美術教育のためのインターネットの活用 |
この内容は年内には出版物として刊行される予定ですが、私の発表内容を公開します。
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北海道の教職員組合で教育研究集会というのがあるのですが、そこで協同研究者というのをさせていただいています。そこで各地域からレポートを発表があり、素晴らしい実践に触れることもあるのですが、時には過去に十分に討議を重ねた問題がしばしば繰り返されることもあります。研究の成果が広がっていないと感じる場面です。
美術教育については、なんとなく閉塞感を感じていましたが、インターネットを活用しだしてから自分が変わりました。全国にはすばらしい実践がいろいろあることを知り、元気がでました。また、自分が発信すれば、受信してくれる人がいることがわかりました。
美術教育の研究ということを今すごく考えています。研究ということをシンプルに考えると、乱暴かもしれませんが、「深める研究」と「広げる研究」があるのではないかと思います。過去私が中心にやってきたのは、自分の授業の質の向上。つまり「深める研究」だったと思います。
今はもう一つ「広げる研究」というのがどうしても必要だと思います。私自身もいろいろな先輩から多くのことを学んできましたし、文献や発表から学んできました。ここで学んできたことをもとに、例えば図工がよくわからない、指導の仕方で悩んでいる、そういう人を支援できないだろうか。そういう学んだ成果を広げる研究が必要と思います。
それから日本美術学会の資料では、全国に免許なしで美術を指導している教師が30%いるというデータが示されました。北海道ではもっと多いと思います。
で、そういう人達に何か支援できないだろうか。先生方にその経験知を伝えていくという研究ができないだろうか。
自分の地域では、例えば版画講習会をやったり、理論研修をやったりしていますけれども。それをもっと充実させて。
それからもう一つは、社会に向けて。美術教育は「こんなにも理解されていないのか」と感じることもあります。社会に向けて自信をもって美術教育のよさをもっと積極的に伝えて必要があると思います。
こうしたことをインターネットを活用して感じました。
インターネットの活用方法について話してみたいと思います。まずメールがあります。
ファックスよりはるかに便利です。メーリングリスト(ML)なんですけれども、私は3つ所属しています。
一つは全国的なもの、もう一つは埼玉のものに参加させていただいています。それからホームページの公開のために協同で仕事をしていますので、その連絡用に一つ入っています。
メーリングリストのよさというのは、閉じられていますので自由に報告や連絡ができます。このメーリングリストでは面白いと思ったことがありました。それは、若い先生が、どうしたらいいだろうかと悩みを書き込んだところ、多くの先生方からの回答の書き込みがありました。私もアドバイスをしようと思って他の先生に相談をして書き込みをしましたが、最後には、私もその授業をやることにしました。
それからホームページです。オーソドックスですが、情報の共有化にはいいと思います。あのサイトにいけば必要とする情報があるということを知っていれば便利です。
もう一つはプログです。ものすごく簡単にできます。インターネットの革命的なツールともいわれています。日本に入ってきたときは日記といわれましたが、アメリカではジャーナルといわれています。ブログは自分が発信したことに対して、読んだ人からコメントが返ってくることがあります。私のプログでは、知らない先生同士が私のプログを通して会話をしているということがよくあります。
それでは、具体的にどのような活動をしているかを紹介させていただきます。
一つは、「豊かな美術教育を」という2003年の暮れに開設したホームページです。次に「美術と自然と教育と」というブログです。これが私の活動の中心になっています。これはもうすぐアクセスが20万件になります。
今まで自分が一生懸命に指導案を作成して公開授業をしても参観してくれる先生方は少なく、授業の研究成果はほとんど知られることなく終っていましたが、このプログではそういったことはありません。多くの人に知ってもらうという点では、すぐれた発信手段だと思います。

「豊かな美術教育を」「美術と自然と教育と」は、山崎という個人の存在が基盤になっていますが、「図画工作・美術教育すくうえあ」では、また違った側面があるので、このつながりは大事にしたいと思っています。

