審議経過報告を読む(その10)指導法や授業時数
2006年 03月 21日
以下の茶色い文字は「審議経過報告」から転載したものです。黒い文字は山崎のコメント。
(2) 教育課程の枠組みの改善
① 指導方法、授業時数の見直し等
○ ここでは、指導方法の改善と、授業時数の見直しについて議論を行い、意見を整理している。
ア 指導方法の改善
○ 「確かな学力」を育成するためには、従来の一斉指導の方法も重視することに加えて、子ども一人一人のよさや可能性を伸ばし、個性を生かす教育の一層の充実を図る観点から、習熟度別指導や少人数指導、発展的な学習や補充的な学習などの個に応じた指導を積極的かつ適切に実施する必要がある。これらの指導形態における指導方法の確立が望まれる。○ 基礎的・基本的な知識・技能を確実に定着させるため、その基本的な意味を押さえた上で、反復学習などの丁寧な繰り返し指導、個に応じた指導としての補充的な学習を行うことが重要である。
○ また、知識・技能の活用力を定着させるためには、個に応じた指導としての発展的な学習、問題解決型の学習(ここでは、既得の知識・技能を活用することで所定の問題を解決する学習をいう)などを行うことが重要である。
○ さらに、個々の子どもの学習状況を十分に勘案しながら、課題探究型の学習(ここでは、調べ学習や実験・観察、調査研究などにより課題を発見したり、解決したりする学習のことをいう)などを行うことが重要である。
○ 落ち着いた気持ちで授業に臨むことなど、学習に対する基本的な姿勢を身に付けることも重要である。特に、小学校低学年の段階での習慣付けのための工夫が求められる。
○ 学習意欲や学習習慣を高めるため、家庭での学習課題(宿題や予習復習)を適切に課し、家庭と連携した学習習慣を確立することが必要である。
○ また、こうしたきめ細かな学習を支える仕組みとして、ICTなどの活用も十分考慮されなければならない。
○ 「確かな学力」を育成するためには、学習目標の設定、学習評価の在り方についても、家庭や社会との連携方策、学校外の活動の評価方法などを含めて、検討を深める必要がある。
イ 授業時数の見直し
○ 我が国の小学校・中学校等の授業日数は約200日間であり、諸外国と同様に、学校週5日制を実施していることから国際的な状況と同水準である。また、在校時間は、小学校4年と中学校2年との比較では国際的に遜色ないが、授業時数については、国際平均より短い状況にある。
○ 授業時数の在り方については、各教科等の教育内容について、子どもに求められる教育内容をどのように設定するかが、議論の前提となる。
○ 国語力や理数教育については、充実が必要であり、全体の見直しの中で、授業時数の在り方についても具体的に検討する必要がある。
○ 各教科等の授業時数の在り方については、専門部会の議論を踏まえつつ、教育課程部会において、各教科等を見渡した立場で総括的に審議を行うこととする。
○ また、授業時数の在り方については、その量的な側面だけでなく、各学校における教育活動の創意工夫により、効果的な学習指導ができるよう、その弾力的な運用等についても検討する必要がある。
教科時間数の弾力的運用は以前も通称波形(〜)で示された時期がありました。美術や音楽では当時1〜1.5時間とされていました。学校の特色を生かし、上限を検討しましたが、教員配置の関係で下限をせざるを得ない状況化にありました。よって教育の理念ではなく、単純な教員配置と授業担当可能時間数という物理的な条件によって決定されました。
ここに現場とのギャップがあります。
現状のマスコミを中心に騒がれた「学力低下論」(受験学力低下論)を考えると、教科時間数の弾力的運用を地域や学校に任せれば、学力調査のこともあり、当然のことながら「主要教科(前文部科学大臣の発言)」の方を選択することになるでしょう。したがってこの弾力的運用はその理想とは違った形となると予測されます。
等しく子ども達に学力を保証するためには必修教科の授業時間数の弾力的運用は避けていただきたい。学校の特色は「総合的な学習の時間」で十分に発揮されます。また他でも述べた通り「選択教科」の時間数を「必修教科」にまわしていただきたい。
