図工に追い風。NHK教育テレビ。

図工に追い風。NHK教育テレビ。_b0068572_17375560.jpgNHK教育テレビの「ダビンチの図工室」を見ました。「お気に入りのイスに自分の顔をかざろう(15分)」「かさを使って何ができるかな?(15分)」の2本。
 妻と見ました。感想を聴くと「いろんな要素がいっぱい。いい授業ね。」
まず何よりうれしかったのは「図工」という言葉を使っていることです。教師のためのハウツー番組ではありません。妻が見てニコニコしていたことが象徴的です。
 図工美術を通して何を培うののか、教科の存在意義が伝わってくるのです。授業をされた横内先生の題材のよさが光ります。
 学校現場の外から見ると、図工や美術というと、どうしても結果としての作品で評価されてしまうのでしょうが、このようなテレビ番組がつくられたことで、子どもの行為(学び)に目が向きます。テレビ番組では、子どもの喜びや驚き、真剣なまなざし、あるいは葛藤が確かなカメラワークによって映し出されていました。
図工に追い風。NHK教育テレビ。_b0068572_19121626.jpg 特にこのような授業はややもすると、ただ楽しいことをやっていてそれが教育?といわれてしまいがちですが。
 椅子に座る子ども達の表情のよさを横内先生はあえて言葉にしていました。
 授業は「顔を描こう」ではないのです。「表情を描こう」なのです。これは自分の内面に目を向けさせることになるわけです。
(「風景を描こう!」というのと「春を描こう!」とでは子どもの活動や思考が変わってきます。)
 そして手渡したのが三面鏡!(なるほど!)鏡に向かって何度も表情をつくる子どもの姿が印象に残ります。
 さらに胡粉を使うことで試行錯誤を保障。ここに葛藤場面がくるであろうことを押さえての材料選びです。事実映像でも何度も試行錯誤して表情を描き直す場面が映し出されていました。
 図工に追い風。NHK教育テレビ。_b0068572_19111029.jpg 子ども達が、色・形・材料を通して自分という存在を意識しながら、イメージを広げ、深めていく、そのような学びが成り立っている授業でした。 
 改めて「題材の設定」や学びを豊かにするための材料や用具の設定(環境の設定)、教師の言葉がけ、表情(評価)が大事であるかを感じさせられる授業でした。
 ところで瀬戸カトリーヌさんの表情やコメントもよかったです。傘の授業の中で瀬戸さんが「どこから見るのがおもしろい?」って子どもに声をかけていたのはオッ!と思いました。
(うーん、こんな方とTTの授業がしてみたい。)そうそう、横内先生が子どもに助言した内容で傘を並べている子をわざわざ呼んで、近寄って見たり、引いてみたりしてみることを助言していました。単に楽しそうにやっているからそれでよしとするのではなく、指導者の身につけさせたい力がはっきりとあることを示しています。私もよく使う言葉です。(美術の授業の中でも非常に重要な言葉だと思っています。)
 見かけは学校で日頃行われている授業(図工専科のいる東京は別だと思いますが)と違うようにも見えますが、図工美術の学習内容を考えるよいきっかけを与えてくれるものでもあると思います。このような番組を通して小学校と中学校の授業の連続性を考えみるのも今必要なことでしょう。
 本当にこのような番組が出来たことは非常にうれしいです。ぜひレギュラー番組にしてほしいです。そうすれば、子どもの教育について世間でおきている様々な論議の中に一石を投じることになるのではないかと思います。今の子どもに身につけさせたい心や力は何?って考えていくことにつながりますから。授業の意図等がホームページで示されたなら最高ですね。

なお、見逃した方は 再々放送が4月23日(日)の15時30分〜16時の予定。

 
 この記事についてはNHK教育テレビにお知らせしました。
 同時にINSEAなどでもこのような番組が紹介されたなら素晴らしいだろうということも付記しておきました。

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NHK教育テレビに期待したい

*ところで、子どもの学びや授業改善のためにもビデオを活用したいなと改めて思いました。

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Commented by tana at 2006-04-06 23:12 x
山崎さん、番組の感想ありがとうございます。そして、さすがです!「顔を描こう」ではなく「表情を描こう」・・この言葉です。私も立ち会いながら感じたことは、これこそが何よりこの活動の是非を左右する!でした。そこに着目されるとは感服です。
よくありがちな口を真一文字に結んだ無表情の自画像に「?」を感じた方はこの言葉、目からうろこですよね。きっと横内先生の経験と反省から(きっと試行錯誤があったに違いない)得られた自然の言葉なのでしょうね。ぜひとも皆さんにNHKの番組の感想に投稿していただきたいです。メディアを動かして一大ムーヴメントを!今はこれが最重要課題と考えます。
Commented by yumemasa at 2006-04-07 00:57
田中さんのいわれる通り、私達は美術教育の大事さをもっともっと広める必要があります。それがテレビで扱われるとしたら、それは何と大きなことか。
田中さんは美術館の活動でがんがんやっていますし、山田さんは子どもの居場所でもやっています。私は私でwebで。もちろん、三澤さんも大橋さんも中教審にも働きかけていますし、そして何より各地で授業実践や研究に真剣に取り組んでおられる方もいて。指導要領改定前に大きな動きをつくっていきたいですね。
by yumemasa | 2006-04-06 18:29 | Comments(2)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明