また、美術教育関係者以外からも意見を集めながらつくっている「図画工作美術教育の大切さを考える」。酒井式描画指導法が2歳児をも指導するということで大きな疑問を感じてつくった「酒井式描画指導方への疑問」
それから、これは私がつくったものではありませんが、「webこども美術館別館」があります。熊本の西尾先生が運営しているもので、全国の多数の先生から研究実践を集めながら膨大なデータを公開されています。

では、これらのものについて簡単に説明していきたいと思います。
まず、「豊かな美術教育を!」というホームページです。きれいにできているといってくれる人がいますが、私はホームページを作成する専門的な知識はもっていません。テンプレートというものを使ってつくっています。いってみれば既成品のようなものです。
これをはじめたきっかけは、教育研究集会の中で「北海道にいると情報が入らない」という話からです。例えば、稚内の美術教育の研究会に呼ばれた時の参加者は、10人集まりませんでした。今度胆振・室蘭などにも行きますけれども、例えば伊達市だと中学校が5校あって、美術の専任教師は一人だそうです。
孤立感を感じながら、美術教育の大切さをなかなか理解してもらえないで、つらい立場で仕事をしている先生もいるのではないかと考えて、適切な情報を発信したいと思いました。
またどこの誰がつくっているのかわからないと信頼されないだろうということで、自分の授業実践の記録を紹介するページもつくりました。


最初に取り組んだのが、リンク集です。美術教育に関しての最高に充実したリンク集にしようと考えました。
時間をかけてつくりました。個人のベージ、各地区の図工教育研究団体、それから全国の美術研究団体のホームページとリンクしています。その他にもいろいろなホームページとつながっています。
私は自分の考えをただ発信するというよりも、人と人をつなぐネットワークや仕組をつくる役割を果たしたいと思っています。
「豊かな美術教育を!」のサイトにいけば、ある程度の情報を得ることができるというようになればと思ってはじめました。
2004年末にプログというものが流行しました。今はこんなにたくさんできています。まだまだ増えています。読んでいると元気がでてくるものがたくさんあります。
それからこのサイトがもっている役割がもう一つあります。です。誰もが自由にダウンロードして使用することができる資料集です。今日のこのフォーラムの資料もダウンロードすることができます。その他、指導案やワークシト、美術の言葉集などを集めています。また、他の研究会、これは函館の研究会のデータですが、プレゼンを見ることができるようにしています。しかしこれは個人で続けることは難しい面があります。でも試みとしてはこんなこともできるということです。現在は「WEB子ども美術館」などがずっと充実しています。情報の共有化は大事な活動のひとつと思っています。


情報の共有化ということでは、これは何年もかけて画家の言葉を集めたものです。できるだけ正確に書いていますので、よろしければダウンロードしてご利用ください。

日記をはじめた頃、日本美術教育学会の大橋先生のプログをはじめられて、そこにコメントを書いたところコメントが返ってきて、これは面白いと思いました。まったく知らない私に大橋先生はコメントをくれたわけです。実は一昨日初めて彼と会ったのですが、初対面という感じがしないで、いきなり本論の会話を始めました。今日のこの会場にもいきなり会って握手をした方が何人かいらっしゃいます。
さて、これが今のメイン「美術と自然と教育と」です。

記事は1000近くになります。美術に関することが7割くらいで、他に自然ついてや親ばか的な内容も書いています。
例えば、今、岡山で「MITE!おかやま」という鑑賞の取り組みをやっていますので、そこに参加された方がサイトのメーリングリストに紹介してくれたので、プログでも公開していいですかと許可をいただいて掲載しました。ここでは見ることができないのですが、岡山県のボランティアの先生がコメントをよせてくださったので、さらに詳しい内容を知ることができます。
美術教育の方法論、時々自分の資料をのせます。公開授業をしたら子どもにお礼をいいましょうという提案をしています。
これは岩崎先生のお話しとも関係するのですが、美術教育のプログなのですが、不登校の子どもの親の方が見てくださる確率が高いです。ある方は、美術教育に大変に関心をもってくださり、体験学習と同じではないかということで、紹介してくださったサイトをみたら、「ふりかえり」という言葉が重要だと書いてありました。非常に大切なことだと思いました。
直江先生のお話しを授業でするとしたら「わかちあい」になるのかなと思っています。言いたいことがたくさんあるので、このようにどんどん書いています。
最近は自分の授業のことを載せています。