○ 現在、各学校では、例えば、朝の10分間などを活用して、学習習慣の確立といった観点から、読書活動、音読、計算のドリル学習などが行われている。こうした標準授業時数の枠を超えた学習活動について、国の基準上の取扱いについて検討する必要があるとの意見が示されている。
○ 現在は標準として定められている授業時数の扱い、学年ごと教科ごとに示されている授業時数の示し方について、柔軟化することも検討する必要がある。この点については、後述する。
○ 総授業時数の在り方については、教育内容の見直し、各教科等の授業時数の在り方とあわせて、検討することとする。その際、特に、小学校低学年については、幼児教育における預かり保育等の実態を考慮して、在校時間や授業時数の在り方を検討することが必要であるとの指摘がある。
○ 授業時数の在り方については、子どもや学校の実態、社会の要請等を十分把握しつつ、専門的・実証的に検討を行う必要がある。
② 発達や学年の段階に応じた教育課程編成や指導の工夫
○ それぞれの学校段階の役割の基本については、先述の平成10年7月の教育課程審議会答申において次のように整理されている。
・ 幼稚園においては、幼児の欲求や自発性、好奇心などを重視した遊びや体験を通した総合的な指導を行うことを基本とし、人間形成の基礎となる豊かな心情や想像力、物事に自分からかかわろうとする意欲、健全な生活を営むための必要な態度の基礎を培い、小学校以降の生活や学習の基盤を養うことが求められていること。
・ 小学校においては、個人として、また国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度の基礎を身に付け、「豊かな人間性」を育成するとともに、自然や社会、人、文化など様々な対象とのかかわりを通じて自分のよさ・個性を発見する素地を養い、自立心を培うことが求められていること。
・ 中学校においては、義務教育の最終段階として、また、中等教育の前期として、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度を確実に身に付け、「豊かな人間性」を育成するとともに、自分の個性の発見・伸長を図り、自立心を更に育成していくことが求められていること。
・ 高等学校においては、義務教育の基礎の上に立って、自らの在り方生き方を考えさせ、将来の進路を選択する能力や態度を育成するとともに、社会についての認識を深め、興味・関心等に応じ将来の学問や職業の専門分野の基礎・基本の学習によって、個性の一層の伸長と自立を図ることが求められていること。
○ このようなそれぞれの学校段階の役割の基本は変らないものと考えられるが、例えば、いわゆる小1プロブレムが指摘される中で、幼児教育と小学校教育の具体的な連携方策を教育課程上明確に示すべきとの意見が出されている。就学前の段階で子どもに育つことが期待される力は何か、また、それが十分でない場合には、小学校はどのように指導に当たるべきか、あるいは接続を円滑にするためにどのような指導をすべきか具体的に議論を進める必要がある。
○ また、小学校と中学校との接続については、例えば、不登校や暴力行為などの発生件数が小学校第6学年と比べ、中学校第1学年で飛躍的に増加するなどの問題がある。また、研究開発学校の調査によれば、小学校の中学年から高学年にかけて、子どもの自己理解や人間関係に関する考え方が大きく変化するとの結果も示されている。
○ 教育課程部会や教育課程企画特別部会では、子どもの発達や学年の段階については、個人差はあるものの、一般的に小学校の低学年までは主として具体的な活動を通して認識し、中学年から高学年にかけて徐々に物事を対象として抽象的に認識可能になるといった意見が多く出された。
○ このような観点からは、様々な事情や背景を抱えている子どもがおり、発達の段階の違いがあることも十分配慮した上で、個々の子どもの状況も踏まえながら、例えば、小学校低学年から中学年までは、体験的な理解や具体物を活用した思考や理解、反復学習などの繰り返し学習といった工夫による読み・書き・計算の能力の育成を重視し、中学年から高学年にかけて以降は、体験と理論の往復による概念や方法の獲得や討論・実験・観察による思考や理解を重視するという指導上の工夫が一層可能なように教育課程を編成する必要がある。
