(重要記事)図工美術教育を消さないために…運動論として

 昨日の記事で私は次のように書きました。

「美術の教員の減少です。それは美術の免許を持った教師による授業が減ることを意味します。授業の質の低下。
 このような状況でおそらく10年後(たぶん、このスパンは短くなるでしょう)の指導要領改定前に美術教育の価値を世間に伝えるのはもっと厳しいでしょう。」

これに対して、京都の東良雅人さんから以下のようなコメントをいただきました。

今後は各学校の美術の非常勤化、兼務化が進んでいくことでしょう。しかし、それだからダメと言うことではなくて、これからは

①若年教員の育成
②非常勤、常勤講師に対する研修の呼びかけ、充実
③一人配置校が多くなることから、研究会を中心とした情報交換や題材の教材研究の深化

などが求められてきます。


対応策については、その通りと思います。さて特に②や③に関わっては、今度開催する「石狩造形教育研究大会」がまさに、そのことを意識したものです。準備不足でどこまでやれるかは、わかりませんが…仲間とともに頑張ります。
石狩造形教育連盟
今後の美術教育の研究会の一つのあり方の提案をしているつもりです。
これをたたき台に全国各地で同じような主旨(美術教育支援)を研究会の中に盛り込んで開催されればと思っています。どうでしょう。

なお①に関わってですが、来年の北海道の新規採用の数がわかりました。大事にしないと!
来年度の教員採用候補者は10名(美術科)
そういえば、私のブログを見ているという大学生が旭川でわざわざ声をかけてくれました。話し中だったのでろくに挨拶もできず、残念。

それと同時に「なんでも展覧会」のように地域や立場を超えた教師の連携と学びあい。
(例) なんでも展覧会の概要報告

授業では活動後の子どもの「ふりかえり」による学んだ意味や価値を認識してゆく場をつくること。また、各種調査。
(例) 生徒の言葉に感動しました。←中学生からこんな言葉が出てくる授業にしたいと思いました。←鈴木英司先生の指導です。

美術の学力とは何かをつきつめて考えていく仕事。
(例) 美術の学力ー学力保障カリキュラム

それからもう一つとても大事な取り組みがあります。

 それは広く社会に対し、子どもの(幼児期から)造形的な活動が子どもの人間形成にいかに大事な役割を果たしているかというその価値をご理解いただく活動です。
(例) Kids Art Labo
(例) 千里敬愛幼稚園での子どもの絵のギャラリートーク←従来保護者対象でしたが、なんと幼児教育に携わっている方や学生さんも対象に!幼稚園教諭養成課程での困ったカリキュラムがあることを知り、がく然としていましたから、この企画の価値は非常に大きいです。
 
 私も小さなお子さんをお持ちの方々にアドバイスさせていただいて、確かな手応えを感じています。

 産婦人科や小児科医との連携も大事だと思っています。まだこのことには手をつけてはいませんが…。
(例) 子育てと子どもの絵
(例) 美術教育の大切さを知っていただく〜美術教育の危機を前にして
 今回は学力低下論が指導要領に大きな影響を与えました。芸術系教科は蚊帳の外。子どもの成長のために、欠かせないものであることを伝えなければなりません。
 教育心理学の立場からの研究もスタート。

(例) アートの教育の可能性を拓く-芸術系教科の授業削減計画再考-←この研究会に参加しましたが、その中で佐伯 胖(青山学院大学)氏が話されていた運動論としての「ゲリラ」。心強かったです。とにかくこれは美術教育界からではなく、教育心理学からの発信というのが本当に心強いです!

 そしてマスコミにも取り上げていただかないと…
(例) 美術教育の価値は伝わっていない
(例) 北海道文化放送UHB「授業削減でピンチ・図工の魅力と可能性」←UHB報道部の松本裕子さんは授業中の子どもの姿に感動して涙を流していました。マスコミにも価値をご理解してくれている方は多数おられるはず。

 私が考えられるのは、ざっとこんなところでしょうか。長期的な展望に立ち、行動を全国で起こしていけば、そしてそれが正しいなら変えられると信じて。

 ここに書いたことは、じっくり考えていきたいです。
 
そして今日から開催されている「第44回 全国高等学校、工芸教育研究大会」では私も提案させていただきました。
 ☆ 美術教育の大切さをご理解いただくために〜発信と連携を!

