酒井式描画指導法はこの絵をどうとらえるのでしょう?
2007年 04月 29日
特に「魔法の描画指導法」というの本で紹介されている2歳児の絵と下の3歳5ヶ月の私の子どもが描いたこの絵を、比較してみると…。
酒井式の方々はどう評価するのでしょう?(2歳児の絵は以下にアクセスし、「画像で立ち読みをする」というところをクリックしてご覧ください。)
ましてや、6歳の子どもが描いた絵などを見るともうこれはどうなうのでしょう?
☆ これが幼児の絵!? 魔法の酒井式描画法
酒井式では子どもに向かって「天才!」と言っているようです。教育テレビで放映された番組でも「天才!」を連発していました。
私は幼児期の娘の絵に対し、「上手だね」という言葉がけはしませんでしたし、自分の親(つまり、おじいちゃん、おばあちゃん)にもそのことをお願いしたくらいです。それは幼児は上手に絵を描くために絵を描いているからではないからです。しかし「上手だね」を連発していれば子どもは「上手に描く」ことが絵の価値と思ってしまうでしょう。
酒井式では「子どもが満足する」と言っていますが、それは事実でしょう。それは大人が上手に(この言葉自体が問題です)描くことを求め、それに応えるとほめてくれるからです。単純なことです。
ただし、酒井式は「親も喜ぶ」とも言っていますが、必ずしもそうではないことを私のところに届くメールからもわかります。
さて上の絵は12月、外で雪遊びをしたうれしさが伝わってきます。普段は指など描きません。
雪がありますから当然雪玉をつくるわけです。どうして指を描いたかおわかりなるでしょう。
また足下を見てください。これは冬用の長靴なんです。これもはじめて描きました。帽子も被っています。横の波のように見えるのは雪です。
雪の中で遊んだ喜びが伝わってきます。子どもは絵を描きながら、そのときの面白さを追体験すると共に、親にお話として伝えています。
下の絵は春に描いた想像の絵です。クロッカスやタンポポの種も見えます。みんな笑っています。すべてのものに命を感じている。目の表現などを見るともううれしくてたまらないといった感情も伝わってきます。(酒井式で指導されるとこのような目は描きません。)
それから、右の手から伸びている緑の線の先に青のかたまりがあります。これは花で、蝶々に花をあげているのです。つまり絵の中で、絵を描きながら遊んでいるのです。赤の長方形などの意味は今となってはわかりませんけど。蝶々や花に囲まれて喜んでいる子どものその心にこそ、共感してこそと思います。
この頃は一生懸命絵を描いては親に説明してくれました。「あのね」で はじまるんです。これらの絵は決して「幼稚」などというべきものではありません。逆にこの絵に向かって「上手だね」という言葉だけだとしたら子どもの思いを受けとめたことにはなりません。
この時期に私の子どもだからこそ描いた絵なのです。
酒井式描画指導はこのようなその子だけ(一人一人は違う存在です。)が感じる子どもの心や想像する楽しみは、知ることはできません。
酒井式を広げようとしている方に言っておきたいことがあります。子どもの心や力を育てる教師は子どもに題材を提示するまでのその過程で深く考えています。ですから、そのような授業を見たら、どうして子どもが喜んで描いているのかわからないでしょう。
なおもう一つ、言っておきたいこと。小学校で酒井式の指導をされると中学校では困ります。指示されないと絵を描けない子になっているからです。だからマイナスから始まるのです。
なお、上記のような私の考え方は教育関係の大手出版社明治図書の月刊誌で活字として「全くデタラメな意見」「口汚いののしり」と言われています。なお文章を書かれているのはこれまた有名な向山洋一氏です。
酒井式の描画指導法講習会は教育委員会でも後援しているところもあります。なお、酒井氏はもと北海道教育大学函館校の教授であります。イメージとしては国立大学の教授ですから、信用もするでしょう。
さらにあの教育テレビも酒井氏の授業をテレビ番組をつくりました。今もwebサイトで紹介されています。つまり世間から一定の評価を得ているということになります。酒井式描画指導法はもちろん悪意を持ってやっているわけではありません。しかし、残念ながら、子どもの表現の本当の喜びを結果として奪いとっています。
>それは幼児は上手に絵を描くために絵を描いているからではないからです。
>しかし「上手だね」を連発していれば子どもは「上手に描く」ことが絵の価値と思ってしまうでしょう。
私は一度しか酒井式の授業を見てないのですが(小学生の間に座って同時に別のものを描いていたので、半体験といったもの)、そこでは一人の先生が教壇で指示し、複数の先生方が子どもたちの間を回るというスタイルでした。
で、子どもたちの絵を見て回る先生方は何をしているかと言いますと、「すごい」「上手だね」「その調子」と声をかけて回るのですね。
それが、子どもたちの絵を眺めてから発する言葉ではなくて、見ないうちから声をかけるのですよ(;__;)。
その様子に、気持ち悪さを感じました。
少なくとも、子どもたちの絵を見て、子どもの顔を見て、それから言って欲しかった。マニュアルにあるから、ただ声をかけて回るだけではなく。
(つづきます)
というわけで、私の見た授業は、
「子どもが満足する」以前のものでありました。
(少なくとも高学年になれば、その違和感には気が付くでしょう)
ところで、子どもが通ってる小学校で市内各学校からの優秀作品の巡回展示があったのですが、それを見ますと、どうやら私の知っている先生以外にも酒井式を導入しておられる方がいる模様です。子どもたちの発想の時間がつぶされているかと思うと、いたたまれません。
それにしても、教師の声かけそれではダメですね。酒井氏はテレビでは優しい笑顔で「君、天才!」を連発していました。これは評価するのではなく「おだてている」だけですね。
残念ながら酒井式はもはや無視できる存在ではありません。困ったものです。
「子どもたちの発想の時間がつぶされているかと思うと、いたたまれません。」ということどうしてわからないのでしょう。
でも酒井式がなぜダメかということを発信している限り、気がついていただける方も増えてくるだろうと思います。
相手は巨大な組織ですが…。とにかく言い続けます。
おかげで私のことを過激だと思っておらる方もいらっしゃいますが、子どもの大切な成長を踏みにじることについて淡々と書いているだけです。
子どもの表現を奪い技能指導になるリスクがあるこのような手法が広がっていることは看過できないと感じています。
情報収集して論点を整理したいと思います。
https://www.seishinsha.co.jp/book_s/detail.php?b=30