鬼丸吉弘「創造的人間形成のために」
2013年 01月 17日
さて、ここに紹介させていただいた「創造的人間形成のために」は、一般の方が読まれてもよいような内容になっています。実際に子どもを前に指導される先生にこそ強く強くお勧めしたい本です。
特に図工の指導が苦手とかよくわからないなどとおしゃっておられる方や大学生には最良のテキストになると思います。
本書の中で鬼丸先生が厳しく批判されておられる間違った指導などは実はいまだによく私も見聞きします。簡単に言うならば子どもの絵が大人の絵とくらべて稚拙というとらえ方です。まったく成り立ちが違うにもかかわらず。
いまだある作品主義的な指導。(私もかつてそうあることが指導力と考えていました。)本の中には「子どもの手を借りた大人の絵」という言葉も出てきます。
さてこうした児童画の発達について書かれた本で中学校段階の指導について述べている本は少ないのですが、本書にでは例えば以下のように書かれています。
中学生の段階になるとやや違ってきます。造形形式について「教える」ことが可能です。
ただ誤解をしてはいけないことは、この場合も、知的な教科とはっきり区別しなくてはならないことです。つまり「教える」とは、「そう描かなくてはならない」、「そう描くのが正しい」という意味でなく、「こういう描き方もある」、「勉強のためにひとつこの描き方で描いてみよう」という意味で教えなくてはならないということです。
さまざまな描きかたがあるのです。人間は本来、どの描きかたを選んでもいのです。それらの描きかた、造形形式自体は相互の間に、価値の差はないのです。
ここで鑑賞教材の使い方が意味を持ってきます。(p111)
大学生の時に受けた鬼丸先生の講義を思い出します。(なんと幸運なことか!)
鬼丸先生の大事な言葉。
「描画は子ども時代の、またとない創造訓練の場である。自発的表現を待たない「指導」は創造の芽を殺してしまう。」
《関連記事》
☆ 児童画への理解が足りない(その1)←鬼丸先生が勧めておられる本「ローウェンフェルド「子どもの絵ー両親と先生への手引き」について紹介しています。
☆幼児の絵をどうとらえるか…林 健造さんの言葉
☆ これが幼児の絵!? 魔法の酒井式描画指導法
☆酒井式の放送後考えたこと
☆ 子どもの絵を10倍たのしむ方法
*この記事は2007年5月に書いたものです。一人でも多くの人に読んでほしいので。再掲載しました。
この本は多くの方々に読んでいただきたいですね。
ありがとうございます。
私もこの本は素晴らしいので「教育美術」という美術教育雑誌で紹介させていただきました。
私の家から札幌も近いです。何かの縁ですね。
大変興味深い 授業でした。ただ今、ローマ在住しています。先週末 フィレンツェに行って来ました。建築、 絵画、 彫刻。授業での 感動が 蘇りました。 感慨深く鑑賞しました。先生にお礼を書きたいのですが 先生の連絡先ご存知でしたら教えていただけますか?
このブログで紹介してくださった 「創造的人間形成のために」は
まだ 読んでいませんが 心から共感して読みました。帰国したら読んでみたいです。 ご紹介 ありがとうございました。
いいですね、ローマ在住ですか。さて、「創造的人間形成のために」は、かつての先生の著作よりも、非常にわかりやすい内容になっています。
これは、大変重要なことだと思っています。
授業をつくりあげる上では経験や実践から学ぶだけではなく、こうした理論の勉強も大事ですね。現在取り組んでいる中学校美術Q&AのQualityを考えるとき大変役に立つ本ですね。