これは北海道です。北海道を盛り上げたいからです。同じように私の所属する石狩でもつくっています。

しかしこの活動の結論としては、個人でやるには無謀なことだったかもしれませんが、初等中等教育部会などの方々に美術教育の大切さをよりわかっていただきたいという思いで、意見を集めました。一ヵ月間でしたが、教師からだけでなく、主婦の方、高校生、企業の方など、多くの方の意見が寄せられました。それをまとめたら50数頁の印刷物になりました。これを送ったところ鳥居会長から返事がきて驚きました。そこに「芸術教育を大事にしています」と書いてあったので嬉しかったです。何もしないで文句ばかり言っているよりも、積極的に活動をして、発信をしていく大切さを実感しました。
あとは「子育てのヒント集」とか「図画工作・美術教育すくうえあ」も大切に考えています。これは自分の意見をあまり出さない感じのところです。
それから酒井式描画指導法というのがあります。北海道では取り入れているところが多いです。いずれは衰退するだとうと考えていたのですが、テレビで紹介されたりして愕然として意見をだしたのですけれども、すごくくやしかったです。美術教育が一般社会に理解されていないのかと思いました。酒井式が100%全て批判するということではないですけれども、さすがに2歳児に顔の描き方が稚拙だからといって、顔の描き方を教えるというものです。それを幼稚園で実践されているのですから、子どもがかわいそうです。この活動は正直勇気がいりましたが、おかあさん方からもメールをいただきました。その意見を公開させていただいたり、どうしたらいいかの相談を受けたりもしました。指導される先生は善意でやってはいるのですけども。
また是非アクセスしてほしいと思うのですが、「熊本のWebこども美術館別館」は特に注目すべきサイトだと思っています。これは全国各地の先生方に研究実践を多数掲載しています。これからも成長していくと思います。
文部科学省の委託事業にもなっています。

それから最近できた山形のサイト、このような公的な機関でも充実した情報を提供しています。

お母さんやお父さん達もプログをもっています。あるプログでは、「自分は子どもの絵をこうとらえていたけれども、最近美術の教員の方のプログ「美術と自然と教育と」を拝見してその時に先生がおっしゃったことがなんとなくわかったような気がする」と書いてあります。嬉しく思う反面、責任も感じています。
インターネットをやって思うことですが、「いつでもどこでも研修」ができると感じています。「人と人がつながる」「脳と脳がつながる」とも思いました。それから単なるバーチャルではありませんでした。メールのやり取りをしていると、初対面でもすぐに旧知の友人のように話しが弾みます。
それら美術教育の成果が少しですが広がりました。教師として社会に対してということで、今のところテレビや新聞社から記事を書いてくださいという依頼があたり、放送局の方が調査につかってくれたり、連絡をいただいたということもありました。
今後「美術教育関係者ができること」ということで、絵を通して育児への支援をしていただけないでしょうか。子どもの成長にとって、絵がどれだけ重要な役割をはたしていることか。絵本の読み聞かせは広く理解されていますが、それに比べて子どもが絵を描くということの大切があまり理解されていません。
これは義務教育の中で子どもの絵の見方などについて家庭科の保育に含まれていないということも背景としてあるのではないかと思います。関係者の方がいらっしゃいましたらご配慮願いたいと思います。
それから先生方を支援する「美術教育支援サイト」というようなものをどなたかやっていただけないでしょうか。これはマニュアルではなくて、もしつくっていただけるならこう書いておいたらよいのでないかと思っています。「このサイトからはできるだけ早く離れてください。大事なことがわかったらいつまで頼らないで自分の目の前にいる子ども達を前に考えてください」と。
それから研究成果の公開です。どんな小さな研究会の成果でも閉じてしまってはもったいないです。もしよろしければ私に連絡してくだされば公開させていただきますので、よろしくお願いします。以上最後にお願いをさせていただきました。これで終ります。ありがとうございます。

