モダンテクニックについて再考する

(2008年5月初掲載)

中学校美術でモダンテクニック(注1)が取り上げられる場合、意外とあるのが、その技法を使うことを条件として作品を「作らせる」方法。

例えば想像の絵などを描く時に「使わせ」、表現の幅を広げようとねらったもの。あるいは、モダンテクニックから出発してそれをもとに作品化させるものなど。
モダンテクニックが絵が描けない子(実は描けないと思い込まされている、あるいは思いこんでいることが多いのですが)の救済措置的に扱われることもあります。

私がやっているのは、モダンテクニック的なものを紹介し(目の前でその行為も見せます)。これから絵の具でやることは「必要があれば、表現に取り入れてください、表現の幅も広がることもあります。」というものです。
何よりモダンテクニック的なもののおもしろさを味わってほしいということ。簡単にいうならば、色と形と材料を楽しむということです。

そしてこのような時は「モダンテクニック」とは言っていません。「色や形を楽しむ、しかも体を使って」という言い方です。
でも条件をつけます。それは、同じことを何度かやってみること。そうすると発見があるからです。

1回目は偶然が主でも、2回目は工夫するようになります。そこに、子どもの「学び」がうまれていきます。
このような行為の中で、子どもは「あ、失敗した!」なんていいます、笑顔になったりもします。その行為の中に鑑賞と表現が相互に影響しあっているということも読み取れます。

昨日、選択教科美術の時間ある3年生が抽象をやってみたい(必修でやっている)というので、絵の具で遊んでみること提案しました。
2時間で4つ切画用紙で4枚の作品(?)をつくりあげました。使った絵の具は、アクリル絵の具(サクラニューカラー)です。

周囲の汚れを気にしないですむようにしてからはじめました。(床に2ミリのベニヤ板を敷きます。〜これだけで、表現が変わっていきます。)



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絵の具をそろりと画面にたらしました。筆も使ったり。その結果が上のものです。


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2枚目は画用紙に黒を塗ってからはじめました。このあと色を落としていくのですが、なんと、画面から離れ全体のバランスを確かめてやっていました。遊びが表現への変わっていく瞬間です。





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3枚目は白をベースに、思い切り画面の構成を変えています。(この日、ちょうど必修の時間に「構図を変えると、絵はこんなにも違った印象になるということを勉強したのでした)
さて、これらの作品から見ても、色や形や材質を自分の意思でコントロールしていりことがわかります。彼がつくっている姿や表情からもそのことがわかります。自分なりの美しい物を生み出そうとしている姿です。貴重な体験です。




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4枚目はまったく違う傾向です。

こうして子どもの表現(行為)の意味を考えていくことは、とても大切だと思っています。似たようなものを 幼児や小学生もしますが、共通する部分もあり、まったく違う部分もあります。

これらのものを、単に「アートだね!」「ダイナミックだね」「楽しそうだね」というような言葉で片付けてしまえば、そうとしか見えなくなってしまいます。




(追記)2023年2月

*この記事は、当時あった選択教科美術の取り組みです。必修の美術の時間に「抽象絵画」をたくさん鑑賞していますし、この表現(遊び?)の途中に、美術室の抽象絵画を見ていました。鑑賞によっても表現の幅を広げていました。そして何より、個人の絵の具ではなく、大量の絵の具を使えたというのも大きいです。床には薄いベニヤ板を敷いたので、汚れや片付けの心配も無用でした。
なお、このような表現が生まれるためには、上にあがたような、さまざまな背景があるということを、今更ながら思います。
さらに、表現における「試す」しながら「探求」していくことの価値を感じます。

なお、定期テストを実施している学校においては「モダンテクニック」の技法名を覚えることを求めているところもあります。しかし、技法名を覚えることが現行の学習指導要領でいうところの「知識」ではありません。
なお、モダンテクニックについては「副教科(美術)の勉強法」でも、覚えるべきものの一つとしてあげられています。

*美術の授業でもっともポピュラーな学習内容の一つにいわゆる「モダンテクニック」があります。しかし、単にさまざまな技法体験にとどまらせないほうが、良いと考えています。図画工作における「造形遊び」や幼児教育における主体的な学びを生み出すための「遊びを通した教育」「環境を通した教育」とも通じます。

(注1)「モダンテクニック」という言葉は今は教科書等では使われていません。ただし、個々の技法、ドリッピング、マーブリングなどは使われていますので、この記事では、その総称として使っています。

