なぜ美術を学ぶのか
2007年 04月 30日
ブログにも共感していただきとてもうれしく思いました。
なお、この文章を読んで 佐藤忠良氏の作品も違って見えてきたということでした。こうして美術教育関係者以外の方にご理解いただけることがなんと心強いことか!
さて、佐藤忠良氏の文章は中学生に向けて書いたものですが、やはりホンモノは大人の心も動かすのだとあらためて思いました。
そしてまた中学生はホンモノを求めていると感じます。
実はこの文章は、これまで授業の中で紹介してきました。最近はスタイルを変えたので直接は使っていませんが…。美術教育に対する哲学が書かれています。
「なぜ 美術を学ぶのか」 佐藤忠良
人は、中学生くらいの年齢になりますと、
自分のすることの意味を知りたいと思うようになります。
いま美術を学ぶ前に、きっと皆さんが知りたいと思っている、
なぜ私たちは学ぶのかを、お話します。
すべての生き物は、遺伝や環境の影響から逃れられません。
しかし、人間は、長い進化の歴史の中で、意欲をもって事に当たるとか、ものを判断して生きるとかの特別な力をもつことができました。
他の生き物と大きく違うところです。
意欲や判断する力というのは、目当てをもって生きていける力であり、自分で自分を成長させていける力です。
この意欲と判断力は、すべての人に公平に与えられていますが、均一ではありません。
人によって意欲や判断力の発達する面が違ってきます。
ここでの問題は、そうした力を、自分がどういう仕方でより開発できるかです。
このために勉強があるのです。
勉強といっても本を読むだけではありません。
ものを作ることをも含めて、目当てをもった仕事をやりぬくなかで、自分をつくっていくことです。
美術を学ぶとき、既成の美術というものがあって、
それを覚えたり、詰め込んだりすればよいと考えないことです。
自分の感動や感覚が最初です。
何かをしたいという意図が先です。
それから技術ですが、技術は人間が長い時間をかけて、自然を手本にして、習得してきたものです。
自然の恩恵と人間の努力の影を感じながら身につけよう。
こうして自然から学んだ技術だけが、自分の意図を表現してくれるのです。
もう一つ、時代や国境を越えて生き続ける名作との遭遇があります。
この出会いは、きっと皆さんの心をとらえて離さないでしょう。
それまで抱いていた偏見を正してくれて、
真理に触れるわけですから。
私は、皆さんの一人一人に、ほんとうの喜びや悲しみ、そして怒りがどんなものかがわかる人になってもらいたいのです。
美術を真剣に学んでください。
真剣に学べば、美術は必ずこたえてくれます。
「少年の美術」
(文部省検定済教科書・中学校「美術」・現代美術社)より
残念ながら今この会社はありません。
すべての教科にこの学ぶ意味が書かれていたらよいのにと思います。
『少年の美術』確かに意欲的で大変魅力のある教科書でした。採用されることはなかったのですが…。
でもこの教科書は文章が多かった。なぜ、美術を学ぶのかが子どもに向かって真剣に語られていますから。
私も影響を受けました。