中学校・美術の卒業制作「十五の私」

「美術」の授業を通してどのような力が身についたか、そのことを確かめる一つの方法が「卒業制作」での生徒の学びの姿から確かめていくことです。特に「美術」の授業は高校で選択しない限り、授業としては最後になる人も多いでしょう。学習指導要領で「卒業制作」に取り組むことになっているわけではありませんが、大いに推奨したいです。私自身は卒業制作「自分の存在証明」に取り組み、確かな手応えを感じてきました。今回は、大阪で「卒業制作」に取り組んでいる宣 昌大(ソンチャンデ)先生の実践を紹介しましょう。紹介例は、以前のものですが、いま彼とメールのやりとりをしています。おそらく、さらに授業が充実していくことでしょう。では 実践報告です。


「十五の私」(卒業制作・11時間)

授業者 摂津市 宣 昌大(ソンチャンデ)

授業の概要
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 生徒たちは、将来の自分へ向けて今の自分を残し、10年後20年後の自分がこの作品を見たときに、「あぁ、15歳の自分はこんな思いを持っていたな」「将来の自分へ、今もこの思いを持って生きているか」と問いかける作品を作ります。15歳、中学3年生のこの時期に今までの自分を振り返り、頑張ってきたこと、自信ある一面、将来なりたい職業といった夢や希望。また、この年齢特有の不安感や自信のなさなどネガティブな面でもいいので、今の自分を形に残します。そのため、表現方法は平面・立体を問わず、素材も含めて主題に合わせた表現を模索します。




導入
 ミュージシャンであるアンジェラ・アキが10代の頃、将来の自分へ宛てた手紙を基に作詞作曲した「手紙〜拝啓十五の君へ〜」の2014年版のミュージックビデオを鑑賞。ここでは、歌手だけでなく様々な年齢や業種の人々が、将来の自分へ贈るメッセージを紹介している。ここから、将来の自分へ向けて今の自分を作品にして残そうと投げかける。 


平面にしようか立体にしようか、表現方法を考えたら制作開始
 何を主題とするかが決まれば制作開始です。まず教室環境として、道具棚にはカッターやハサミ、粘土ベラや食器洗い用スポンジ、粘土板代わりのクリアファイルなどを常備し、制作に応じて使用できるようにしておきます。素材も同じく、色画用紙やダンボール、発泡スチロールといったものを用意しておきます。素材に関しては過去の制作で出た端材を集めておき、日頃から必要ときには使用できるようにしてあります。生徒には、この道具や素材を使用することはもちろん、必要なものは自分で持ってきてもよいとします。表現方法についても平面や立体に限定せず、自分の主題に合わせて制作をするよう促します。
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 制作の様子を見ていくと、『キラキラの思い出』という作品では、「努力してキラキラ輝いていたときを思い出してほしい」というメッセージが添えられており、万華鏡のように枠内に入った小石が透明フィルム越しに転がりキラキラ輝く面になっていたり、三角錐の2面にはガラス製の小石のようなものが散りばめられた面がありました。
そして残りの面には、3年間頑張ったバドミントン部をあらわすラケットや団体戦で優勝したときの賞状を形取ったものが飾られていました。またその表現の工夫として、三角錐の土台に二等辺三角形に切ったダンボールを組み合わせ、ラケットは木工用ボンドに絵の具を混ぜたもので形づくるなど表現に合わせた素材選びをしていました。

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中学3年生で取り組んだため進路に関わる作品もいくつか見られました。その中でも私立高校の受験に対して自信がなく暗い表情で制作に取り組んでいた時に木材を組み合わせて作った壁。そして受験が終わった頃、この生徒にとってもう乗り越えるべき壁は存在していませんでした。そこで壁のままでは完成ではないと考え、クラス全員の前でこの壁を思い切り叩き割りました。こうして完成したのが『私立の壁』と題された作品だったのです。
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by yumemasa | 2020-01-13 21:57 | 子どもの表現 | Comments(0)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
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