スケッチする能力(その1)

 下の絵は2年生の1学級全員の絵です。冬休みの課題として「描かせた」絵です。課題ですから、あわてて前日にやったというものも含まれています。いやいや描いた生徒もいいかげんに描いた生徒もいます。もちろんじっくり描いた子もいます。未提出も4人です。(早く見せてくれよーと言っていますが。)子どもが家でやっているのですから、私の指導はなしです。
 これらの絵を見てどう思われるでしょうか。「中学校2年生でこの程度?」と思われる方もいるかもしれません。
 でも、私は最近、これだけ描けたら十分だと思っています。なぜなら、この絵は基本的には「描かされた」絵ですから。もしこの生徒たちが本気で「描きたい!」と思ったら、大人になったときにも描けると思うのです。さらに興味を持って、好きになってたくさん描けば表現力は向上しますし。
 
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★しかし、それでも、このままではいけないと感じていることがあります。 それは…



 この授業の最初に「これから、作品を鑑賞するのだけれど、見られるのがいやな人は?」と聞きました。すると6人が手を挙げました。「どうしてですか?」と手をマイクのようにして、インタビューしたのです。「へただから」ということでした。
 でも私から見て決してそうではないのです。
つまり、自分の作品のよさに気がついていないのです。ここが課題なのです。
自分は絵がへたとか、才能がないとか思い込んでしまうのです。

 その自分の表現のよさに気づいてもらうために、この鑑賞の授業があります。ですから、この休み中に出す課題のねらいの半分以上はこの鑑賞授業のためにあるのです。
 しかし、おもしろい傾向があります。級友の作品のよさはちゃんと認めているのです。
自分には厳しいのです。しかし、その作品を鑑賞する中で生徒の意識も変わっていきます。
 「自分はヘタだ」と言っていた生徒が照れくさそうな笑顔を見せたりします。
(私は「別にほめてはいないからね。本当にそう思うから言っているんだよ。」ということもあります。)

ここでは、同じようなものを描いてもその人の感じ方によってその表し方が違うのだということをつかんでもらうようにしています。
 1年生の鑑賞では名画の表現の違いも気がついてもらえるようにしています。マチスもあれば雪舟もあるし、レンブラントもあるわけですから。


実は、今の大人の方にもいいたいのです。描きたければ描きましょうと。うまいとかへたとか考えないことです。まずは描くことそのものを楽しいでくださいと。ちなみに、いわゆる写実的な表現力は訓練によって高まっていきます。でも絵は写実的な絵がよいということで言っているのではありません。

 
Commented by ききょうぼけみ at 2005-01-20 12:13 x
こちらにはいろんな人が来ていて、いろんな意見が聞けていいです。書きたいこと、描きたいこと、つくりたいモノがあったら、やればいいんだと思います。わたしも。「上手」にできないことをおそれてる気持ちが唯一の敵ですよねえ。「私」がやったことを喜んで大切にしてくれる人、いますから。生徒さんにとって、先生がそういう人だったら心が開けます。冬休みの絵、描かされた、といっても、自分の好きなのはこれなんだ!って出ちゃってるのが面白い。きっと、描かされたなんて気持ち、忘れてると思う。今の自分が好きなモノ、描いたことできっと心に残ってて、それが財産になると思います。
 こちらでコメントされてたmaruya-naosimaさんを、昨日夫が読んでた「AERA」でお見かけしました。びっくり!直島、いってみたいです。
Commented by yumemasa at 2005-01-20 20:37
ききょうさん、いいこと言うなあ。「「上手」にできないことをおそれてる気持ちが唯一の敵」なるほど。
 ところで、実はこの課題、子ども達が何を描いてくるか、とても楽しみなんです。作品の裏に書いてもらっている感想を読みながら絵をもるのもまた楽しいのです。
ところで、人がつながるのは、おもしろいですね。発見があるから。
by yumemasa | 2005-01-19 18:24 | 美術の授業(山崎) | Comments(2)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明