審議会経過報告を読む(その6)
2006年 03月 19日
以下の茶色い文字は「審議経過報告」から転載したものです。黒い文字は山崎のコメント。
ウ 子どもの社会的自立の推進
○ 子どもの社会的自立を推進するに当たっては、上記で記した「確かな学力」の育成とともに 「豊かな心」と「健やかな体」をはぐくみ、社会的自立の基礎を培うことが、その基盤となる。学力の低下傾向の一つの原因として、子どもの学習意欲や学習習慣の問題が指摘されている。
(豊かな心と健やかな体をはぐくみ、社会的自立の基礎を培う)
○ 今日 子どもたちは 社会と豊かにかかわる機会を持てなくなりつつある 子どもが大人とかかわる機会は、本来、家庭や地域において、自然に恵まれるものであるが、今日、学校教育がそのきっかけづくりをすることが求められている。人と人との交流の様々な場面、家庭、地域社会、国家、ひいては国際社会に至るまで、その一員としての自覚(具体的には、協調性、責任感、権利、勤労など)を身に付けることが重要である。
また、社会的事象を考えるために必要な科学的な知識を身に付けることが求められる。
○ 子どもたちに、基本的な生活習慣を確立させるとともに、遵法意識をはじめとする社会生活を送る上で人間として持つべき最低限の規範意識を青少年期に確実に身に付けさせることが重要である その際 人間としての尊厳や健全な倫理観などの道徳性を養い、それを基盤として 主体的に判断し 適切に行動できる人間を育てることが大切である。
また、生涯にわたって芸術に親しむ態度を育成するとともに、他者の気持ちを理解した り、人生をより豊かなものとするため、感性や想像力、表現力の育成も重要な課題である。
ここでの芸術教育に関する記述については非常に心強いものです。美術が単に趣味や生活を彩る程度でとらえられているのではなく、他者の気持ちを理解するなど、具体的に価値あるものとして押さえられています。「人生を豊かにする」という役割の一端を担う教科として現場ではますます、充実した美術教育が求められるということでもあります。今一度美術教育についての2つの側面、FOR ARTとTHROUGH ART についてしっかりと押さえておかなければなりません。
この記述とあわせて「芸術文化振興法」も読み込んでおきたいし、これまでの美術教育の歴史についても参考にしつつ現行の学習指導要領も再度じっくり読み直してみる必要があるでしょう。
○ 子どもたちの体力の低下が懸念される中で、人間の心の発達・成長を支え、人として創造的な活動をするために、幼いころから体を動かし、生涯にわたって積極的にスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成するとともに、心身の健康の保持・増進のために必要な知識、習慣や生活を改善する力を身に付けさせることが求められる。また、子どもの生活の安全・安心に対する懸念が広まっており、安全教育の充実も課題である。 (個性や能力を伸ばし、主体性・自律性を育成する)
○ 我が国の子どもは、国際的に見て自尊感情に乏しいとの指摘がある。同時に、規範意識の低下やいわゆるキレる子どもの存在など自己統制の面での課題も指摘されており、自己実現を目指す自立的な人間の育成が課題である。
○ とりわけ、主体性や自律性の育成は、人格の形成や自己実現を目指す上で核となるものであり、人間関係や社会参画の基盤となる重要な要素でもある。
○ この場合において、自己理解(自尊・自己肯定)の考え方と自己責任(自律・自己統制)の考え方を調和の取れた形で総合的に身に付けさせていくことが課題である。
教育の中で自己をじっくりと見つめる時間、葛藤の多い思春期にこそ、大事な時間なはずです。しかし、中学校の学習内容を見てみると、その中で、子どもが自分自身と向き合うような時間や場が果たしてどれだけあるかということです。
かろうじてあるのが実は「美術」の時間です。美術の教科書の中でも必ず自画像が取り上げられていますが、それはこれまでの美術教育の歴史の中で価値あるものとして認められているからに他ありません。
自己を見つめる貴重な時間でもあります。たとえ、それが大人から見て稚拙と思われる表現であっても、誠実に取り組む姿の中に大きな価値があります。この時間を無くしてから、あとで大事だったと気がついても遅いと思うのです。
例えば子どもが自画像を描いていてこんな言葉を残しています。「描いているとき、どんどん自分に素直になってく感じがした。なんでかは、未だにわかんないけど。」「他の人の作品を見ると、その人の気持ちも伝わって来た。」
自分も他者も大事にする心は表現と鑑賞の活動の中によって養われていきます。それはテストの点数などでは示すことはできませんが。
○ 「確かな学力」を育成する上でも、このことは重要である。例えば、学習を進める上では、知的好奇心を働かせることや学ぶことの楽しさを味わうことが基本となるが、同時に、学習目標を設定してその実現のために忍耐力を持って粘り強く取り組むことも必要である。
