審議経過報告を読む(その7)豊かな人間性や感性

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以下の茶色い文字は「審議経過報告」から転載したものです。文字の強調は山崎による。黒い文字は山崎のコメント。

イ 豊かな人間性と感性の育成

(資質・能力の育成)

○ 社会の激しい変化の中で、子どもが、「豊かな人間性」を持ち感性を高めながら主体的に生きていくことができるようにすることが重要である。そのためには、社会の中で主体的に生きるための基本となる価値観や自主的・実践的態度を形成するとともに、豊かな情操を養う必要がある。

○ 子どもの実情を踏まえると、自他の生命を尊重し、学習や生活などに前向きに取り組む力を育てることを重視し、その前提となる健全な自尊感情や人間関係を築く力などを高めることが求められる。

○ 具体的には、幼児教育の段階から、人生や身近な人々との生活をより豊かなものとするために、集団活動を通して自分自身のよさや個性を見いだすこと、学びや生活の目標を立てたり、その実現に向けて粘り強く取り組んだりすること、弱いものいじめをしないなど他者を思いやる気持ちを持ったり、他者に感謝したり、協力したりする態度や実践が重要である。

○ 学校と家庭との連携を密にして、子どもに対して、「早寝早起き朝ごはん」など正しい生活リズムを持たせるなど、基本的な生活習慣を確立するとともに、社会生活を送る上で人間として持つべき最低限の規範意識を青少年期に確実に身に付けさせることが重要である。

○ あいさつや社会的マナー、他者の痛みを理解する心、感情を適切な方法で表現する力など人間関係を形成するために必要な力を育てるとともに、将来を見通して主体的に判断し、適切に行動できる能力を育てることが必要である。

○ また、自然や芸術、人間の気高い行動などのよさや美しさを子どもが感じ取ること、感じ取ったことを基に自分の思いや意図を持って言葉や歌、絵、身体などで創造的に表現することが求められる。


 家庭教育の中でもこのようなことは可能ですが、このことを集団の中で取り組むことが非常に大事になってきます。自己理解や他者理解にもつながります。教室の中で「共感」が生まれます。共感しあう体験の積み重ねは人間関係づくりがうまく行えなくなっている現代の子ども達にとって非常に重要なことでしょう。
 子どもが何時間もテレビを見ているような状況下ですから、ますます、あえて教育の中でやらなければならないことだと思います。

○ このような教育を通して、人生についての前向きな見通しや他者への思いやりを持って、身近な人々との豊かなかかわりを築くことができるようにすることが求められる。また、自然や美しいものなど人間の力を超えた崇高なものに対する畏敬の念を持つことも重要である。

○ 道徳においては、例えば、自尊感情を持って自分自身を大切にする「自助」、社会の中で助け合って生きる「共助」、そして充実した人生を実現するといった順序立てが必要なのではないか。人間の尊厳と自尊感情を基盤にして、主体的に自己実現をすることを重視する必要がある。

○ 自尊感情を肥大化させないようバランスが必要ではないか。人のものを盗んではいけないなど基本的な内容は、十分に教えることが大切である。健全な倫理観などの育成について発達の段階等を踏まえて、適切に指導内容を設定する必要がある。

○ 発達や学年の段階に応じた指導に関しては、心身の急激な変化の中でストレスを感じることの多い中学校期において、例えば、道徳の時間の取組と体験活動(特別活動等)とをより関連付けた指導などの充実が重要ではないかと考えられる。

○ 特別活動においては、生活を改善する話し合い活動、異年齢の集団活動、社会体験活動が重要である。その際、発達の段階に応じて内容を系統的に示すことが必要ではないか。キャリア教育で、好きなことを探すだけでは働く意欲に結び付かない面があるので、生きる力、働く力に結び付ける取組が必要と考えられる。

審議経過報告を読む(その7)豊かな人間性や感性_b0068572_11383258.jpg○ 音楽、図画工作、美術などにおいては、感性を高め、思考・判断し、表現するという一連のプロセスを働かせる力、主題を発想し、構想を立て、創意工夫をしながら創作活動を行ったり、作品を評価したりする力が重要である。

○ 一人一人の子どもが人間として成長・発達していく過程を大切にしながら、豊かな人生を形成していくために、想像力を働かせて自分の思いをかたちにしていくことが必要である。

○ 表現する楽しさや喜びを味わうことを通して、生涯にわたって音楽や美術などに親しむ態度を育成することが大切である。また、芸術文化のよさを味わったり、生活や社会に生かしたり豊かにしたりする態度や実践も重要である。特に、鑑賞は創造行為であり、自分なりの意味、新しい美、自分を発見するなどを大切にする必要がある。



 上の3つのことは非常に重要な指摘です。美術教育の価値が作品だけではなく、その過程の学びにあることを明快に示しているからです。一般の方が図工美術教育の成果を見ることができるのは、その結果としての作品です。作品だけから、子どもの本当の学びを評価することはできません。このようなことを伝えていくことも教師の重要な役割でしょう。特に子どもの絵の見方等はいまだにいわゆる「ウマイ・ヘタ」や「才能」で見てしまいがちです。
 大人が仮に「こんな作品!?」と思ったしても、実はその作品を生み出すまでに子どもが様々な葛藤をしながら、誠実に表現に取り組んでいる姿を見せます。何らかの機関で「子どもの絵の見方」などももっと広く伝えていくべきでしょう。それは幼児期からはじめなくてはならないでしょう。
 また鑑賞についてですが、指摘の中に「創造行為」であると述べられていますが、これもきわめて重要な指摘だと思います。最近教育現場でこのことが重視されてきていますから、ますます充実発展していくのではないでしょうか。こんな体験を義務教育で積んでいって、やがて大人になっていくとしたら、素晴らしいことになるに違いありません。
 ただ上記の記述の中で「作品を評価したりする力が重要である。」という言葉がありますが、これは一般の方が読まれたときに誤解を生むかもしれないと思いました。「評価」というといわゆる成績としての「評定」を連想させるからです。
 ここで言う「評価」は「よさを味わう」だけではなく「よりよいものを目指して課題意識を持つ」とう意味も含まれるでしょうから。 いいかげんにつくった作品なのに「個性的で素晴らしい!」では子どもの心に届かないでしょう。これについては各年代ので表現の特性もありますから、一概には言えませんが。

○ 「豊かな人間性」や感性の育成については、例えば、算数・数学においてねばり強く考え抜くことによる達成感や自信が自尊感情をはぐくむ上で重要であるなど、各教科等を横断して、学校教育活動全体で自覚的に図っていくことが求められる。
 このことは、我が国の強みであるものづくりを支える緻密さへのこだわりや「もったいない」という考え方など日本人の伝統的な感性についても同様である。

(知識・技能の定着)

○ 人間や文化・芸術の美しさや尊さ、生命のかけがえのなさなどについては、単に事柄としての知識だけではなく、実体験を通して実感的な理解を持つ必要がある。

○ このため、例えば、乳幼児や人生の先輩たちと触れ合ったり、医師や看護師などから生命に関する話を聞く機会を持ったりすることが重要である。

○ 幼いころから国民が広く親しんでいる文章や詩歌を音読したり暗唱したり長い間親しまれてきたうたを歌ったり、自然や作品の形や色の美しさを感じたりするなどして実感を持って理解することが重要である。

by yumemasa | 2006-03-21 07:37 | 新学習指導要領 | Comments(0)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
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