作品が完成したあと

 先日、鉛筆による抽象絵画の最後の授業は絵の額装と学習の振り返りの時間としました。さて、授業の最初に額縁を見せたところ、反応がよかったです。台紙の色も白と黒(後で灰色もあった方が良かった、と反省)を準備しました。
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まず、台紙を選ぶ段階でけっこう迷います。実際に絵を置いてみると作品が違って見えますから。そこで、作品に手を加えだす生徒が続出。さらに額縁です。これも悩む子はかなり悩みます。相談を受けたたりもしたので私は額縁屋さんの店員を演じ、楽しみました。「そうですね、お客様の場合、かなり迷われていますので、消去法というやり方で決めていきましょうか。いかがです?」というような感じです。
それから名札。
これは白い紙を渡して「題名」「氏名」「授業を通して感じた事・考えた事・発見した事・身に付いた事等の感想を書いてください」「作品の解説を書きたい人はどうぞ」で、台紙を渡す時二つのことを言いました。一つは、題名ですが、適当なおもしろそうな題名でもいいし、自分がねらっていたことがあったらそれを題名にしてもいいし。もちろん今回の抽象の授業は何かのテーマを表現しようとしてやっているわけではないから、無題でもかまわないと話しました。(実際に画家は題名を重視する人、そうでない人がいることを説明しました)。
 もう一つは、ラベルも作品だと思って書くようにいいました。(ここで教科書を見せてレイアウトについてよく考えられているとう話を補足)
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実は、自分の作品を額縁に入れる体験を生徒にさせたかったし、描いた作品を自宅に飾ってほしいとも思っていました。
これまでも他の先生が額縁を段ボール等を使って自作させていたのは知っていましたが、でいきたら本物と思っていました。しかし、教材費の関係でそれが難しく、100円ショップもよく訪ねていたのですが…。しかし、最近になってダイソーという100円ショップにガラスの額(B5サイズ)が売られていたのです。まとめ買いでは色を選べませんでしたが、結果として6色の中から選んでもらうということがかえってよかったようです。(その代わり多めに注文しました)
 
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さて額縁の話ばかりになりましたが、もう一つ大事な事があります。それは授業の振りかえりです。制作を終えて感想(自己評価)を書いてもらうのですが、私はこれを非常に大事にしています。生徒に書いてもらった内容を読む事で、(授業の中だけではとらえきれない)作品の中にこめた思いが見えたりもします。
また生徒自身は学びを振り返りそこに価値を再発見することがすくなからず、あります。ずっと昔は「うまくいったところ、うまくいかなかったところ」などと書かせたこともありますが…。そんな観点の感想では、かえって作品を表面だけ、結果だけで見てしまう感覚を植え付けることになてしまうような気がします。
生徒の心に触れたいのです。今回もありました。「そうかあ、こんな思いで描いていたのかあ」「なるほどなあ」とか。
 なお、今回はその感想を生徒同士が見られるようにしたいと思い、ラベルに書いてもらったのです。ただ、ラベルに書くと字数が少なくなるので、もの足りなさが残りました。
  今回できあがて額に入った作品を笑顔で手渡してくれる姿、たくさん、ありました。授業中浮かない顔をして描いているように見えた生徒が、「先生、この授業すごくおもしろかった」と一言添えてくれました。
 出来あがった作品を手で受け取るってやはり大事だなと思いました。
 子どもの作品を手で受けとめるということの大切さを教えてくれたのは寺内定夫さんでした。
なんだか作品の話をさっぱり書きませんでしたが、これから生徒の感想を読みながら作品をじっくり見ようと思っています。そのあとは校内展示。
なお、生徒の感想をラベルに書いてもらったのは他の先生に見てほしいという意味もあります。作品の出来映えのだけではなく、その作品が生まれて来た中にある子どもの思いや、美術教育の価値についても知ってほしいと思っていますので。

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 ☆額に入るといいね。

 ☆何の先入観もなく、抽象作品を楽しめる人に

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Commented by hakusuke at 2006-07-14 01:11
額装は大切にしたいですね。公立学校での,美術の教材費は,保護者の家庭での金銭的状況や,市販された教材(私の場合角材,木彫小箱は高価故,なかなか額装費まで手が出せませんでした。BOXアートの箱は,自分自身が免外技術指導者だったため,つくらせた経験があります。額装までできたときは,数えるくらい。生徒さんたちが,少し羨ましいです。
かろうじて,台紙の色を,1年生生徒たちに自由に選択させた機会がありました。野菜の平面構成だったはず。これは,これで生徒も自分の作品にある台紙の色を考えられた教材だったかなぁ・・・と我ながらまぁ良かった方の教材の一つ。
 県立だと,教科主任まかせで勤務校の2回前の美術科の個人教材費
15,000円時代があったと聞いて目が回りました。よくまぁそんな大金保護者も支払ったものだと・・・。
Commented by yumemasa at 2006-07-14 06:53
hakusukeさん、教材費私はこれまで年間1000ー1500円程度です。入学時にアクリルガッシュを購入費は別ですが…。時代を考えると少しでも安くと考えますよね。
ところで、台紙の色を考えさせるのは本当によいことだと思います。色彩の学習にもなりますしね。
「選択意思決定場面」を増やすことは、非常に大事だと思っています。美術もいや、生きることも「選び、決める」ことの連続によって成り立っているといえますしね。
教師は題材の中でこの場面を多く取り入れることで、子どもはより深く考えるようになりますから。
Commented by hakusuke at 2006-07-14 20:44
生徒たちに,教材を選択させることは今の時代だからこそ大切に扱いたいし,私自身教材を選択させながら,授業計画を立てております。教材やさんだけが,納品で苦労していたかな?。
 スケッチ指導など,幾何学から多面的,柔らかい,固いものなど,生徒自身に,自分の努力する内容や,レベルアップさせたい内容でモチーフを選択させることも,時に大切だと私は感じます。「生きる力」だ。
とまぁ,小論文かきながら自分の指導内容振り返っているところです。
Commented by yumemasa at 2006-07-14 21:31
教師として自分で選び決める環境をつくることは大切ですね。そしてその題材を設定することで、どんな力をつくていくのか、美術教育では特に論じられなきゃならないことでしょうね。
採用試験頑張ってください!
by yumemasa | 2006-07-13 20:39 | 美術の授業(山崎) | Comments(4)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明