「木に学べ」西岡常一

この記事は2005年12月に公開したものです。


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 「日本の文化は木の文化」と言われます。だからこそ、日本人としてどうしても読んでおきたい本があります。
 西岡 常一(薬師寺宮大工棟梁・故人)氏の「木に学べ 法隆寺・薬師寺の美」(小学館)という本です。

 はじめて読んだとき、こんなにも深いものだったのかと感動しました。飛鳥時代の人々の持つ哲学に感動しました。法隆寺の棟梁がずっと受け継いできたという「口伝」には重さがあります。

 高校生の時、修学旅行で見た法隆寺ですが、これが教科書にものっている法隆寺か、という程度でした。
 数年前にに再び法隆寺を訪れた時は、この本を読んでいたので、深い深い感銘をうけました。2日間かけてじっくり見ました。

西岡氏は亡くなられましたが小川三夫氏が受け継いでいます。

 以下に授業で子ども達にも伝えている西岡常一氏の言葉を紹介します。

「木に学べ」西岡常一_b0068572_13813100.jpg「いろんな人が、ぎょうさん法隆寺を見にきますが、世界で一番古い木造建築だからって見にくるんじゃ、意味がありませんで。
 古いだけがいいんやったら、そこに落ちている石の方が古いんや。法隆寺は千三百五十年、石ころは何億年や。
 だから、古いからここを見にくるんじゃなくて、我々の祖先である飛鳥時代の人達が、建築物にどう取り組んだか、人間の魂と自然を見事に合作させたものが、法隆寺ということを知って見にきてもらいたいんや。
 「建造物というのは重いもんでっせ、その荷重を、いかにうまく分散して太い柱で支えるかが構造ちゅうもんです。それぞれの部材が充分役目を果たして、余分というもんがないというのは美しいもんです。
 飛鳥の工人の作ったものは、その代表ですな。「人は仕事をしているときが美しい。」いいますな。それは、人の動きや心に無駄がないからです。建造物も同じですな。機能美というんでしょうな、こういう美しさを。飛鳥の建造物にはこうした機能を第一とした美しさがありますな。」

「大工が千年の木を使えば、千年もたせなならんちゅうことも自然な考えですし、千年たったときには千年の木が育ってんといかんというのも自然な道理ですわ。」

 鑑賞の授業で様々な取り組み方がありますが、この法隆寺の鑑賞では知識が大事になってくると思います。実際にこのことを知っていると見方が変わってくるのです。
 単に世界遺産だから大事だというのではなく、西岡氏や小川氏の言葉と共に後世に伝えていくべきものでしょう。
 ましてや今後国際理解教育が益々重要にしていくならば、英語を話せることもありますが、自国の文化を誇りを持って語れることもますます重要になっていくでしょう。

 今度の光村図書の教科書「美術2・3下」では「伝統を受け継ぐ宮大工」として小川三夫氏のお話が2ページにわったて紹介されています。
Commented by nobuhiroshow at 2005-12-27 19:52
私が西岡常一さんを知ったのは、毎年11月3日の文化の日に放送されていた日本テレビ美術スペシャル?『薬師寺西塔の復興』の番組でした。そこでこの千年の木の話を聞くことができました。西塔が復興し、今度は平成12年には講堂も復興するという話でいつか復興された講堂も見てみたいと思っていました。
美術の授業がまだ2時間だった頃はこのビデオを見て木材工芸に進んでいました。今はそんな時間もありませんが。
庄子でした。こんど、西岡さんの本も読んでみようと思います。
Commented by yumemasa at 2005-12-28 01:46
庄子さん、そんな番組あったのですね。この本は読みやすいですよ。西岡氏が語りかけてくれるようで。
 最近、授業ではビデオではなくて、やっぱり多少下手でも私の生のプレゼンがいいんだなあと思う事がありました。写真見ながら西岡氏の話は、生徒が興味を持ってくれます。1300年以上も前の木が今もしっかりしいるということに驚きます。そりゃそうですね。
Commented by nobuhiroshow at 2006-01-22 20:52
庄子です。久しぶりにトラックバックしたらちょっと間違ってしまって、変なタイトルになってしまいました。申し訳ありません。
やっと「木に学べ」を読みました。読み終わって、一つのことに一生を捧げた宮大工の生き様に感動しました。家のビデオテープを探して何とか薬師寺再興の番組を見つけ出し、西岡常一棟梁の声を聞くこともできてその感動をかみしめてます。
Commented by yumemasa at 2006-01-22 21:29
庄子さん、すごい本でしょ!今の時代だからこそ、「千年の木を使えば、千年もたせなならん」という感覚が大事なのかもしれません。昔の人々の中には未来の人間のことまで考えて仕事していた人がたくさんいたのですね。今は放射性廃棄物という人類がこれままでに体験したことのない負の遺産を残してしまいました。
話はそれてしまいましたが、ブログでこのような形のTBは非常に有効ですね。互いに高め合うことができますから。
ところで、ビデオ私も観たいなあ。
Commented by nobuhiroshow at 2006-01-22 23:59
これは絶対お勧めの本ですね。
ビデオですが、1本目は1997年で旧講堂の解体まで、2本目は2003年の大講堂落慶までの様子です。2本目はともかく、1本目はかなり画質が荒くなっています。
by yumemasa | 2019-02-10 22:09 | 本(美術) | Comments(5)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
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