自分の学校で
 ☆ 美術教育…校内で理解されることから


(重要記事)図工美術教育を消さないために…運動論として_b0068572_0341969.jpg


ここにさっと書かせていただいた例はあくまで一例。まだまだあります。書き切れないです。これらがまとまって関連し合っていったら大きな力を生み出すに違いない。
そして、このブログで紹介したいような学ぶべき授業もたくさんあります。データを持っているのですが、今はその時間がなくて…、少しづつ公開していきたいです。

《追記》

この記事を書いたあと、こんな企画が。

 ☆ 「∞のこどもたち展」
Commented by hakusuke at 2007-11-07 22:59
>③一人配置校が多くなることから、研究会を中心とした情報交換や題材の教材研究の深化
本日指導主事訪問でした。
地域には10校の中学校ありますが、中規模校でも、美術担当1名の指導者です。指導内容や地域の実態を検討しながら、連携を図る必要性について指導助言を受けました。
現実問題、今年の美術教科初任者研修。我が県は、私を含め2名で教科指導受けていました。授業力の向上のためにも、多くの方々と連携を図る必要があります。
Commented by yumemasa at 2007-11-07 23:46
hakusukeさん、私の地域は一人配置が当たり前です。とにかく学校に一人だから自ら学ぶ姿勢が大事ですよね。それと他教科から学ぶ、それも大事ですね。私は初任者のころ、理科の授業から多くを学びました。校内研究も本気でやると身になります。互いに頑張りましょう。
Commented by 梶岡 創 at 2007-11-08 00:33 x
こんにちは。いつも読ませていただいています。文中にありました佐伯 胖氏ですが、著書は私の愛読書で、その学びの構造などは美術科教師必修だとさえ考えています。
教育心理学・・・特に認知心理学をベースに美術教育を考えていかなければいけない、という言葉を最近耳にします。非常に有効な考え方だと思っています。
幼少期に「積み木」で遊び、「砂場」で遊び、お絵かきをして人間としての認知領域を広げてきた我々にとって、それらの延長線上にある美術教育は「全ての人」に必要な学びであるべき。
美術が趣味的領域だと誤解されるような授業ではなく、人間としての学びや育ちに関わる根源的なモノであることが理解されるような授業を増やすことが肝要であると考えます。
(そういえば以前 大橋功先生とも同じような話題で飲んでた記憶が・・・・)
Commented by yumemasa at 2007-11-08 01:20
梶岡さん、うれしいコメントです。
「幼少期に「積み木」で遊び、「砂場」で遊び、お絵かきをして人間としての認知領域を広げてきた我々にとって、それらの延長線上にある美術教育は「全ての人」に必要な学びであるべき。
美術が趣味的領域だと誤解されるような授業ではなく、人間としての学びや育ちに関わる根源的なモノであることが理解されるような授業を増やすことが肝要であると考えます。」まさにその通りだと思います。「根源的なもの」って言葉が響いてきました。
大橋さんとお知り合いなのですね。ブログ見させていただきました。精力的ですね!見ているとなんだかとてもうれしいです。リンクさせていただきました!これからも、どうぞよろしくお願いします。そして共にこれからどうずべきか考えていきたいですね。何はともあれ発信する方が増えてくるのは心強い限りです。
佐伯 胖氏のお話を伺いましたが、本気を感じました。心強かったです。
Commented by 梶岡 創 at 2007-11-08 19:30 x
素早いレスポンスですね。早速返事が書いてあって、感動です。ちなみに京都の東良先生とも知り合いです。いつも鋭くご指導いただいております。
Commented by yaritaka at 2007-11-08 20:19 x
中学校もそうですが、心配なのは小学校もだなと思います。

あたりまえですが、小学校は、その性質上、他教科専攻の教員が指導することが圧倒的多数です。

美術専攻として現場にいて、その人達が図工の指導に苦しみ、悩んでいて、素晴らしい指導をされている方も、自信をもっていないことを痛感します。

その方々へのなんらかのフォローができれば、もっと図工の楽しさ、良さを子どもに伝える輪が広がるのではないかと思っています。

専門家が教えてやる、ではなくて、共に考えていこうよという行動をとるためには、どうしたらいいのか試行錯誤しています。

蛇足かもしれませんが、コメントさせていただきました。
子どもが「好き」とあげることの多い教科の立場が危うい。なんだか悲しいです。
Commented by yumemasa at 2007-11-09 01:11
梶岡さん、こちらこそ。梶岡さんのブログの記事の切り口、面白い視点だなあと思います。あんな切り口考えても見ませんでした。素敵な人からコメントいただいちゃいました。東良さんとお知り合いとは!
Commented by yumemasa at 2007-11-09 01:19
yaritakaさん、蛇足どころか、補強ですね。このブログはこうした付帯意見がつくことで価値が高まっていくのだと思っています。
「素晴らしい指導をされている方も、自信をもっていない」あるいは「専門家が教えてやる、ではなくて、共に考えていこうよという行動」実は、先日旭川であった研究集会でそう感じました。
やはり共に考えていこうというのはいいですね。私はみんなで知恵を寄せ合い、あーでもない、こーでもないといいながら一つの授業をつくりあげていくってのがとっても好きなんです。
また、是非コメントください。子どものために教師が共に知恵を出し合う、これ大事だと思います。
Commented by 東良 雅人 at 2007-11-09 16:40 x
先ほど,高等学校の美術,工芸の全国大会から帰ってきました。
山崎さんの文書発表も拝見させて頂きましたよ。

