酒井式の広がりをどうするか

 最近、北海道教育美術展や旭川の美術展の審査の様子を聞かせていただく機会がありました。応募作品の中にいまだ「酒井式」が、多いと聞きました。
 
 また、私がリンクしているサイトに酒井式の作品があることへの疑問もいただいたこともあります。私の石狩の教育美術展にも酒井式は出てきます。
 審査の場合は、それを評価しなければいいのですが、サイトでは学校から応募されたものを掲載せざるを得ないということもあります。石狩の場合は審査無しですから、当然学校から出てきたものを展示しない訳にはいかないという難しさもあります。

 長い年月をかけて全国的な展開してきた酒井式の研修会、インターネットを駆使しての情報発信、圧倒的です。さらには多数の出版。NHK教育テレビでの推奨。これだけ酒井式の情報が多いと、なんだか正しいことのように思えくるかもしれません。

 これまでの内外の美術教育の成果がどうして現場でもっと生きてこないのかと思うとくやしい限りです。

 しかし、この批判は続けていかないとならないでしょう。

 美術教育の研究会も「図工がなんだかわからない、無免許で美術を教えることになってしまった、」そんな先生のためになる発信をしていかなければならないと思っています。研究会のあり方をもっと考えて行く必要もあると思います。
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 今、いくつかの大学の教員養成課程で、「酒井式」を取り上げ、学生たちに論議してもらっているということも聞いています。大学の先生が「酒井式」はダメだと言わなくても理論研修をきちんとしていくと、その間違いに気がつくとのことでした。

 昨年、酒井式がNHKで放送されたことが、皮肉にも、あちらこちらで論議を生み出しました。これは一つのチャンスですし、ことによると、美術教育の発展に寄与するかもしれないと思っています。

本音を言えば、このブログで何度も何度も酒井式のことを書くのはエネルギーが必要です。しかし、陰で言っていてもはじまらないですから。

これ以上酒井式にはまる人を増やさないためにも以下のサイトをつくりました。

 ☆酒井式描画指導法への疑問

《酒井式を広げないため、あるいは美術教育の本質を理解していただくために》

 ☆石狩管内教育美術展で、絵の見方を表示

 ☆全道造形教育研究大会石狩大会を正式にアナウンス

(追記)2017
  現在、旭川での展覧会は大きく変わりました。日常の授業で生まれてくる「教科書題材」による作品を審査、展示する方向にしたことです。実際の審査に伺いましたが、作品に子どものコメントが添えられていました。大きな改革です。



Commented by pyonkerogurita at 2006-01-30 02:22
山崎さん、こんばんは。けろ太です。

酒井式は、これまで山崎さんが再三警告してこられたように、
やっぱり大人の側の問題なんですね。

酒井式を採用した先生方の細かい事情は分かりませんが、
マスコミに関して言えば、目先の話題作り、その先の金儲け、
それを話題に取り上げた自分たちの評判が向上するのを
期待している魂胆が見えてしまいます。

酒井式を教えられて絵を描く子供たち、その子たちもやっぱり
一所懸命コミュニケーションを求めてると思います。

数学や論理学ではないんだから、子供たちの感性を伸ばす
分野までも、画一的な基準を設けることによって、大人の都合で
評価のプロセスを効率化したりするのは、文章の行間を解釈する
質問にマークシートで答えるしかないような、悲しいことにも
なりかねませんね。

美術の指導をされる先生方や、親御さんたちが、
子供たちは何をどうやって伝えたいと望んでいるか
真剣に考えた上で酒井式を肯定するのならば、
それは肯定されてもいいんじゃないかなと思います。

でも、現状ではなんだか、大人の都合で(評価するのが楽、とか)
子供たちは表現が振り回されてしまってる気がしています。
Commented by チャーリー at 2006-01-30 14:43 x
 久しぶりに投稿します。というのも,TB先に「ネガティブキャンペーンはしたくない」と投稿していたからです。
 これは山崎先生の活動を指すものではありません。陰口を言うだけではなく,しっかりとした根拠をもって批判していきたいという,私の決意だと思ってください。酒井式やその上位の法則を推進している人たちを刺激したくないという思いもあります。
 図工・美術が目指すところが小学校の先生方に理解されれば,酒井式は広がらないはずです。しかし,すべての先生が指導要領を読み直したとしても,現状は変わらないとも感じています。
 私は指導要領がもっと分かりやすければと思っています。その点からも,指導要領の改訂について積極的に行動している山崎先生を支持したいと思っています。
Commented by yumemasa at 2006-01-30 22:00
けろ太さんの言われた「子ども達の感性を伸ばす」という面で酒井式はその感じ方を含めて様式化しているのです。ここが問題なんですね。そして、教師に言われた通りやれば高い評価を得るのですから。でも子どもは子どもで指示通りにやっていれば、いいわけですから。
受け身の子どもができてしまいますね。
酒井式で指導された子が、普通の指導をする教師に受け持たれたら「先生,次は、どうするんですか?」「先生これでいいんですか?」という報告をよく聞きます。
まさに「指示待ち人間」ですね。教師に言う通りになりますから、子どもを管理することも、授業も楽です。
これ中学校では無視されてます。今、私が教えている生徒に酒井式の授業をやったら怒るでしょうね。
子どもの被害者をこれ以上増やしたくありません。
ところで「酒井式美容が指導法への疑問」開設にあたってはお世話になりました。感謝しています。
Commented by yumemasa at 2006-01-30 22:12
チャーリーさん、お久しぶりです。チャーリーさん、心配しないでください。そう思っていませんから。
チャーリーさんのコメントわかりますよ。今まで酒井式の実践をやっている人と何度も話しましたから。ひとり一人人わかるまで説明するのは大変なんです。
 でも、批判ではなくて、授業論や美術教育論などを正攻法でやっていくことが精神衛生上いいのですけどね。
 酒井式については、地域によっては公的な機関が研修会を後援したりしているところがありますし、公的な資金で運営されているHPをリンクしていたりするところもあります。
いくつかメールを出して検討していただいて、(地元の美術教育研究団体に相談するように言いましたら、そうしたようです)リンクをはずしたところもありますよ、もちろん無視もするところもありましたけれど。でも無視されても批判をする人がいるんだなということは認識されたと思います。
ところで、昔、酒井式をやっていたという方で、すぐれた実践をしている方もいらっしゃいます。
酒井式を取り組まれている方で「熱心」な方が多いと思います。しかし熱心の方向が間違っていれば、何にもならないですから。
by yumemasa | 2006-01-30 01:22 | Comments(4)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明