昨年の4月に出会った生徒たちが今「卒業制作・自分の存在証明」取り組んでいます。写真は4時間目の様子。何をしようか戸惑っていた生徒たちも、軌道に乗り出しました。1年生、2年生の学びの流れでは、先生の導きにしたがって取り組む授業が主でしたので、今回の卒業制作のようなスタイルは難しいかもしれないと予測しました。
「自分は、どう生きていくか?大切にしてきたことは、どんな自分でありたいか?」「自分の今を描くか、それとも未来?」「何描く?何つくる?」「平面?立体?」「大きさは?」「画材はどうしよう?」「これまでやったことを生かすか、それとも未知の方法でやってみるか?」「どんな手順で進めたらいいだろう?」
表現は、選択と意思決定の連続で成り立っています。それは人生のようでもあります(生徒にも表現と人生の話をしています)。卒業制作は、幅広い視点から、こうした表現のプロセスをとることになります。
卒業制作で生徒が主体的に選択、意思決定できるように、山崎がこれまでにやったことのないスタイルをとりました。それは、30分ほどかけて、美術室にある画材と道具や画集の紹介を改めて説明すると言うものです。そして昨年の4月から、卒業制作に向けた環境づくりをしてきました。
さまざまな材料や道具がどこにあるか、知っていて、それを自由に使える(危険物はルールがあるけれど)ことを知っていれば、発想は広がります。
これを幼児教育では「環境の構成」と言います。
そして何より大事なことは、生徒の力を信じていること。そして私自身が、一人一人はどんな表現をするだろうと思っていること。
生徒にも実際に言葉で伝えました。「みんなが、どんなものをつくるのか。すごく楽しみです。この授業を一番ワクワクしているのは私かもしれません」
さて授業の様子を紹介してきます。
上の写真の奥は、墨を使って描いていますが、たくさん、たくさん試しています。ノリノリです。墨で描く面白さを味わっていました。なお、大胆にやりたければ、廊下にベニヤ板を広げて、汚れを気にせずできる環境になっています。下の生徒は、テーマが明確で、導入の次には、もうどんどん描いていました。点描をするようです。時間がないので、下がきも早めに切り上げたら、そうですね!って嬉しそうに言ってくれました。そのあと細いペンがあることを伝えると、すでに知っていました。美術室にあるものが、この表現の発想に影響を与えたのかもしれません、
生徒が持っているはポスターカラーなので、パレットに透明水彩絵の具(マッチブライトカラー)を、固めておきました。筆も、使い分けています。たいしたものです。考えたら、小さな頃からつかってきましたから。30代の私は、小学校の先生に対して水彩絵の具や用具の使い方をしっかり指導してほしいという思いを持っていました。そう思ったのは、当時学習指導要領の中で「基礎・基本」の定着が強調されていたのもありますが、その頃の私の美術教育観が狭かったからです。今は、多様な経験をしてきていると捉えています。
透明水彩絵の具は、絵のイメージが決まっていて、完成形をある程度イメージしている生徒にとっては
とても使いやすいです。準備もあと片付けもほとんどなしで済みますから。
卒業制作です。描くこと、そのもの、筆が滑るように動く、その感触を味わって欲しくてぺんてるのセブロンR筆を貸し出しました。良い筆の3条件を満たしています。この筆は、使い方で1ミリの太さでもかけるからねって言っています。
水彩絵の具では、写真にある通り、布と試し紙は欠かせません。
簡単に指導しました。どれでも、布を使った水分調整がいかに大切かを目の前でさっとやって見せました。その時の「なるほど!」という表情。必要感のある時に、最小の支援。これで、この技は彼女の身につきました。本当は卒業期ですから、定着していて欲しいのですが。でも順調に進んでいます。
世界の名画は油絵で描かれていることが多いこと、その後、似た描き方ができるアクリル絵の具が発明されたこと、そんな説明をしました。(本当は3年生になる前に知っておいて欲しいのですが)それでも、卒業制作という大事な場という認識があるので、
簡単に説明したことでも一気に吸収してきます。昨年の夏、2時間使って絵の具を使って、いろんな表現を楽しんでいます。中学生版「造形遊び」です。ですから、たわし、スポンジ、手前に水差しなどが見えます。この二人はやりたいことが決まらずにいましたが、アクリル絵の具を使いたいことは決めていたので、その前の時間は廊下でベニヤを敷いて絵の具を使って、描きながら考えることを勧めました。ここで掴んだことを活かし、下塗りをしています。
彼女は、本当に楽しそうです。アクリルの重ね塗りの魅力を味わいながら描いています。パレットは、後片付けの時間短縮を考え、ペーパーパレットも考えていましたが、教材費のことから、ダイソーで白い小型のトレーを購入しました。パレットのように仕切りがないので、洗うのが簡単です。そうそう、もう一つ、筆がポイントです。豚毛です。これ油絵描く時、使うのだけれど、アクリルで厚めに描くときはすごく使いやすいとい紹介しました。その良さはすぐに実感したよう。パレットに出ている色を見て、画家みたいと言ったらますます、楽しくなったみたいです。
背景を一気に描き上げ、今度は人物を描いています。
アクリルで来た上から鉛筆で描き、消しゴムを使うと色がとれるのでチョークや木炭で下書きを軽くして、筆でどんどん描いていく感じと説明しています。しかも、線を書き直して間違っても指や布ですぐ消せます。でも、それでも心配なら別の紙に描いて、その裏にチョークを塗ってなぞって写すことを推奨しました。彼には、その方法があっていたようです。(実はこれは、私のカリキュラムでは2年生の時にやります)

自信を持って堂々と勧めています。さすがと言う感じです。どうやってこういう描き方身につけたの?って聞いたら「You Tube」先生のようです。このような時代になりました。ただし、「YouTube」の描きた方、作り方は、それが全てではないから気をつけてね、と話しています。(この世には、絵画だけでも、実にさまざまな表現があることを実感していれば、私のように言わなくても済むかもしれません。)これからはYouTube(美術の授業の中でという意味ではなく、生涯教育の視点)の使用が当たり前になることを見越して,1年生で画集をみる授業を設定しました。表現方法は多様にあるし、限りなくあるという実感。
そうそう、この生徒は、鏡も写真もうまく活用しています。今は、そこから離れて絵をつくっています。ここでアドバイスしたのは机をイーゼルのようにして使う方法です。絵を立ててみて、そして離れて見て気がつくことのなんと多いことか!