なんかコメントしたことがかえって波紋を広げたようで申し訳ありません。
ただ,教材の交流はどこでも結構されていると思うのですが,「美術で身に付けさせる資質や能力」をどのような題材で,どのような指導で。。といった本質的な情報交換や研修は少ないような気がします。また,講師の先生方は教材の準備だけで精一杯の先生も少なくないので,「美術という授業を通して生徒一人一人にどんな力を身に付けさせるのか」ということを明確にして指導の質を高めていくことが必要だと思います。
「何をさせるのか」ではなく「何を身に付けさせるのか」これからの若い先生方には,是非この視点を持っていただきたいと思っています。また,身に付けさせる資質や能力の基本はそれぞれの先生方が勝手に考えていいものではなく,それは学習指導要領であるということもしっかり理解することも大切だと思います。

>梶岡先生

ご無沙汰しております。皆さん活発にブログ等で発信しておられるのですね。なかなかそういうことが出来ないので尊敬しちゃいます。
Commented by 梶岡 創 at 2007-11-09 18:29 x
>東良先生
山崎先生のブログで東良先生に返事を書くのもどうかと思ったのですが、失礼します。
自身のブログにも書きましたが、今まで学校や教委のHPデザインばかりやってて、自分の発信を怠っていたので、最近始めたばかりの新参者です。(梶岡のブログの方にも鋭いコメントお願いします。)
東良先生の言葉にありました~「何をさせるのか」ではなく「何を身につけさせるのか」~は、私のブログのテーマでもありますので。
Commented by yumemasa at 2007-11-09 21:19
東良さん、お疲れさまでした。コメントしていただいたことで、こしていろいろ深まるのはとってもよいことです。
これからもどうぞよろしくお願いします。

美術で身に付ける力を明快にしなければ、ならないです。こんな指導をしたら、こんな作品が出来ました、ではなく。育みたい力を明快にしながら、というのが本当に本当に大事ですね。それはまた「題材観」に出てきます。「題材を設定した理由」これは教師が大きな責任を持っています。よく説明責任ということが評定のことで言われますが、実は一番説明できなければならないのは「題材を設定した理由」なのでしょうね。
いや、説明責任という消極的なことではなく、提案責任とでも言ったほうがよいかなあ。
Commented by yumemasa at 2007-11-09 21:21
梶岡さん、気にしないでくださいね。ここが「掲示板化」することもあるんです。それはそれで、またおもしろいんです。ところで記事にしていただきありがとうございます。
記事が関連し合うのもいいですね。
Commented by yaritaka at 2007-11-10 03:44 x
あたたかい返信ありがとうございます。
小学校にいるからというのもあり、いてもたってもいられずで・・・。

子どものために教師が共に知恵を出し合う>そのとおりです!このことにつきますよね。


Commented by 大橋 功 at 2007-11-12 00:51 x
最近、あまり自分自身で発信できていませんが、このサイトのように美術教育の世界が繋がり合っていることはとても大切ですね。佐伯先生は今年の学会大会の講演をお願いしましたが、やはり美術への応援を力強くしていただけました。それだけに、自分たちがしっかりしなきゃ!ってつくづく思いましたね。
少し前から、ほんと少しですけど、個人的にもお話ししたこともあり、その人となりはおだやかで、実直なかたです。これからも、勉強させていただきたいと思っています。
梶岡さん、東良さん、共に論客ですね。私は今は東京にいることが多くなりましたが、また一度ゆっくり作戦会議を居酒屋でやりたいですね。
Commented by yumemasa at 2007-11-12 23:21
美術教育の世界がつながるって感覚、5年前は感じていませんでした。正直。学校では一人ですし、あとは地域の研究会。それしか知らない。それは、もちろん本などは読んでいましたが…。
しかし、同じ思いの人がたくさんいるんだなと知ると元気が出ますね。佐伯先生の講演のお話、金沢の森田さんから伺い、大変示唆にあふれるものなのだなあと思いました。教育心理学会でお話を伺えてよかったです。
by yumemasa | 2007-11-07 20:29 | 美術教育の啓発活動 | Comments(15)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明