○ 知的好奇心や夢を大切にしながら、学校生活や家庭生活・社会生活全体を通じて、子どもが実体験を重ね達成感を得ていく中で、人生や生活を前向きにとらえる姿勢や目標の実現に向けて努力を重ねる態度を身に付けさせたい。
○ 夢と現実とを結ぶためには、夢を目標に、目標を計画に具体化してそれを現実のものとする、そういう機会を学校の教育活動全体を通じて数多く経験させることが重要であるとの指摘がある。
○ また 夢と現実とが異なる場合に 現実を忌避するのではなく 自らがやるべきことやれることを誠実に行い、夢や目標に近づくために計画を立て少しずつでも前進する気持ちが大切であるとの意見もある。
○ 学習・生活の両面にわたって、目標を立て、それに挑戦し、試行錯誤を重ねながら、達成する体験を重視する必要がある。
エ 社会の変化への対応
○ 情報、環境、法や経済など様々な分野の教育内容について比較検討してみると、分野の違いはあれ、社会の変化の中で、自らの責任ということを十分自覚した上で、情報を獲得し、判断して、行動できる人材の育成を目指しているという点で変わりはない。こうした考え方は 「確かな学力」の育成や子どもの社会的自立で目指している学校教育改革の方向性と合致するものである。
○ したがって、各分野の基礎的・基本的な知識・技能は、必要性に応じて各教科の教育内容の中に位置付けることを検討する必要があるが、力の育成の面については、ねらいとするところは共通であり、どの分野のどのようなプログラムを用いるかは、各学校の判断に任せることが適当である。
○ また、学校教育の現状を考慮したときに、教育内容を増加させる方向だけでなく、時代の変化等により共通に指導する意義が乏しくなった内容については、見直しをする必要がある。
○ 情報教育については学校の教育活動全体を通じて取り組まれているところであるが、情報通信技術(ICT)の特性について十分留意しながら、発達の段階に応じた教育を推進することが必要である。特に、小学校・中学校段階における教育については、総合的な学習の時間の情報に関する学習、中学校の技術・家庭科、高等学校の情報科との関連を整理しつつ体系化し、その充実を図ることが必要である。
○ メディア・リテラシー(各メディアの働きを理解し、適切に利用する能力)の育成については、新聞・雑誌・テレビなどのマスメディアに多く接するだけでなくパソコン・携帯電話・インターネットなどメディアの普及・多様化が急速に進む中で、これらが言葉 コミュニケーション マスコミュニケーションに大きな影響を与えていることから各教科等の連携を図りつつ、学校教育活動全体を通じて指導の充実を図ることが必要である。
○ その際、例えば、小学校段階では、通常の話し言葉や書き言葉との違いを理解すること、使用に当たって自他を傷つけることのないよう十分注意させることなどについて指導すること、中学校段階では、抽象的思考、科学的理解ができるようになるので、各教科において、学習内容の進展に伴い、活用のための基礎を習得させることなどについて指導することが考えられる。
○ 環境教育については、社会科、理科、生活科、家庭科、技術・家庭科、総合的な学習の時間等の学校の教育活動全体を通じて取り組まれているところであるが、特に持続可能な社会の構築が強く求められている状況も踏まえ、エネルギー・環境問題という観点も含め、さらなる充実が必要である。
○ 科学技術教育、小学校段階の英語教育などについては、国際的な教育課程比較なども参考にしながら、その充実を図っていく必要がある。
2 具体的な教育内容の改善の方向
○ 文部科学大臣からは、教育内容の改善の観点として 「社会の形成者としての資質の育成」 「豊かな人間性と感性の育成 」「健やかな体の育成 」「国語力の育成」 「理数教育の改善充実 」「外国語教育の改善充実」という六つの観点が示された。
○ これらの観点については、各教科等ごとの専門部会において専門的な議論を行っている。
1) 国家・社会の形成者としての資質の育成等
○ 教育の目的は、国民の人格の形成と国家・社会の形成者の育成にある。また、子どもたちの健やかな心と体の育成も重要な課題である。学校生活を通じて社会性や集団性を育成すること、健康で安全に生活できる能力を身に付けさせること、子どもたちの創造性や体力をはぐくむ教育活動の充実を図ることが必要である。○ ここでは、今回の審議において具体的な手立てを講ずる必要があると考えられる、
1 、子どもたちに身に付けさせようとする資質・能力の育成、
2、知識・技能の確実な定着、
といった課題を軸に各教科等ごとに議論を行い意見を整理している。
ア 国家・社会の形成者としての資質の育成
(資質・能力の育成)