美術準備室にあるものを、美術室に移動し、生徒の目に触れるようにする方針でいます。この生徒は自分は、いろいろなものでつくられているという考えを、色々な色のを使う貼り絵で考えていました。そこに、色で染められた高級な和紙が美術室似合ったと言うわけです。和紙を見た時の彼女の嬉しそうな顔!
この生徒は、既存の色のついた和紙では納得いかずにいたので、障子紙があること伝えました。
色を染めて試行錯誤していました。画面上の色の変化は少ないですが、彼女にとっては、微妙な変化が大切なようです。糊もいくつかの種類を試し、これをセレクトしていました。

自分をキャラクター化しています。
この前の題材「人の心を動かす形」が気に入ってようで、その学びを活かし、黙々と取り組んでいます。写真を見て、しまった!新しく買った粘土ベラを見せるの忘れていました!ごめんなさい。セリアでGマーク付きの粘土ベラがあったんです。
彼のテーマは野球。色々悩んで、結局はバットを彫ることにしたそうです。
「自分の存在証明」ですが、自分はどうしてもこれが作りたいと言う気持ちを優先してもいいことにしています。さまざまな思いを巡らし、色や形を扱うと言うこととは違いますが、その中で彼が選択したのは、彫ると言う行為です。そのために、何種類かの木と何種類かのナイフを試してもらいました。彼の時間が充実した、そして価値あるものにするためです。ナイフは毎時間磨いています。よく切れるナイフで、気持ちよく削っていく心地よさを、何がなんでも味わってもらいたいと思っています。これは、電動刃物研ぎ機があってこそ成立します。
手前の絵は海の絵です。何度も何度も色を重ねながら、描いています。彼の前では海が広がっています。理想の風景を自分の手で生み出していることを実感しているのでしょう、「いいね、この海綺麗だね、すごく」って私の思っていることを伝えると(アイ・メッセージ)笑顔になります。隣の席では、粘土で形を作っていますが、スタイロフォームをカットして使っています。たいしたものです。材料紹介の時、「これスタイロフォームって、言うんだけど、粘土で大きいの作ったりする時、芯に使えます。作家も使っている人いますよ、カットにはナイフや熱線があります」言ったのは、これくらいです。材料や用具との出会いが、発想を膨らませます。これこそ「環境の構成」がもたらすものです。
この授業では自ら考え、試し、実現させていくことが前提です。
それにしても、よく、工夫してやっています。こうして自ら獲得したものは確かな知識として獲得されています。
料理が大好き、色鉛筆で描きたいと言う。この大きさで色鉛筆は、大変なので、透明水彩との併用を勧めました。自分の意図とあったようで、喜んでいました。その後、自分の表現意図に応じて、うまく使い分けているようです。
小鳥を描いています。自分の飼っている小鳥で、生まれてから3年目だそう。この記事では技術的な解説を書いてきましたが、実際の授業では、こうした生徒の主題に関わる話がむしろ中心です。これが、表現の原動力です。この卒業制作で「生徒たちは、いったい何を作り出すだろう?」と本気でワクワクしてます。授業中は笑顔です。生徒が「こうしたい!」と思っていますから。
写真の左側の生徒は自分の描いた夜空を眺めています。心情面では自分の描いた世界に入りこむ姿であり、技法面では、全体のバランスや次への見通しを考える場です。こんな姿が日頃からたくさん見えるような授業づくりを進めたいです。
この授業の最大のミッションは、卒業を前に「美術って、面白い」って感じてもらうことです。それが一生続くようにと願って。義務教育最後の取り組みはとても大切です。
今回は思いつくまま、ダラダラ書いてしましまいた。授業が楽しくてたまりません。
今、可能な限りシンプルな授業構成を考えています、誰もが実現可能な授業像を目指して。そのために欠かせないが、題材の設定のあり方や環境の構成です。
「環境の構成」に興味を持たれた方は、幼稚園教育要領要領解説(平成30年3月)第2章3節「環境の構成と保育の展開」をご覧ください。
教科書の指導書の掲示物も極力、使うようにしてる。上は日本文教出版のもの。校内にも積極的に展示してる。折り目があるおが惜しい。下の黒板に貼っているものは光村図書のもの。卒業制作にはピッタリ。