多くの方に読んでいただきたい「子どもの絵の見方、育て方」
2007年 01月 15日
その幼児教育の中で特に大事なものの一つに絵があります。これは単に情操を豊かにとか、才能を伸ばすとか、そのようなことではなく、人間形成にとって非常に大切なものです。
このブログを通して、そのことに気づかれた親御さんもいらっしゃいます。私は私で地元で先日 「子育てと子どもの絵」ということで講演をさせていただきましたが、その大切さを感じ取っていただけたようです。
さて、そんな視点から、親御さん向けにその絵について非常にわかりやすく書かれた本があります。
鳥居昭美(あきよし)先生の「子どもの絵の見方・育て方」という本です。親御さんに向けて語りかけるように書かれたこの本は素晴らしい本だと思っています。
美術教育の世界では児童画の発達の研究がされていますが、内容的に難しそうだったり、一般向けに販売されるような本ではないため、このことが知られていないのです。
しかも義務教育の中では家庭科で育児を扱っていますが、折り紙、絵本、おもちゃなどのことには触れられていても「子どもの絵の見方」は扱われていないのが現状です。(ただし、家庭科の副読本では「子どもの絵の見方」を扱っている出版社もあります。)つまり、学校教育の中でそのことを知らないで大人になるのがほとんどでしょう。
ですから、このような本(子育てのテキスト)が出版されている意味は大きいと思っています。
さて、この本の中から一部を引用させていただきます。
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(幼児期の絵に対して)
「子どもの絵は聞いてはじめてわかるものです。子どもにとっては、聞いてもらう事によって初めて、絵を描くことに意義を持ち得るのです。聞いてもらい、わかってもらうことは表現する喜びになります。ですから聞いてやり、わかってやり、その感動を受けとめてやる、これが、
子どもの絵に対する、最も大切なお母さんの態度といえるのです。」
「お母さんの多くが、子どもの描画活動(試行錯誤・探索活動)に対して、あまりにも過干渉だということです。
過干渉とはどういうことか?
それは子どもの「自分の力で行動する力、自分の感覚で感じとる力、自分の頭で考える力」の芽を摘み取っていることになるのです。」
「子どもの絵は教えるものではなく、育てるものです。絵の技術を系統的に教えるのは、9歳を過ぎてからです。それまでの絵は教えようとすると、かえって子どもをダメにしてしまいます。子どもの育つ力に、先走って無理をさせてしまうからです。その代表的な例が形を教える、形を描かせる、色をあれこれ指摘して使わせる、塗りつぶさせる…などです。」
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☆ 「子どもの絵の見方、育て方」←amazonでは今この本の文庫版が安く出ています。
さて、この本は鳥居先生が地元高知の保育園や小学校の先生とも共同研究をしながらつくりあげてきたものです。
あとがきには「お母さん」へのメッセージがあります。この本を出版された鳥居先生の思いが伝わってきます。
そして多くの教育関係者に読んでいただきたい本です。
あわせて以前紹介させたいただいた、寺内定夫さんの「絵で聴く子どもの優しさ」も強くお薦めします。
☆ 絵で聴く子どもの優しさ
鳥居昭美さんのもう一冊
☆ 「子どもの絵をダメにしていませんか〜早くから形を教えないで」
さて、今回の件とは直接関係ないかもしれませんが、子どもの描く絵を見ていると、まっさらの画用紙のときよりも、広告の裏に描いた絵のほうが、色々な部分でのびのびしているように思います。親としては、飾ったりするのに画用紙に描いてあるほうがいいなと思うのですが、「描いてもらう」よりも「(自分の意思で)好きに描く」ほうが、やっぱり何か伝わるものが大きいように感じます。
山崎さんのところでは、お子さんの描かれた絵を飾ったりされていましたか?
じゃ、親がすべきは環境づくりでしょうか。描きたい時にいつでも絵の具やノリやはさみがある、紙もたくさんある、私は100円のらくがきちょうという安い画用紙を用意していました。もちろんカレンダーの裏とか、時には絵の具遊びしたり、模造紙に描いたり。
絵は飾りましたよ。描いたらどんどん、貼りました。コルクボードも使ったし、トイレはよいギャラリーでした。
でも、今思えばもっともっと絵を聴くということをすればよかったなあと思います。
寺内定夫さんの本でも鳥居昭美さんの本でも聴き方をみなさん、工夫されています。いや、工夫というより子どもの側にたって共感するということとでしょうか。実はこの姿勢がカウンセリングととても共通すると思っています。この前やった講演でも相談員の方が基本的に同じですね、と話してくださいました。
実は今職場の同僚で小さなお子さんを持つ方に、子どもの絵のことを相談されたんですけど、環境と共感、絵はコミュニケーションの手段、なんて話しをしました。で、最後に言ったの、難しいこと考えず、とにかく絵を通してこどもとかかわると「楽しいし、おもしろいですよ!楽しみましょう」って言ってました。あんまり難しく考えない方がいいのかもしれません、ただ、奥は深いですが…。
それと一般的な発達段階(特性)にしばられて子どもをみないようにという話しもしました。
確かに、飾って喜んでいると次々に絵を描いてきてくれるのですが、だんだん「奥行き」というか「深み」のようなものがなくなってきているような気がしていたのは、たぶんそこに「ストーリー」がなく、単に絵を喜んでもらえるというところで描いていたからなのかもしれないですね。
本人が意識しているかどうかはともかく、何かを伝えたい絵だと、その後の話が広がりますね。
鳥居さんの本を今度読んでみようと思います。
そう、絵はコミュニケーションの道具なのですね。小さな子どもにとっては、
多分小学校低学年あたりまでそのことはとっても大事だと思うのです。鳥居さんの本、読まれたらよいですよ。
それと寺内定夫さんの「絵で聴く子どもの優しさ」これもいいですよ。妻も絶賛しておりました。