審議経過報告を読む(その2)

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以下の茶色い文字は「審議経過報告」から転載したものです。黒い文字は山崎のコメント。

1 教育課程をめぐる現状と課題


(2) 現行の学習指導要領の考え方



審議経過報告を読む(その2)_b0068572_304957.jpg○ 急速かつ激しい変化が進行する現代の社会を、一人一人の人間が、主体的・創造的に 生き抜いていくために、教育に求められているのは、子どもに、基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題 を解決する資質や能力、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感 動する心などの豊かな人間性、たくましく生きるための健康や体力などの「生きる力」 をはぐくむことである。

○ 「生きる力」の重要性とその育成は、平成8年の中央教育審議会答申( 21世紀を「展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申 )において提唱されたものである。

○ 平成14年4月から順次実施されている現行学習指導要領においては、このような考 え方に立って、知識や技能を単に教え込むことに偏りがちな教育から「生きる力」を育成する教育へとその基調を転換するため、教育内容の厳選、選択学習の幅の拡大 「個に応じた指導」の充実 「総合的な学習の時間」の創設などを行ったところである。

○ 小学校・中学校で現行学習指導要領が全面実施されて既に4年が経過しようとしてい るところである。しかし、この間、平成15年10月の中央教育審議会答申( 初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について(答申 )が指摘するように、各教科等の指導においては、指導に必要な時間が確保されていない事例や、 総合的な学習の時間で身に付けさせたい資質や能力等が不明確なままで実施している事例、子どもの主体性や興味・関心を重視する余り、教師が子どもに対して必要かつ適切な指導を実施せず、教育的な効果が十分上がっていない取組など、学習指導要領のねらいを十分に踏まえた指導がなされていない取組も見受けられたところである (平成15年12月には、同答申に基づき学習指導要領の一部改正が行われた )。

 中学校の場合、授業時間の削減率は美術が全教科の中でもっとも高い。さらに2時間続きの授業も減ったことから準備や後片付けに費やす時間も増えたことになります。小学校では絵を描く時間が激減しています。では、どこでその時間を生み出すかということになりますが、私は「選択教科」の時間数削減が妥当と考えています。
 「必修教科の充実」があってこその教科の選択であると考えます。必修教科で確かな力をつけてこそ、よりよい選択がはじめて可能となるはずです。早い段階で好き・嫌い・得意・不得意を決めるような場をあえて設定しなくてもよいでしょう。子どもの食生活にたとえて考えてみてもよいかと思います。
 なお、この「選択教科」がいわゆる「受験勉強」に向けられているとしたら、本末転倒でしょう。
 学びの質の転換を図った学習指導要領の意図は「総合的な学習の時間」の充実で十分可能なはずです。

○ このように、各学校において、学習指導要領のねらいを踏まえた取組とそうでないものに分かれている状況がみられるのは、国や各教育委員会において、現行学習指導要領のよって立つ背景や、これを踏まえて学習指導要領が基本的なねらいとしている点等について、各学校や国民に対する周知が結果として不十分であったことが、その一因であると考えられる。

○ また、現行学習指導要領実施後の各種調査に基づき、子どもの学力や学習状況を見たき、基礎的・基本的な知識・技能を徹底して身に付けさせ、自ら学び自ら考える力を育成するというねらいが必ずしも十分に達成できていない状況が見られる。中央教育審議会としても、教育課程の構造の在り方やその示し方、授業時数の在り方についても検討すべき課題ととらえている。

○ 今後の社会においては、大きな歴史的変動の潮流の中で既存の枠組みの再構築が急速に進むものと考えられる。
 また、子どもの学習や生活の状況をめぐっては、読解力の低下、学習意欲や学習習慣が十分でないという問題、学習や職業に対する意欲、規範意識や体力の低下など様々な課題が提起されている。


○ こうした状況にあって学校教育の果たすべき役割を考えたとき基礎・基本を徹底し自ら学び自ら考える力などを育成することにより 「確かな学力」をはぐくみ「豊かな人間性」やたくましく生きるための健康や体力なども含め、どのように社会が変化しても必要なものとなる 生きる力の育成を進めることがますます重要となってきている。中央教育審議会には、その実現のための手立てを講じることが求められている。

○ 我が国の教育は、国際的な学力調査でも全体としては上位にある。また、学力低下への懸念にこたえるべく各学校において基礎的事項を徹底する努力が行われ、一定の成果が現れ始めている。
 我が国の学校、教師、子どもは、大きな力を持っていると考えられる。学校、教師、子どもが本来有している力を十分に発揮することができるようにするとの観点に立ち、学習指導要領全体の見直しを進めることとしたい。




(3) 現行の学習指導要領下の学校教育の状況と検討課題


ア 子どもの学力と学習状況

○ 子どもの学力の現状については、平成15年に実施された国際的な学力調査の結果から、全体としては国際的にみて上位にはあるものの、成績中位層が減り、低位層が増加していることや、読解力、記述式問題に課題があることなど低下傾向が見られた。

○ また、平成16年に実施された国立教育政策研究所の教育課程実施状況調査の結果からは 学校における基礎的事項を徹底する努力等により一定の成果が現れ始めているが国語の記述式の問題について正答率が低下するなどの課題が見られた。

○ こうした調査で問われている、知識・技能を活用し、考えたり、表現したりする力を育成することは、平成14年4月から順次実施されている現行学習指導要領がねらいとするものであるが、必ずしも十分実現していない状況にある。

○ また、上記調査では、教科が好きかどうか、家でどのくらい勉強するかなどについても調査しているが、学習意欲、学習習慣・生活習慣などは、若干の改善は見られるが、引き続きの課題である。なお、基本的な生活習慣が身に付いているとうかがえる子どもは、調査問題の得点が高い傾向にある。

○ 義務教育答申でも指摘しているとおり、工業化社会から知識基盤社会へと大きく変化する21世紀においては、単に学校で知識・技能を習得するだけではなく、知識・技能 を生かして社会で生きて働く力、生涯にわたって学び続ける力を育成することが重要である。

○ これからの社会においては、主体的・積極的に考え、総合化して判断し、表現し、行動できる力を備えた自立した社会人を育成することがますます重要となることを踏まえれば、基礎的・基本的な知識・技能を徹底して身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「確かな学力」を育成し 「生きる力」をはぐくむという現行学習指導要領の基本的な考え方は今後も維持することが適切である。

○ 先述の子どもの学力と学習状況を踏まえると、義務教育答申が指摘するように、現行学習指導要領のねらいを実現するための手立てに関し、課題があると考えられる。

審議経過報告を読む
by yumemasa | 2006-03-18 09:52 | 新学習指導要領 | Comments(0)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明