あなたにしかできない鑑賞教育を
2007年 04月 12日
この対話型鑑賞の方法はこのブログやあるいはちょとした美術の研究会ではもうあたり前の感じがあります。しかし、昨年いった小学校の先生は誰一人このようなものがあるとは知りませんでした。地方の美術教育の研究会でもほとんど知られていませんでした。
このような研究会の成果を表に出していくことは、実はとてもとても大事なことだと思っています。では、三澤さんのレポートをどうぞ。
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文教大学三澤です。
去る、4月7日(土)8日(日)と長野県信濃美術館と長野県東御市梅野記念絵画館で、アメリア・アレナスを招き、長野県の小中学校の教員対象に対話型鑑賞の研修会が開かれました。
彩ネットやzenzo-artに入っている方も何名か来られました。今回の研修会は、長野県美術教育研究会の寺島会長ほか、副会長の信州大学橋本先生のお骨折りで、なんと、2館会わせて110名以上の参加がありました。実はもっと参加希望があったのですが、定員と言うことで涙をのんだ先生も多かったようです。
さて子どもたちですが、信濃美術館では約80人の大人たちに囲まれ、、それはもう緊張しまくりだったと思いますが、アレナスの見事な接し方で、子どもたちは鑑賞を深めていきました。
午前は小学生、午後は中学生。各20名で対話型鑑賞を試みました。そのあと、参加者を対象にアレナスのレクチャー、そして急遽、参加していた奥村調査官のミニ講演。松本館長のお話もあり、それは参加した方々にとってはとってもおいしい研修会になりました。
最初はまず大人たちに対話型鑑賞のレクチャー。子どもたちにするのと同じように行いました。そのあと子どもたちとの対話型鑑賞。子どもたちはたった10人と少人数でありましたが、物怖じせず思ったことを一生懸命話している姿が印象的でした。特におもしろかったのは、川越市美の時と同じように2人の作家を参加させたことです。
一人は、木下晋さん。一人は文教大学卒業生の浅見君です。
そして、午後は高知大学の上野先生の講演会。そのあと、信濃美術館の土屋さん、信州大学の橋本先生、そして私も少し話しをさせていただきました。
今回の研修会は、美術館に小学校、中学校、大学、美術館学芸員と、様々な校種職種の方が一同に集まり研修会が開けたことです。これには橋本先生も、このようなことは今まで長野ではなかった。記念すべき第一歩だとおっしゃっておりました。
今回の長野でのレクチャーはアレナスもとても満足していました。スタッフみんながとても気持ちのよい人ばかりでとてもよかったと言っていたそうです。
梅野記念絵画館佐藤さん、信濃美術館伊藤さん、土屋さん、そして@MUSEUM藤元さんほかスタッフの皆さん、橋本先生、上野先生、奥村調査官。ありがとうございました。
最後にアレナスが入っていた言葉、
「この鑑賞はメソッドですが、メソッドにしないで欲しい」つまり○○式ではないと言うことです。それぞれが私の方法を参考にして、あなたにしかできないトークをして欲しい。」
そうメッセージをのこしていました。
もしかして、来年長野から対話型のムーブメントが起こるかもしれません。
☆ アメリア・アレナス鑑賞教育研修会in長野
↑ BLOG「文教大学教育学部 美術研究室」(三澤一実さんの報告)
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(山崎の感想)
アメリア=アレナスさんのメッセージとってもとっても大事だと思うのです。この対話型をまだ試されていない方は、ぜひ試みてみることをおすすめします。
基本的な方法は非常にわかりやすいテキストが出ていますので、何とかできると思います。
☆ 鑑賞教育のおすすめテキスト
ある程度までなら、誰でもできると私は思っています。ただし、奥は深いです。
作品を鑑賞する中から出てくる子どもの言葉。どきりとするものもたくさんあります。同じ作品を見てもクラスが変われば展開も違って来ます。
作品鑑賞を通して絵の見方が深まったり、子どもどうしが互いの感じ方を尊重したり。何しろやっている教師もおもしろいですし。
ただ、気をつけることは、鑑賞の時の意見交流で目立ちたいばかりにわざとウケをねらう発表をしたりすることがあります。それは初期の段階でや注意を促す必要があります。ただし、あまり強く注意してしまうと硬くなってしまいますので、加減がいります。
それから、ただ発表をさせっぱなしではなく、子どもの発言をつなげていくことです。なおアメリア=アレナス氏のトークでは子どもの人数を少なく抑えています。
これを40人でやるともなれば同じように出来ません。
私は順番に発表してもらったり、指名をしたりと組み合わせながらやっています。
そしてアメリア=アレナス氏より、有利な点があります。授業をする子ども達のことを知っているということです。さらに一度きりでさようならになりません。次にもつなげることができます。その先生とその子ども達だからこそのトークがあるはずです。これって最高に素晴らしいことだと思います。
そのために子どもの言葉をテクニックで受けとめたり、つなげたりするのではなく、ひとり一人の感じ方が違うからおもしろいんだということを基本として進めるといいと思っています。いろんな意見がからむからおもしろいのですし、深まると思います。
私は、子どもの感じ方の違いがとてもおもしろいと思っているので笑顔になっています。
今日の授業では、教科書作品の鑑賞も簡単にしたのですが、軽く10人くらいの感想を聞かせてもらっただけでもおもしろいです。「なるほど、そうか、そんな見方もあるんだ」なんて思いました。
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