(重要)今後の図画工作・美術教育を考えるうえで注目すべき試作案
2006年 01月 16日
文部科学省の「審議会情報」の「教育課程部会(第33回)」の配布資料の中で、「教育課程部会の当面の検討課題(例)における論点についての例(試作)」が示されています。
その中から図画工作・美術に関するものをすべて抜き書きしてみました。かなり具体的な(授業の中で題材に関する言葉もでてきています)内容も含まれています。
次期「指導要領」にも大きく関連してくるであろうと思われます。ひとり一人がこれらについて真剣に考えていく必要があるでしょう。改訂になってから意見するのではなく、「改定前」こそ大事だと思います。
「教育課程部会の当面の検討課題(例)における論点についての整理の例(試作) 」から図工美術教育関係の全文を以下に転載します。
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1、義務教育修了段階において子どもたちに身に付けさせたい基礎的・基本的な知識・技能等
(1)社会的に自立していくために,実生活において不可欠な知識・技能
(小学校)
・形や色に特徴があることを知る。
→ 色の柔らかい感じ,形の配置による動きの感じなど。
・人によって表したいことが異なることを理解する。
→ 表現する人の思いや感じ方など。
(中学校)
・形や色彩,材料,光などがもたらす性質や感情を理解する 。
→ 明るさ,あざやかさなどの色に関する基本的な事項、材料の特性や質感の表現など。
・対象の見方と形や色彩の表し方などの技能を身に付ける。
→ 思うような形がかける,遠近の感じや立体表 現ができる,思うような色がつくれるなど。
・生活におけるデザインや工芸の働きについて理解する。
→ 生活用品や建物,ポスターなど,生活におけ るデザインの働きを理解することなど。
(2)義務教育段階及びそれ以降の学習を進めていく上での共通の基礎となる知識・技能
<小学校>
・材料や道具を自分の目的に応じて使うことができる。
→はさみ のり 水彩絵の具 簡単な小刀など → 土,木,紙,厚紙,粘土など。
・いろいろな表し方の違いが分かる。
→木をつなげて並べる,間を空けて並べるなどから生まれるリズムや,安定感。
→ 表現方法にはいくつも種類があることなど。
<中学校>
・意図に応じて材料や用具を生かして使う。
→ イメージに合わせて,水彩絵の具のぼかしや にじみなどの効果を生かして描くなど。
・デザインや工芸における美と機能性の調和などを理解する。
→ ハサミなどの製品のデザインにおいて,形, 色,材料と機能がどのように調和しているかを理解することなど。
2、義務教育修了段階において,子 どもたちに身に付けさせたい能力
知識・技能を実社会の中で活用する能力
○感性や思考力・表現力等
<小学校>
・自分の表したいことを思い付く力。
→ 色や形,材料などから発想する(流木の形の特徴から動物を連想する,かすれた色から恐竜 の化石を思い付くなど 。)
→ 見たこと,感じたこと,想像したこと,伝え たいことから表したいことを見付けるなど。
・表したい感じが表れるように材料や表現方法な どを工夫する力。
→ 色や形による構成の美しさ,材料の特徴の感 じなどを考える。
→ 冬の雪を表すために,絵の具,色紙,綿などを選ぶなど。
・つくり,つくりかえ,つくり続ける力。
→ 表す過程で,自分らしい感覚を働かせ,表したい感じになるまでつくる。
→ 自分の表現を振り返って,新たなものを加えたり,部分を取りかえたりするなど。
・表現の意図や特徴をとらえる力。
→ 友だちの作品をいろいろな角度から見る,表し方に共感するなど。
<中学校>
・主題を発想し,構成の仕方,材料の組合せなどを工夫し,構想を練る力。
→ 夢や希望などを主題にして心の世界を表現するために,構成や材料の組み合わせを工夫し, 構想を練ることなど。
・目的や条件を整理し,伝えたい内容をイラスト レーションや図などで分かりやすく美しく表現する力。
・造形的な美しさ,材料や用具の生かし方などを 総合的に考え,創意工夫してつくる力。
・つくりながら発想に変更,修正を加えてよりよい表現にしていく力。
・自他の作品などに対する自分の価値意識をもって批評し合い よさや美しさを幅広く味わう力
・作者の心情や意図と創造的な表現の工夫などを感じ取る力。
→ その作品によって何を表現したかったのかという作者の意図と,それがどのように表現されたかという創造的な表現の工夫などを感じ取るなど
○美術文化等のよさなどを味わう力
<小学校>
・我が国や諸外国の親しみのある美術などを自分らしい見方で感じ取ること。
→ 時代や地域によって表し方が異なることをとらえるなど。
<中学校>
・日本の美術や文化と伝統に対する理解と愛情を深めること。
・日本及び諸外国の美術の文化遺産の表現のそれぞれのよさや美しさ,創造力の豊かさなどを感じ取り味わうこと。
・文化遺産を尊重するとともに,美術を通した国際理解を深めること。
3、関心・意欲・態度など
<小学校>
・つくりたいものを自分の表現方法でつくりだす喜びを味わおうとする。
・我が国や諸外国の親しみのある美術,暮らしの中の美術などに関心を持つ。
<中学校>
・自分のよさを生かして表現や鑑賞の活動に主体的に取り組む。
・自然や身近なもの,美術作品などのよさや美しさに関心を高める。
・美術文化の継承と創造への関心を高める。
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(中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会(第33回(第3期第19回))
「配付資料8」のP10-13による。ただし、大項目の数字などは山崎で加えました)
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ただし、上記の資料をもとに考察するにあたり、当然今後の指導要領がどうデザインされていくのか、その全体像をとらえておくことは必須です。ここでは「図工美術教育」のみにしぼってありますが。
例えば配布資料の中に下のような図が多数あります。
上の表は資料7「生きる力の育成を目指す教育内容・目標の構造(イメージ案:改良版)」です。あくまでも一例として示しました。
詳しくは、以下にアクセスし、ぜひご覧ください。共に考えていきませんか?
☆文部科学省の「審議会情報」の「教育課程部会(第33回)」
*現行の指導要領では「図画工作」と「美術」の中での関連性に疑問を感じる部分もありましたが、今回のこの試作案は小中の関連性を見通しています。
今、幼稚園と小学校の関連性を重視しようとしている流れがありますから、小中の関連性が一層重視されていくことは間違いないと思われます。
さて,先日ある方からのお手紙で,
「美術はなくなりません」という心強いお言葉をいただきました。
よかった・・・
図画工作・美術・・・世界でもこれだけ力を入れている国はないのですから,大切にはぐくんでいきたいものです。
山崎さんをはじめ,よき範を示していただき,本当に尊敬いたします。
これからも楽しみにしています。
さて、美術はなくならないという話は私も聞いていますが…どのような程度なんでしょうね。
いま、やれることは、ちょうどここにある試案について具体的に考えてみることかなとも思っています。美術教育のよりよいあり方を考えて行かないといけないですね。
あとは美術教育のことをもっと多くの方々に理解していただく努力も必要だと思うんです。今子育ての中では絵本の読み聞かせの価値などについては広く理解していただいているような気がしますが、なぐりがきからはじまる子どもの絵については、まだまだ理解されていない気がしています。そのような取り組みを美術教育関係者でやっていかなけれればならないのではないかと思っています。
北海道は寒さはだいじょうぶです。家の中はあたたかいですから。それよりも雪かきが大変です。そちらはかなり気温があがったようでびっくりしました。