対話による鑑賞を通して身に付く力、そして具体的方法 〜上野行一「風神雷神はなぜ笑っているのか」
2015年 03月 04日
本の帯に書かれたこの言葉がこの本の根っこにある。
いつも思っているのだが、私自身が「対話による美術鑑賞」をはじめてから、美術の鑑賞の授業はもちろん、表現の授業も変わった。授業の中での個々の学びを共有し、広げ、深めていくようなことをごく自然に行うようになった。生徒の力や可能性も知った。一番恩恵を受けたのは生徒たちだ。
教育の方法として優れていると断言してしまおう。だから他教科の教師も注目する。
このような授業ができるようになったのは「まなざしの共有」「MITE!ティーチャーズキット」「モナリザは怒っている」「私の中の自由な美術」という本のおかげだ。
「対話による美術鑑賞」の授業を強くおすすめしたい。本書の第二部は「対話による美術鑑賞」をすすめるうえでの決定版と言ってよいだろう。
なお、「対話による美術鑑賞」は研修会に参加しないとできないように思っている人もおられるが、本書を真剣に読めばできるということははっきりと言っておきたい。評価や授業分析もくわしいので安心して授業に取り組めるはずだ。例えば北海道にように広い地域で互いに学び合うことができにくい場合に本書は希望を与えてくれる。ちなみに、この本では私の授業も例としてとりあげられている。でも、こうした授業ができるようになったのは本で学んだことによる。
あとは自分の授業をビデオに撮り、子どもの書いた自己評価や感想もヒントに自分の授業の評価を行う。
ビデオを見ながら「あ~~、あの発言、もったいなかったなあ、あれをとりあげて、つなげればよかったのに」とか、「あそこで整理して対比したらもっと深まったはずだ、」なんてことがよくわかる。けっこうくやしいものである。だから面白い。
生徒はこんな力を持っていたのか!って驚くし、豊かで確かな学力をつけなければという責任を感じる。でも、面白いのだ、教師である自分が学ぶことによって変わることが…。
なお、私がはじめて「対話による美術鑑賞」をしたのは、ほとんどの教科で授業が成立しない(美術とあと2教科だけが、なんとか持ちこたえていた)と言われたクラスであった。そのことで生徒の力を知った。
生徒たちも自分たちのクラスで起きたことにおどろいていた。これは本物だと思った。しかし、その後この成功体験をもとに、自分流の工夫を入れ、結果として迷走した。それでテキストに戻ったわけである。
だから、本書をもとに授業をつくることをすすめたい。子どもたちのために。
↑この分析表はとても勉強になる。ナビゲーションとリレーション、それが具体的にどうされているのか、分析している。
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