○ 教育方法の面において、小学校高学年における教科担任制について検討することが必要である。その際、中学校の教員が小学校で指導に当たることについても、小中連携の充実という観点から積極的に検討する必要がある。
③ 学校週5日制の下での学習機会の拡充
(学校週5日制の下での学校と家庭・地域の具体的連携策)
○ 義務教育答申では、学校週5日制について、「学校、家庭、地域の三者が互いに連携し、適切に役割を分担し合うという基本的な考え方は今後も重要であり、それを基本にしつつ、地方や学校の創意工夫を生かすことについて、今後さらに検討する必要がある。その際、特に、学校、家庭、地域の協力・共同の取組をこれまで以上に強化するための方策、土曜日や長期休業日の有効な活用方策等を更に検討する必要がある。」としている。
○ 教育課程部会では、学校週5日制については、学校、家庭、地域の三者が互いに連携し、役割分担しながら社会全体で子どもを育てるという基本理念の下、社会全体の週休2日制の導入とともに、長い時間を掛けて段階的に導入された社会システムであることを前提として議論が行われた。
○ 家庭や地域の教育力の現状にかんがみ、隔週で土曜日を活用したり、高等学校は区別してはどうかとの意見もあったが、「学校週5日制のねらいとするところを大切にすべきである」、「地域や自治体の取組が実を結び始めている」などの意見が示され、学校週5日制は、国の仕組みとしてこれを維持すべきとの意見が大勢であった。
○ 本報告においてこれまで記してきたように、子どもたちに「確かな学力」を身に付けさせることは重要な課題である。このため、教育課程部会においては、教育内容の充実や授業時数の在り方の見直しについての具体的な検討を進めている。
○ しかしながら、同時に、こうした学力の問題の背景には、子どもたちの学習意欲の問題が指摘されている。また、高等学校や大学を卒業しても、学んだり働いたりする意欲を持てない若者が存在するという現実もある。
○ 「確かな学力」を育てるとともに、「豊かな心」や「健やかな体」をはぐくみ社会的自立を推進すること、個性を生かし主体的に目標に挑戦する力を育てることは、21世紀の国民を育てる教育の重要な使命であり、調和の取れた形でこれを実現しなければならない。
○ 学校週5日制の現状については、必ずしもこうしたねらいが達成されていないとの状況も見られるが、学校週5日制の下で、家庭や地域において、大人が子どもに正面からかかわる仕組みをどのように構築していくか、具体的に検討していくことが必要である。
○ 各地域においては、学校、家庭、地域の三者の連携・協力を進めることにより、体験的な学習や地域の人材の活用が様々な形で進められている。
○ 家庭や地域におけるこうした主体的な取組を全国的なものとして広げていくことが必要であり、その際、例えば、異年齢の子どもたちの交流、保護者(特に、父親)の参加、地域の大学との連携、実業団のスポーツ選手との交流などの重要性を指摘する意見が示されている。
○ こうした地域での活動を支援するため、土曜日に行われる子どもの自主的・自発的な学習活動(探究的な学習、体験活動など)については、そのうち、学校教育活動と同等の成果があると判断されるものについては、地域の主体的な取組(学校外の学習活動)であっても、学校の学習評価において、積極的に評価することも考えられる。
○ 学校週5日制の下での長期休業日の取扱いについては、「確かな学力」を定着させるための指導時間の確保という観点から、一部の地域において、夏休みなど長期休業期間を授業日に充てる取組が行われている。
○ こうした長期休業の活用を促進するため、例えば、サマースクールなどの形式で補充的な学習や発展的な学習などを選択的に行うことができるような柔軟な授業形態を導入することも考えられる。
○ 学校週5日制の下での土曜日や長期休業日については、家庭や地域社会との連携を促進する方向で、学校外の学習活動に対する評価の在り方を含め、活用方策を検討することが必要である。














