香川で旅するムサビ&中学美術研修会(寄稿)多田俊二郎さん |

午前中は映像ワークショップ。武蔵野美術大学の米徳先生が講師となり、デジタルカメラの動画機能を用いて、30秒から1分の無声映像を作ります。カメラは三脚固定で、必要なのはその場の構図と、何を写すかにかかっています。
お題は「夏」。最初に初期映画の無声映像を見て、イメージを膨らませます。短時間に大量の情報を送りつけてくるCMとは違って、ワンカットワンシーンですから「間」の取り方がキーワードなのかな、と思いながら見ていました。
いざ撮影。新設の校舎ですからけっこう絵になる場所が多く、あちこちにポイントを探しに出かけました。先生方に混じって中学生の美術部や大学生のグループもあって、おもしろい映像がたくさんありました。本当は高校生のグループも招きたかったんですが、企画段階で無理と判断されたのがちょっと残念でした。
何を表現したかったか、という説明を聞き、短い時間でもいろいろな要素を盛り込もうと試行錯誤している姿が見え、その要素とともに積極的な姿勢がまた勉強になりました。

ムサビの学生が中心となり、香大の学生も加わって実施。鑑賞者が先生たちというイレギュラーな組み合わせでしたが、先生相手でも物怖じしない学生たちの経験豊富さを感じることができました。ある羊の作品では鑑賞者である教師から絵に関する厳しい評価が出て来て、ファシリテーターや作家が固まってしまうという事態もありましたけど、学生にはそれもまた良い経験として伸びて行ってほしいなと感じました。
その後の三澤先生の講演では「これからの鑑賞授業のあり方」として、学習指導要領の作られ方や、表現と鑑賞のバランス、評価についてなど、図式を用いて非常にわかりやすく説明していただきました。

こうでなくてはいけない、とすぐに結論を求めがちな議論に陥るところではありますが、本来はその相互関係、バランス感覚が必要なんですね。
今回は、美術館の学芸員や高校の先生など校種を超えた人たちも集まっていただけました。これについてもいろいろ内部であったんですが、中学校の先生方が研修を深めている姿や研修内容を見て、感じて、それを自分たちの分野でこどもたちに返すきっかけを手に入れられたことでしょう。
また、この話をきっかけに、翌日の30日は高松市美術館でムサビの学生によるワークショップも開催されました。いろいろな形で、いろいろな場所で、いろいろな人たちがつながって行く。そのための美術の大切さを垣間見た気がします。
デジカメを使った映像ワークショップや対話による鑑賞の研修を受けた先生方が、この刺激をどのように噛み砕いてこどもたちに返していくか。今後の先生方の実践に期待しましょう。
一般財団法人 さぬき生活文化振興財団
造形教育コーディネーター 多田 俊二郎
(山崎感想)中学校美術の教員は他教科に比べると数が少ないです。そんな中で地域の研修会をしていてもメンバーが固定化するため新鮮味がなくなってくることもあります。また地域をリードする先生がどんな考えを持っているかという事も大きく左右するでしょう。そんなときに異校種の研修や外部から講師を招いての研修などは視野を広めたり、深めたりする絶好のよい機会になると思います。
そんな意味で、この香川の取り組みは参考になります。
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☆さぬき生活文化振興財団
☆ゆかいな余暇を!
学生が教員の研修で授業を公開するのは何度もありますが、今回は先生を対象にファシリテーションするというものでした。この様なワークショップでは、一人一人が対等な立場で議論し合うことが重要ですが、なかなかその様な立場に慣れていない方もいて(学生に、自分の美術に対する考え方を教えようとして下さる先生)学生も驚いた事だと思います。
あらためて、対話を成立させる要素として、”美術を介して感じ方は平等”という原則を確認しました。
いずれにしても香川の先生方はとても熱心でした。
研修では映像ワークショップは面白く。新しい中学校美術の題材として可能性を持っているものです。今回香川の先生方に紹介できて嬉しいです。また、香川大学とのコラボレーションも我々にとっては大きな学びでした。翌日の高松市美術館でのワークショップも高校生のお手伝いを得て学生も張り切っておりました。
異校種間の交流は、学びにおいて面白い化学反応を生み出します。それが出来るのも芸術教科の特権です。今回も大いに学生が成長しました。(みさわ)

