その子だからこそ描ける絵

その子だからこそ描ける絵_b0068572_15455720.jpg私の学校には障がい児の学級があります。この絵は、その学級の生徒が(知的障がい)描いたものです。指導を終えた先生がいつも見せてくれます。上の絵は校外学習で「道民の森」という所に行って来た思い出を描いたものです。お話をしながら描き進めていったのだそうです。私が「おそらく、絵の中でもう一度トロッコに乗っているんじゃないかなあ」と言うと、深くうなずいていました。
その子だからこそ描ける絵_b0068572_15462198.jpg下の絵は、学級園で育てた「アンデス山芋」を収穫している場面です。やはり、この時も描いているとき、いろいろ話していたそうです。そして、「芋でカレーライスをつくろね。」と言ったらニコニコしてまた描き進めたのだそうです。
 この先生は、特別図工の指導が得意だとか、専門的な知識を持っているわけではありません。しかし、非常に学ぶべきことの多い実践です。
 題材の設定がよいのです。子どもが描きたくなる、表したくなるそんな題材を設定しているのです。
 またいつもそばに寄り添って、子どもから絵の話を聴いていますから、子どもも喜んで描くようになります。特に上の絵で細かく描かれているものや、その時の楽しい様子を、その先生は全て知っています。
 絵を通して、その子を受けとめていると思うのです。その先生との会話も、色がどうだとか形がどうだとかという話にはなりません。子どものことが話題になります。
 この絵のよさは、描きたいから描いた絵であり、その子がこの世に生きているからこそ、生まれてきた絵です。そして。子どもは描くことを通して共感してもらっています。だから。描いていてうれしいのです。

★追記…後日、職員室で指導された先生にこの記事をお見せしたときのことです。ぱっと笑顔になって「○○くんの絵だあ!」と声をあげてくれました。この絵を描いた○○くんが、可愛くてしかたがないのです。彼を受けとめているということなのだと思いました。記事には照れていましたが、本当のことを書いただけです。
Commented by jugogon at 2004-12-29 21:37
すbらしいですね~。子どもの絵ってかんじがする。
そう、わたしが描かせた絵は子どもの絵というかんじがしないのです。
大人が見てすばらしい絵。
子どもたちは確かに親からも先生からも誉めてもらったけれど・・・。
子どもの描きたい絵ではなかったなあと思うのです。
でも、なかなか実践がむずかしいですね。机上の空論にならないよう、
日々実践を少しずつ・・・が当面のテーマです(^^;
Commented by yumemasa at 2004-12-29 22:20
jugogonさん、これまでの実践を振り返っているので、これから前に進めますよ。きっと。指導書はニュートラルといえるので、そこから入門がいいかもしれません。
この絵を指導された先生も数年前、私に最初に絵を見せてくれたとき、私に「どうですか?」って少し、不安そうでした。今は、全然違いますよ。「先生、先生が喜ぶもの見せてあげますね!」とか「○○出来たんで見て下さい」って言ってます。で、私の方が、逆に「描く前に、最初に子どもに何て言ったの?」とか聞いているくらいです。
 美術系の大学で専門に勉強していたから、よい指導が出来るとは限りません。私は経験がたくさんありますが、だからといって、いつもよい指導ができているわけでもありません。あーすればよかった、こーすればよかったなどと思っているわけです。そういう時はsimpleに考えるようにしています。すると意外に見えてくることもあるんです。
お互い子どもの描いてくる絵を楽しみましょう!
Commented by shiho at 2004-12-30 22:39 x
ご無沙汰でございます。
上の絵、とってもその子(描いた子)が見えて、いいですね。
以前お話した我が子の絵も「芋ほり(酒井式)」だったんですが、
こういう絵が見たかった!
その後、絵が返ってきましたが、そのコメント(自分が書いた)には、
「まちがってしまったところもあったけど、最後までかけました」と書かれてあり、そのコメントを読んで、ほんとにガッカリしてしまいました。
自分を表現するのに「まちがい」ってあるはずもないのに・・・。
返された絵から我が子が見えませんでした。
Commented by yumemasa at 2004-12-30 23:20
返された絵から我が子が見えない、そこが問題なんですよね。
実はいま、過去に酒井式に取り組んでいて、何か変だと気がついた先生がこのブログを通して様々な実践を知り、葛藤し、学んでいます。私の地域にも昔酒井式の指導(指示)をした先生がいますが、今は完全に否定しています。
実は、親が酒井式に悩んでいるという実態は知られていないようです。酒井式に取り組む人は、親も子どもも喜ぶということで自負していますから。こういった親の立場から発言は大きいです。Shihoさんの先生も気がついてくれるとよいのですが。
Commented by jugogon at 2004-12-30 23:43
コメントありがとうございます。
とてもうれしく思っています♪
酒井式という名前を知ってから半年。
どこか違うな・・・と思っていたのですが、
自分が思う以上にしんどいな・・・と思う指導方法でした。
でも、賞に入る絵がやっぱりいいのでしょうか・・・。
子どもにとってはいいのでしょうか・・・。
と、不安ばかりよぎります。
隣のクラスは賞をもらい続け、
うちのクラスはまったく・・・。
それが、絵本を見て描かせた絵であったり、
教師が手を加えた絵であったり、
それが・・・、良い絵と判断されるなら・・・と、
よくないことを考えた1年でした。
・・・っも~。しんどいですね・・・。
でも、ブログを通して、こうやってyumemasaさんに知り合えた事に感謝しております。
Commented by yumemasa at 2004-12-31 00:45
jugogonさん>一般的に考えれば、賞にたくさん入賞するとやはり指導者いいからだと思われますよね。当然ですよね。私も教師になったころは、入賞が多ければ喜んでいた時期があります。コンクールには功罪があります。これは知っておいてよいことです。それから、隣の学級の子どもでコンクールに入賞しなかった子どもの気持ちも想像して下さい。どうです?
そして、この記事で取り上げたこの絵の本当の表現の価値を知っているのは指導した先生なのだと思います。美術の専門の私ではありません。そして上のコメントでsihoさん(親です)の、コメント読んで下さい.最後のひと言、重いです。図工は、しんどくないですって!考えすぎないことです。冬休みに自分なりに指導書でも読んで題材をひとつ、考えてみてみては、どうですか。具体的なことで考えていったほうが、先が見える気がします。今のクラスの子どものことを前提にですけど。指導書の他にも他の先生のサイトをご覧になるのもいいかもしれません。
by yumemasa | 2004-12-29 16:15 | 子どもの表現 | Comments(6)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明