ネットでつながると勉強になりますし、授業が変わってきますね。実感しています。5年前の自分と今の自分は確実に違うでしょうね、特に鑑賞教育などは。

でも、保育士という仕事をもっと深めていくためにも、私自身の成長のためにも、「北海道」という土地となぜか縁ができたことでも、このこと、私なりに関わって一緒に勉強させていただきたいと思っています。
ただ、今、まだ北海道に戻れていないこと、保育の場を持てていないこと・・・などなど、「現場」がないことがかなりのネックではありますが。
でも、こうして距離とは関係なく多くの人と繋がっていけるツールがあるわけですし、今こんな条件下でもできることは何かしらあるのだろうとも思います。
「現場」として、私がいた北海道の保育所で実験的実践の協力を得るというのも一つの方法かも。そのおかげで、先生方やお母さん方が意識するようになって下さったらステキだし!
さて、先生。何からどういたしましょうか?(^^)
ホームページを開設して、おたがい、全国に図工美術をやってる方をさがしていたころでした。あれから僕もずいぶん知り合いが増え、活動の場も広がりましたよ。ネットの力はすごいと改めて思います。
何か資料が出来れば公開されると良いなあ。日本文教出版から出ている「ひらけゴマ(鑑賞のとびら)」無料みたいなセンスで資料ができたらいいような感じがします。ウズウズをこんな感じで発揮しては、どうですかね。
http://www.zenbi.jp/topics/06/0801.htm
ちなみに上のようなものもありますよ。
とりあえず、何か公開できるものがあれば、このブログで公開させてください。とにかく、せっかくの知恵ですからもったいないです。
保育や幼稚園教育のなかでの造形活動あるいは子どもの遊び等を通して受けとめ保育士の感受力とってもとっても大事になるだろうと思っています。
私は私でこれから、そちらの方面の勉強もしたいと思っています。というか、来月試験的に子どもの絵のとらえ方についての研修会をやる予定です。
それから保育士を育てる養成課程(短大・大学での)のこともその内容に課題があると思っています。このことについては何れ大学の先生から協力を得て、公開する予定でいます。お忙しい方なのでいつになるかわかりませんが…
uzuraさん大橋さんのKIDS ART LABOや千里敬愛幼稚園に時々アクセスすることをまずはやってみてはどうでしょうね。
千里敬愛幼稚園のその改革の歴史から学ぶことはとってもとっても大きい気がします。
uzuraさんのコメント心強いなあ。すごく!

山崎先生にはブログのやりかたからお教えいただきましたね。
先生のブログで全国の美術教育の様々な取り組みを知ることができただけでなく、ブログのコメントを使って意見交換ができました。人数が少なく孤立しがちな美術教師にとって、こうした「情報の共有」は大切です。
また、「広げる研究」重要だと思います。啓蒙というのはなんとなく気が引ける言葉ですが、芸術の魅力と教育効果を知ってもらうことは重要です。小学校等で美術をどう指導してよいか難儀しておられる先生方が利用できる、指導案などのデータベースがあればいいだろうなと思います。

シキカツさんのブログ開設うれしかったなあ。キャンプの話とか音楽の話もあったりするし。
とにかく、シキカツさんが当時HPに書いていた前回の指導要領改訂でのアクションの話、確実に私に勇気を与えてくれましたから。感謝しています。
さて「広げる研究」大事ですよね。今熊本の西尾さんの管理するweb子ども美術館別館が指導案集を多数掲載しているので、その役割を一部になっています。私の「図工美術教育ー子育て・授業のヒント集」もそのような発想です。しかし、入門的な内容に絞ったものがまだないのが現状です。みんなで知恵を出し合って何かできたらいいのですが…
「芸術の魅力と教育効果を知ってもらうことは重要です。小学校等で美術をどう指導してよいか難儀しておられる先生方が利用できる」というの全くその通りですね。
これからもどうぞよろしくお願いします。