読みやすくするためのデザインだと補足しました。
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↑中には作業の早い生徒もいます。家で完成させてきましたが、ほとんど授業中に出来ていました。
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↑作品の下がきが完成するまでに一人あたり3〜6枚くらいのアイディアスケッチをします。「もっとよいアイディアが生まれるかもしれないので一つのアイディアだけで、下がきをしないように話しています。いくら短時間であっても、やはりよりよいものを求める姿勢は大事にしたい。生徒に「人と違うだけで個性的でいいね、ではなく、その個性をみがかなくちゃ!」とよく話しています。
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↑「恋」いいなあ。恋にこがれているんだろうなあ。若者の作品は楽しい!

 なお、別紙で短時間でやったこの授業の感想を求めました。これが授業改善のための重要な資料になります。
以下は生徒の感想。

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「2時間で終わってしまうのは、私はおそいのであまりにあわただしく、好きではありません」
「時間が足りないなと思ったけれど、楽しかった。またやりたい」
「自分はこういうパッパとした授業は割と好き。だらだらせずスピーディーでいい。」
「あの短い時間でもここまでで色や形を表現出来ると思ってもみなかったので楽しかった」
「2時間はすごく大変だったと思うけれど、意外にそんなに大変ではありませんでした。たまに短時間でつくるのもいいなあと思いました。やっぱり色はとても重大な役割をしているなと思いました。」
「さすがに2時間じゃ時間が足りなかった」
「短時間で描くってきいた時はびっくりして、できるかどうか不安だったけれど、頭を使うし、アイディアも浮かぶし、長い時間をかけてやるより「パッパと描こう」とか思って描けたから私は短時間で描くのも好きです。すっごく頭を使った授業で、できたときはスッキリしました。」
「楽しかった、もう一度やりたい!」
「文字を生かしてデザインするのが楽しかったです。2時間しかなくて、正直大変あせったけど短い時間でも真剣にやれば、しっかりしたものが出来たからよかった。」
「一言で言うなら大変だった。けどそれに付け加えるなら、楽しかった!」
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あらためて、生徒の感じ方や考え方の違いを実感します。生徒の多様な個性を生かしたい。
教師のねらいいや意図とのズレも見逃せない。

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(追記)2011年現在、台紙の枠の印刷をやめました。余白を自由に使わせることで、デザイン(レイアウト)の力をつけたいと考えてのことです。生徒には余白の文字も含めて作品という言い方をしています。

Commented by hakusuke at 2007-02-02 00:02 x
「テンポよく学ぶ」今後指導上考えなくてはいけない問題だと私は考えております。高校で美術履修できる状況生徒が少なくなっている今,授業時数の関係上,一つの内容で濃い内容というか,多くのことを学ばせて起きたいといった考えがあります。内容が多すぎても,問題ですね・・・。しかし,先生が実践されたこの「絵文字」にしても,書き込みされているような基礎・基本があってこそ,短時間でできた内容かと思われます。2年生の授業内容でしょうか?そのためにも1年生の45時間の授業内容を立案する必要性を感じているところです。
私も,本日発想トレーニング?を高1の1時間授業を行いました。様々なアイデアをみることができて興味深かったです。「水」・「時間」・「音」・「道」からのデザイン。明日あたりにでもエントリーしてみます。

(蛇足コメント)馬場雄二さんの絵文字かるたはご存じですか?


Commented by yumemasa at 2007-02-02 01:20
前回の指導要領で授業時間数が削減された後、「短時間題材」という言葉がしきりに使われた時期がありましたが、そのことに私は危惧を感じていたのです。もちろんそのようなことを考えるのことも大事なことでしょう。しかし、多数の作品をつくることをこなしていくような傾向になっては教科の価値はますます弱くなると感じたからです。
この授業の前の「自然から学ぶ」では一本の曲線を描くのに10分以上使うような生徒も出てきました。苦労して生み出した、素晴らしい線です。ここでも美しい形を求める心を育てたかったのです。そこにはやはり時間の保証が必要です。じっくり時間をかけるべきところには時間をかけなくてはならないでしょう。つまり学びの質が大事だと思うのです。
大事なことは、学びをいかに「つなげる」かだと思っています。今回の題材はこれまでの学びをつなげて成り立つと思うのです。実はこれは次に実施する題材へとつながり、それは2年生の後半でやる「想像画」つながるのです。
Commented by yumemasa at 2007-02-02 01:20
(続き)もっと言えばレタリングの学習が絵画や彫刻の授業につながるそのような考え方です。○○のつくり方、○○の描き方ではないということです。
ですから1年生の45時間大事です。というか3年間ですか。この学びをつなげるのは、まるでパズルのようです。
ところで、絵文字かるた、検索してみたら楽しいHPがあるんですね。いろいろなことよく知っていますねー。ありがとう。
Commented by hakusuke at 2007-02-03 12:41
絵文字かるたTBさせていただきました。アマゾン“おもちゃ&ホビー”でチェックしたところ,随分販売されていることに,今更ながら気付きました。参考まで。
Commented by あおい at 2007-02-22 19:02 x
明日、美術のテストで絵文字を考えなければいけなくて、でも、ぜんぜん思いつかなかったけど、これを見て少し思いつきました。とても、参考になりました。
Commented by yumemasa at 2007-02-22 21:08
あおいさん、お役に立ててよかったです。テスト頑張ってくださいね。やはり好きな文字を選んでやると気合がはいっていいみたいですよ。
by yumemasa | 2007-02-01 23:28 | 美術の授業(山崎) | Comments(6)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
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