鑑賞教育「やっぱり、本物っていいよね」

 鑑賞教育の話をすると必ず出てくる話題「やっぱり本物っていいよね」
そこで話を終わらせないで、じゃあどうする。これまでいくつかの研究会で参加して学んだことなどをあげると…
 本物でないから、それに一歩でも近づける工夫はたくさん、ありそうです。
 
・美術館に連れていく(札幌芸術の森などは送迎バスを出しているところもある)
・例えば旭川や帯広の美術館では移動作品展を実施している
・地元の画家の絵を見せ、作家を招待して授業もする
・教師の絵を空き教室に展示して、それを見せてしまう
・大学の学生さんと連携して大学生の作品を見せる
・原寸大の作品のコピーを教師がつくったり、生徒がつくったり
・海外に行った先生がその土地の風土や歴史を写真で紹介しながら鑑賞
・彫刻作品を写真で紹介するときは、多方向から撮影、時間を変えて撮影、人も入れて撮影
・大きさを黒板で示す(数字で言ってもわかりにくい)、手元にはカラーコピー
・複製画を借りてきて空き教室に展示(美術館風に)
・画集「原寸美術館」を使う
・作品鑑賞の時に使っている画材を見せる
・プロジェクターで見せるときは、ほぼ原寸大で投影、拡大して細部を投影などの工夫

今さっと思い出せること書き出してみました。
鑑賞教育「やっぱり、本物っていいよね」_b0068572_9505945.jpg
IPA「教育用画像素材集サイト」http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/

子どもが本物を見たいなーと思ってもらえる授業にしたいですね。

 先日海外旅行に行ってきた同僚が「山崎さん、ほら、廊下に飾ってあるあの絵、本物見てきたよ!やっぱり本物見たら全然違うわ!それでね…」(うーん、海外旅行に行って、このセリフ言ってみたい!でも行くとしたら、外遊び系かなあ。)このような大人になってほしいですね。彼の旅行目的は美術鑑賞ではありませんでした。でも、どこかで見た絵だなって知っていて本物の作品に触れると、やっぱりその作品に対して親近感がわきますね。
だから校内に複製画を飾るのもいいもんだと思います。

 子どもにとっては、複製画といってもはじめて接するときは本物ですから、「どうせ複製画なんだから」みたいなニュアンスは伝えない方がいいと思っています。ある研究会で「鑑賞といっても、所詮複製画でしょ、やはり鑑賞は本物でなくては」という発言があったので反論しました。複製画だと鑑賞教育の質が下がるような感じの考え方でしたし、地方の子どもには苦しいですね。名画鑑賞などできなくなってしまいます。私自信も子どものころそれこそ品質の低い複製画で感動してきた訳で、その感動している時に、もし大人が横で「やっぱり、それは複製画だし」なんて言われていたら、鑑賞することの楽しみを少しじゃまされた感じになってしまいますね。同じ言葉でも「この複製画で感動しているなら、本物を見たらもっと感動すと思うよ」って言えばいいわけですから。美術館の存在理由が、そこにあるわけで、美術館に行きたいなという子どもを育てればよいのですよね。

・エプソンのピエゾグラフを活用する手もあるかなあ。でも高価ですから、個人レベルのお話にはなりませんね。

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Commented by bokemi at 2006-02-19 12:31 x
あ〜、はやいですねえ、山崎先生の行動力って凄い。空美の講座の紹介は、私途中で電車の時間になって帰ったのですが〜、もし、記事ができたら。私見に過ぎませんが。
空美でも、実物大のパネルを一つつくって、貸し出しできるようにするか??とか、いう話も出ました。
小学校で、名画の鑑賞で1時間取り上げたことはないので、じゃあ、どんな作品を取り上げるか?というとけっこう難しいかなあ。
目の前の子どもの目線で、何を取り上げるか、やってみないとわかりませんね。

ああ、でもわたしは滝川市の子どもたちには一度本物の岩橋英遠「道産子追憶の巻」を見せるべきだと思っています。で、あの180度の空間!で、江部乙の丘の上で360度実際に見る。一日の時間の移ろいと、四季と、人の一生と。衝撃だ。でも、その良さって、旅立っていって初めて知るんだろうなあ。
設置するのに空間がけっこう必要なので、近代美術館で所蔵していてもなかなか展示できないという悲しい話です。MOTTAINAI!!
Commented by yumemasa at 2006-02-19 13:06
BOKEMIさん、記事にしてくださいよ!ぜひぜひ。互いに学んだことをとりあえず、外に出す。そうやっていけば楽しいじゃないですか!誰かから学ぶというのもあるのだけれど、学び合うって視点って楽しいんですよね。ともにつくる。頑張るよりも楽しむってどうかなあ。
Commented by es36_zuko at 2006-02-21 23:15
こんにちは、山崎さん。
最近は、東京の小学校も美術館での鑑賞授業を積極的に取り入れるように努力するようになってきていますが、近くに美術館があるのに思ったより鑑賞授業が実現しません。北海道の先生方の努力をみると、私たちももっと努力ししなくてはいけないと思っています。美術館側は学校が美術館に来ることに対しては大変積極的です。もっと利用しなくてはもったいない現状です。ところが、昨今の出張旅費削減で引率教諭の交通費捻出の問題、学校外学習への管理職や学級担任の意欲、学校5日制にともなう過密な行事予定など、様々な障害でサラッと美術館へ出かけられない問題も学校によっては噴出します。私たちの仲間では、今のうちから年間行事に組み込んで行こうと申し合わせました。まず動くことが大切ですね。
Commented by yumemasa at 2006-02-22 01:24
es36さん、こんばんは。美術館は行きにくいですね。ここに書かれた実態、すごくわかる気がします。私は校内の総合学習を担当しているのですごーく、よくわかります。とにかく実績つくってしまうことですね、仲間で申し合わせるなんていい方法ですね!その手があったか!という感じです。
「札幌芸術の森」では無料送迎バスを出してくれるんですが、私の市は対象になっていません。ちなみにバスの利用状況を問い合わせたら稼働率が非常に高いことがわかりました。
「芸術文化振興法」などで予算措置をしてくれないかなあと、今、ちらりと思いました。
みんなで知恵を寄せ集めればなんかいい方法が生まれるかもしれませんね。このコメントそしてトラックバックありがたかったです。北海道の先生も読むと思いますし。
Commented by es36_zuko at 2006-02-22 16:45
こんにちは。
さっき、職員会議で来年度年間行事の検討会があったのですが、とりあえず美術館鑑賞を年間行事に組み込むことができました。ホッとしました。まずは、学芸員さんのギャラリートークを中心にスタンダードにプログラムをたててみようかと思います。
しかし、来年度も旅費の削減が計画されているようで、外へ出る行事を入れるのもひと苦労です。教育にかける予算が減るこの現状は本当に腹が立ちます。
Commented by yumemasa at 2006-02-22 21:06
ほかほかの最新情報ですね。美術館での鑑賞を年間行事にどう取り入れるかとか、どうやってやっていこうかなんていうことがわかります。よかったですね。「ホッとしました。」という言葉に妙に親近感を感じます。
ところで教育にかける予算は本当に厳しいですね。そういいながら、私の学校ではパソコン40台総入れ替え、これまでのCRTモニター等は使えるのになあ。CRTは健康上の問題かなあ。でもモニターをそのまま使えば100万円以上は軽々節約できるのに。どこにお金をかけるかという問題もあるかもしれません。
by yumemasa | 2006-02-19 09:38 | 鑑賞教育 | Comments(6)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明