新教育基本法案について

 これまで、このブログでは「教育基本法」や「憲法」について深く触れて来ませんでした。しかし「戦争できる国」になってしまっては「美術教育」どころではありません。
 「新しい絵の会」の常任委員会で「新教育基本法」に反対するという声明を出したというお知らせを事務局の三嶋さんから教えていただきました。ここにその声明文を紹介します。(掲載については了承済み)

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「新しい絵の会」常任委員会は「新教育基本法」に強く反対します。

新しい絵の会」は図工美術教育の研究団体として発足以来47年間 「すべての子どもたちに表現する力と生きる喜びを」をスローガンに活動を続けてきています。
 今、政府与党は教育基本法を改悪し 「新教育基本法」を国会に上程し、その成立を図ろうとしています。私たちは子どもたちの現実に寄り添い、彼らの思いや感情を大切にくみ取り、色と形の世界へ導き、表現へと結びつけるように日々研究を行っています。
 それは美しさや感動、正義や愛など人が長い間、育んできた感性もまた、教育によって大きく左右されるという歴史を思うからです。
 表現や芸術的な行為は、自由で民主的な社会が支え、発展させていくという歴史を見るからです。
 まず、現行法の前文にある憲法 条と深く結びついた「真理と平和を希求し」を「真理と正義を希求し」に変えています。アメリカのイラク侵略戦争をはじめ近代の戦争、とりわけ日本のアジア侵略が「正義」の名前で行われたことを忘れてはなりません 「正義」というきわめて主観的な言葉を法律の名で一人歩きさせてはならないと思います。
 また、教育の目的から「個人の価値をたつとび」を削除し、それにかわって、前文に「公共の精神を尊び 「伝統を継承し」などを入れました。これは、個人と国家との関係を逆転」させています。私たちの研究がまず、子どもに寄り添うところから始めるのは、教育というものが、その個人の思いや感情を基盤に成り立つと考えるからです。
 国家があって個人はそれに従う存在、教育は個人のためではなく国家のために行われるということは、教育の名に値しないと考えます。このことは、自民党の新憲法草案とも共通するもので、憲法改悪と連動し 「戦争をする国」の国民をつくる教育を基本法に定める極めて危険なねらいだといえます。

 次に、現行法の「教育の方針」を「教育の目標」にかえ 「我が国と郷土を愛する...態度を養う」をはじめ、多くの徳目を盛り込み、それらの徳目について「態度を養う」ことを教育の目標としています。
 さて 「愛する」という言葉がどのような国、郷土を指すのか、日本の伝統とは、文化とは何なのか。きわめて曖昧です。誰が文化の善し悪しを決めていくのでしょうか。時代を反映する文化とはどういうものなのか、60年前の美意識や正義、愛すべき対象や伝統とは何だったか考えるまでもなく、このような個人の心の内を法という名で決めることには違和感を覚えます。
 個人の感情まで法で縛ることなどあってはならないと考えます。現に、国旗国歌法の国会審議で政府が「強制しない」と答弁したにもかかわらず、法成立後、文部科学省を先頭に東京都教育委員会などによって異常な強制が行われているこ とをみれば明らかです。
他にも問題にすべき課題は多くありますが、私たちは、子どもたちの内心の自由を奪う今回の「新教育基本法」制定の動きには強く反対の意思を表すものです。

2006年5月21日

「新しい絵の会」常任委員会 事務局長 三嶋真人

 ☆新しい絵の会

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by yumemasa | 2006-05-27 23:57 | 教育一般 | Comments(0)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明