(この記事の初掲載は2019年5月ですが、再投稿することにしました。理由は、この記事にある保護者の方から貴重なコメントが入ったからです。ぜひ、コメント欄もお読みください。保護者の方が、先生に勇気を持って話されて、その後先生もかわっていく様子がかかれています。コメント欄に日頃頑張っている先生への感謝の気持ちも書かれています。ありがたいですことです。)
このブログで、アクセスの多いのが、「酒井式描画指導法」に関するものです。その内容は問題点の指摘ですから、おそらく実際の教育現場で悩まれている方や酒井式に疑問をお持ちの保護者の方が、ご覧になっているのではないかと想像しています。酒井式をよいと思っておられる方は、 TOSSのサイトにアクセスするはずですから。
酒井式に関しては、最近ブログ記事にしていませんでした。やはり批判の記事は楽しくないですし、エネルギーが必要ですから。
でも今や、小学校(北海道)に行ったら酒井式の絵で指導しているクラスがあるのは珍しいことではない状況です。黙っていては認めたことになります。
( Google画像検索で「酒井式描画指導法」で検索した結果 2019,2,7)
酒井式は「先生が子どもの絵とはこうあるのが良いと想定した絵」を描かせるために、子どもに指示を与えて、「描かせる」方法です。
短時間で酒井式の指導について知りたい方は、下の関連サイトを御覧ください。
酒井式は「学習指導要領」の方向とは違います。実際に酒井式にたっよて指導されている方は、批判だけでは困る方もおられるでしょう。ですので、お勧めの方法を紹介します。
それは、「教科書」を活用することです。「教科書」には「指導書」がありますので、それをもとに。「指導書」はこれまでの内外の美術教育の成果を結集させて作ったものです。そこから始めてください。
わたしは、最近、小学校で行う出前授業はあえて「教科書題材」でやるようにしています。しかも「指導書」の「指導案」をもとに。授業後、参観いただいた先生には、「指導書」の活用のしかたについて説明したり、指導書に掲載されている「指導案」と変更した部分について、その理由を添えて補足しています。
こう書いている今も「酒井式」で絵を描かされている子がいることを思うと悲しくなります。その子だからこそ感じたこと、考えたこと、その年齢だからこそ描けること、そんなことは一切無視される。その子のその時は、一生のうちに一度だけしかないのに。
*酒井式描画指導法がわからない方はTOSSで検索するか、下記の関連サイトで動画が公開されているのでご参照ください。
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(追記)2020,1.15
このブログを読んでいる小学校の先生からメールが来ました。所属学年の先生(年上)が「酒井式をやろう」と言い出して困っているとのメールでした。その先生には「学習指導要領の目標」と「評価」のことから「図工の教科書題材」をやりたいという提案をしては?とアドバイスさせていただきました。しばらくして、うまくいったとのことで「酒井式をやろう」提案された先生も、酒井式を強くやろうと考えていなかったようです。偶然ですが、似たようなメールが他の先生からも来ました。これも、「酒井式をやらずに済みました」という報告を受けました。
(追記2)2020,1,25
昨年度のことですが「第45回 北海道教育美術展」で酒井式描画指導法の定番「百話の鶴」が「奨励賞」となっていました。入選ではなく、奨励賞です。北海道造形教育連盟が、このような作品を結果として奨励してしまったこと、本当に残念でなりません。
ここにこの作品展のことを書くのは、描いた子のことを考えると、躊躇したのも事実です。図工の授業では言われたことを守って一生懸命描いているはずですから。
さて、問題は指導者が、伝統ある団体から認められ、指導に対して自信と確信をもつことです。こうして「負の連鎖」が続くことになります。
もう10年以上も前です。北海道教育美術展の審査の中で、酒井式については何年も話をしてきてやっと結論を出しました。(私も審査に参加していました。)負の連鎖を断ち切るという決断です。その決断の素晴らしさに北海道造形教育連盟に所属することに誇りを感じました。が、しかし、もとに戻ってしまいました。本当に残念でなりません。
( Google画像検索で「酒井式 鶴」で検索した結果 2019,1,25)
(追記3) 2020.2.7
コメント欄に保護者の方の声と学校へのアプローチが書かれています。ぜひ、お読みください。
(追記4)2020,2,11
素晴らしい、学ぶべき「作品展の改革」を紹介します。
(追記5)2021.03.05
こうした記事を書いている私自身もかつては、生徒に教師が描かせたいイメージに近づけるような指導に力をいれてきたときがありました。教師としてよかれと思ってやっていました。酒井式描画指導法もそもそもこどものためによかれと思ってはじまったのでした。
(追記6)2021.04.13