○ 自分たちの力でより良い国づくり、社会づくりに取り組むことは、民主主義社会における国民の責務である。また、大人の世代から子どもの世代へと文化や伝統を継承していくことは教育の重要な役割である。さらに、現代社会のグローバル化の進展を考えると、世界の地域的枠組みを踏まえて異文化を理解し国際貢献をすることのできる国際社会に生きる日本人としての自覚を育てることも重要である。
○ 日本人あるいは社会人としての素養を身に付ける必要がある。そのためには、我が国の伝統、文化、歴史に関する教育が重要である。これらは、我が国の伝統、文化、歴史の継承・発展の基礎である。
○ 少子化に伴う人口減少社会となる21世紀を生きる子どもたちには、例えば、自他の権利を尊重して義務を果たす、社会・国家・国際社会に積極的に参加し、その発展に貢献するなどの資質・能力を身に付けることが期待される。
○ 社会科、家庭科、技術・家庭科などの教科においては、社会や家庭生活を客観的な視点から理解するための具体的な資質・能力を育成することが求められる。例えば、家庭の一員として衣食住や消費、技術活用などの生活を自分で管理・工夫できること、身近な人々と協調性を持って責任ある行動をとることができること、子育ての大切さや親の役割を理解し行動できること、社会的な見方や考え方を身に付けること、各種の資料や新聞記事などから必要な情報を読み取ることができること、社会的事象について調べたり発表したりできること、自分の考えやその根拠を具体的・論理的に説明できること、などが重要である。
○ このような教育を通して、民主主義社会、経済社会、あるいは家庭、地域や学校の一員として主体的・文化的な生活を送るとともに、職業生活についての前向きな見通しを持ち、社会、国家、ひいては国際社会を理解し、そこに積極的に参加し貢献していく意欲を育てることが求められる。
○ 近年、ニートの問題など若者たちの社会とかかわろうとする意欲に低下が見られる中で、働くことに対する実感的な理解を深めることが大切であり、各教科等を通じて、協調性や責任感など他者とかかわる力の育成、社会生活の中での責任や勤労などの観念の理解・定着を図る必要がある。
○ 具体的には、小学校・中学校・高等学校を通じて、奉仕体験、長期宿泊体験、自然体験、文化芸術体験、職場体験、就業体験(インターンシップ、デュアルシステム)などの体験活動を計画的・体系的に推進することが必要である。特に、ニートの問題が指摘される中、キャリア教育の推進が求められている。例えば、中学校において5日間以上の職場体験を行う「キャリア・スタート・ウィーク」などを通じて社会や職業を体験させ、生活や人生の実感を持たせることが重要であり、このことが学習意欲の喚起や自尊感情の形成につながる。
○ 今日、子どもたちが社会の変化に主体的に対応できるようにするためには、情報、環境、法や経済などに関する教育の充実が求められている。また、科学技術教育については、理数教育の改善(後述)を図るととともに、科学が発達し様々な技術が活用される社会において、科学技術と社会との関わりについて、安全、リスク等の問題も含めて理解させること、ものづくりなどを通して技術を適切に評価し、管理できる力を育てることが重要である。
(知識・技能の定着)
○ 知識・技能の側面では、社会や家庭生活を客観的な視点から理解するための基礎的・基本的な知識・技能を身に付けることが必要である。
○ 国家・社会の成り立ちや機能 地域構成などを理解させるために必要な基本的な事項
例えば、都道府県の位置と名称や我が国の領土など国土の地域構成、主な国々の名称や 世界の地域構成、我が国の産業や歴史の年代の表し方や時代区分、日本国憲法の基本的
な原則などを確実に定着させることが重要である。
○ 衣食住の基礎的・基本的な知識、例えば、栄養素の基本的な働きなどを確実に定着させることや、技術を理解するために必要となる社会や環境との関係や技術の価値(知的財産等)などについて知ることも重要である。
○ 例えば、地図帳を用いて地名を検索できること、相手に応じた接し方ができること、法や社会のルールをしっかり守ることの重要性を認識すること、マナーの基本を理解し身に付けていること、日常の衣食住、情報機器や道具の適切な活用、家庭生活・経済生活に関する基本的な技能、特に食育の充実が求められる中で、食の重要性を理解し基本的な調理の技能を身に付けることなどが期待される。
○ 民主主義や法、自他の権利と義務、公正さといった基本的な概念について体験的に理解することが、実生活への活用を視野に入れた場合、特に重要であると考えられる。
例えば、学校や学級での集団生活の中で、正義や公正さを重んじて身近なトラブルを解決
していく態度や実践などが期待される。
○ 情報、環境、法や経済など社会の変化に伴って国家・社会の形成者として新たに必要とされる知識・技能の定着のための教育については、学校外の人材や学習機会を有効に活用し、各教科等の関係部分を相互に関連付けながら理解させることが重要である。














