2月、埼玉県の飯田成子先生の学校に行ってきました。授業で見せていただいた生徒たちは、どのクラスも主体的に授業に取り組んでおり、自然で和やかな雰囲気でした。生徒に質問すると、丁寧に答えてくれるのは、表現が自分ごとになっているからでしょう。それは、それまでの教育の積み重ねがあるからであり、さまざまな材料・用具を使える環境が構成されているからでしょう。また、生徒たちが、どのようなことを学んできたのか、校内の作品展示(もちろん生徒の解説付き)からもわかります。
さて、その飯田先生が、3年生に「美術の学びを振りかえる」という課題を出しました。以下飯田さんの言葉です。
これまで、3年生の学年末「3年間の美術で学んだことはどんなことか」「これからの生活に役立ちそうなことはあるか」などの問いかけをして、感想を書いてもらっていました。それぞれ、自分なり考えをしっかり書いていましたが、せいぜい10人くらいの意見をまとめて、卒業生に配布するだけで終わっていました。
今年はタブレットが生徒一人一人に渡されて2年目。美術ではもちろん、総合や他教科でもまとめをデジタルで行うことが多くなってきたので、「美術の時間」を伝えるデザインを定期テストの1時間で仕上げるという課題を出しました。(美術のテストはやっていなので、このような課題にしています)
伝える相手は四月に入学してくる新入生。参考例は出しませんでした。ポスター、チラシ、新聞、レポートなどを参考に、自分で工夫して「新入生向け中学校美術」の紹介をするものを作るということです。A4縦だけ指定しました(印刷して掲示するためです)
テストの4日前に課題を示し、レイアウト案の持ち込み可、紙に描くことも可にしました。また、時間が足りなかった生徒は修正、加筆可にしましたが、各クラス2.3人でした。
思った以上に面白く、深い表現だったので、生徒たちに許可を得て、一部を掲載します。(ダウンロードはお控えください。)
義務教育の中に、なぜ美術があるのか、そのことを、生徒が語っています。そして、生徒がこう語れるのは、飯田さんが、このような授業をしてきたからに他なりません。また、授業を通しての生徒が何を学習しているかを自覚できるように、授業の節目や題材を終えての振り返りを大切にされていることも大きいでしょう。具体的には、下のタブレット端末の画面や作品に添えた生徒の言葉などもそうです。
そして、この言葉が生まれてきたもう一つの背景として学習指導要領はもちろんですが、飯田さん自身が、他の授業からも学び続け、常により良い授業を目指してるからです。
この記事のタイトルは「中学校3年生が中学校美術を振り返る場を作る」ですが、ぜひ、これを実践しては、どうでしょうか?という提案でもあります。全生徒にタブレット端末が行き渡った今、今後「デジタルポートフォリオ」は必須と言えるほど大切になっていくでしょう。また、作品に生徒の言葉を添えての展示も増えました。ですから、この3年間の振り返りもしやすいはずです。
なお、このA4のプレゼンを見て、生徒同士がどう思うか、また、入学した生徒がどう思うか、興味津々です。それから、飯田さんのことだから、これらを見て、3年間の指導計画を見直すでしょう。
飯田さんは、この振り返りを自由な形でしました。生徒の可能性を信じているからA4一枚という条件だけでやったのです。
これは、生徒にとって面白いことだったでしょう。先生に答えるのではなく、1年生に「どう伝えるか」という視点で考えるからです。
なお、A4一枚で文字と写真を使ってデザインの学習(主としてレイアウト)をしておけば、さらに、良くなっていくでしょう。今でも十分素敵ですけど。