学年の先輩教師が提案した図工の計画の中に「酒井式」があった。さあ、どうするか。かつて、そんなメールをいただいたことがあります。
そこで以下の記事を書きました。
(追記7)2021.9.11
この記事のアクセスの多さに驚いています。せっかくですから、酒井式がなぜいけないのかが、自ずとわかる本がありますので、紹介します。
本当は内外の美術教育の研究書(子どもの絵の発達について研究している本)を読まれると良いのですが、一般向きではありません。そこで、その理論を踏まえ、わかりやすく書いた本を紹介します。
(追記)2022.1.20
酒井式がいかに素晴らしいものかを、退職校長がYOUTUBEで説明しています。以下をクリックしてください。
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(Youtube視聴の感想)
図画工作の指導を通して発揮される子どもの力が、酒井式を信望するまあり、図画工作で育むべき資質・能力が見えなくなっているのではないでしょうか。
子供全員に対して、教師の示した一定の、しかも、極めて特殊な方法で、教師の示した手順に従って描かせる。
これは、子供が自ら思考し、判断し、表現するという学びの機会を奪うことになります。
学習指導要領ではなく、酒井という人が考えた一つの方法で義務教育の図画工作の絵画を担うなどはあり得ないでしょう。
大阪では「一本戦の指導」という似たものもありますが、今は普及していないようです。
Youtubeでの話を聞いていて、教師として共感するところもあります。
「描けない」と言っている子に対して、教師としてなんとかしてあげたい、その部分です。悩んだはずです。
困っている子供に対して、指導の方法が見当たらない時に、出会った方法が「酒井式」。それを授業に取り入れたら、子供が描いた!それは、本人も先生も驚いたことでしょう。私だって知らなかったら驚くかもしれません。ただ、それを全ての子供に当てはめてしまった。
では、どうすべきだったのか、それは、子供が「描けない」と言った時、そこに耳を傾けるべきだったのです。その子自身のこと、その子を取り巻く環境のこと。その背景を考えるべきだったのです。さらに待ったり、見守ったり、子供と一緒に考えたり。そうやって教師も成長していくのに。
さて、結果として酒井式を広めたのは、図画工作の展覧会やコンクールです。だから美術教育界にも大きな責任があります。賞を与え、結果として推奨したのですから。
さらに、酒井式の何がいけないかについてきちんと批判してこなかったことです。
私が教師になった頃から、酒井式の研究会があるは知っていました。でも、それを内心、小馬鹿にし(思いあがった態度です)、「どうせ広まらないだろう」と思っていました。このような方法がどうして生まれてきたのか、深く考えようともせず、教育現場の中での教師の悩みに応えようとしなかったのです。
ある研究会で酒井式を実践した先生を批判したことがきっかけで2000年からネットで発信を始めたのです。でも酒井式の批判は、その数年後です。批判するのが怖かったのです。今日もYoutubeについて書くかどうか、少しためらいました。でも、きちんと批判はしておかないと。
(追記)2022.11.10
酒井式描画指導法が既に学校でやることになっていて、先輩の先生が、教えてくれるという場合もあるでしょう。「ひまわりと小人」などは、低学年の定番です。黄色いひまわりの中で小人たちが遊んでいる絵です。見た目も可愛らしいです。しかも、児童は言われたとおりに描くし、授業をする先生には都合がいいし、指導した気分を味わるのかもしれません。しかし、「ひまわりと小人」は子供が自らイメージしたことを描いている訳ではありません。教師の思い描いた世界に付き合わされているだけです。しかもほとんどは教師から決めらた手順で描かされるだけなので、学習指導要領の例えば「思考力・判断力・表現力」と言う視点で考えると説明はつかないでしょう。
酒井式などの特殊な指導法をやるのではなく、「図画工作」の教科書を活用すべきです。
ちなみに、図画工作の授業を教科書を活用して充実した授業をしている事例を以下に紹介します。
(追記)2023.2.1
酒井式について、酒井氏本人が、描かせ方を動画で説明しているサイトがあります。正進社(教科書の副読本を作っている会社です)のサイトですが、児童用にワークシートを使わせて、酒井氏で描かせるためのものです。
この動画を見て、現行の学習指導要領の3観点に沿って考えると、問題点が一層明白になるでしょう。本当は、学習指導要領以前の問題ですが。
(追記) 2023.10.2 「幼児と酒井式描画指導法」
不本意ですが、私のブログでアクセスの多い記事がこの記事です。さて、酒井式の根本は乳幼児期の絵は未熟だから教えてあげる。そこから幼稚園教育要領・保育指針・学習指導要領とも違っていいます。ましてや義務教育の中で、問題です。
このことについて興味のある方は以下の記事を読み比べてください。