Commented by TAO at 2008-05-10 11:25
しばらくぶりです。テクニックといえば、図工という教科は道具を使う教科だな、とつくづく思います。絵の具用具、木工具、版画用具はむろん、小石、楊枝、竹串、ぞうきん、壊れたホウキ、糸、あげればキリのない、ゴミとしか思えない雑貨の山。それを子どもは「これで描いてみたい、あれでやってみたい」と表現道具として使いだします。その様子を見ていると、子どもはあれこれ試してどうしたらいいか考えています。それが造形遊びの学びになればと思います。理科の実験や音楽、家庭科、体育なども道具を使いますが、1年を通して授業中ずっと道具を使い続けるのは図工だけ。なんとも不思議な時間ですね。彼らは意識はしていませんがエンピツすら絵を描く道具です。(ふだん鉛筆は字を書く用具と思っているようですが)
Commented by yumemasa at 2008-05-10 11:51
TAOさん、道具って手の延長ですね、考えると。そして人間が必要とするから道具が生まれてきた。ということを思い出しました。
 「あれこれ試してみる」これなんですね、こうして美を見つけていく、真理を見つけていく、そんな気がします。
 図工室/美術室の環境は大事ですね。そこで不思議なことが起きていく、いいなあ。
 最近、美術室は何でも見えるようにして置いています。ちょうど、画材売り場に行ってわくわくする感じ、そんな感じを出したいなあなんて思っています。
Commented by tao at 2008-05-10 13:31
画材売り場とはいいですね。私ははやりの100円ショップ風なイメージです。なんでもある。なんでもないものをとんでもないように使うのがおもしろいのです。加えて図工室のにおいなんかいいと思っています。ボンドのにおい、絵の具のにおい、時々木を切ったりドリル作業をすると木のいい香りがモノづくりの雰囲気を出してくれます。
Commented by yumemasa at 2008-05-10 14:08
画材売り場は理想像ですね(笑)でも、実態は…
今、美術室のうしろに木片を積み上げていますが、選択教科では自由に使ってもらうようにしています。
においについては、化学物質過敏症なんかもあるので、ちょっとわかりませんけど。
この前、休み時間JAZZとともにスライドショーで映像を流していたら評判よかったです。
うーん、「モノづくりの雰囲気」よい言葉ですね。石狩では「環境の構成」と言っていますが、ちょっとかたいかなと思いました。「雰囲気」これ大事ですね。醸し出す何か。
Commented by hakusuke at 2008-05-11 21:32
>技法を使うことを条件として作品を「作らせる」方法
私はこちらの指導だったんだなぁ・・・と考えさせられました。また,記事の内容,コメント内容から自分の指導内容を見つめ直そうと思いました。無理に作品にする必要があるのか?本年,美術教師と体育教師のかけもち状態なので,急がず焦らず題材の検討しているところです。
Commented by yumemasa at 2008-05-11 22:44
hakusukeさん、こんばんは。精力的、いろいろ書かれていますね。応援しています。
題材の検討、じっくりするといいですね。やはり何を育てるのか、そこなんだと思います。
私は、指導書もいいと思っています。教科書の会社が必死になって、現場と協力してつくってきているものですから、やはりそこから学ぶことは多いと思うのです。
さて、このモダンテクニック(?)、選択教科のときにでも、広々とした場所で、体全体を使って、何度も取り組むと、もう、それだけで、おもしろい。色や形が目の前で刻々と変化ししていく、おもしろいです。それを生徒にも味わってほしい。もし小学校で十分体験していたら、また他の展開もできますいしね。
あとは、題材を考えるときは、他の題材と、どうつながか、それがポイントでしょう。
Commented by yumemasa at 2008-05-11 22:48
(続き)あせらず、じっくりいきましょう。私も、いつも、もっとよくならないかな、と考えています。
卒業した後、どんな大人になっていてほしいか、そんなこと考えているんです。
やはり、「美術が好き」がいいのですけど、日常の中で美を大事にしていて、それを楽しめる感覚も大事にしたいです。
Commented by kaioka at 2008-05-12 20:50
最近、ブログが壊れているのか、トラックバックやコメントが入っていてもメールで通知されないのです。ですから、こんな風に取り上げていただいていることや、ここのコメント欄が盛り上がっていることも気づいていなかったのです、とほほ。
マーブリングとスパッタリングの体験もも同時期にやりました。数人ですが、それぞれの技法のファンやオーソリティが生まれ、放課後までやりにくる生徒がいたのが収穫でした。
Commented by saibikan at 2008-05-14 21:20
お久しぶりです。山崎さん。
モダンテクニックって??モダンアートと関係あり??と思いながら読んだところです。中学生の表現はさすがだな、と皆さんの報告を読んで、子ども達の感性におもしろみを感じました。
ところで私は小学校に勤めています。実は「う~ん、小学校でやった絵の具遊びも、これと同じような実践やナア」とも思ったのです。「モダンアート」と「絵の具遊び」・・・言葉でイメージは実に違うが、小と中の違いはあるが、基本的に同じ??中学校の先生方教えてください。それぞれの違いがどこかにはあるはずですよね
ちなみに私の実践はここです↓
         http://iroiroart.exblog.jp/4564549/
         http://iroiroart.exblog.jp/4564981/
         http://iroiroart.exblog.jp/4569937/
Commented by yumemasa at 2008-05-14 23:13
kajiokaさん、「技法のファンやオーソリティが生まれ、放課後までやりにくる生徒がいたのが収穫でした。」っての、すごい
うれしいことですね。ニンマリです。
実は今日の昼休み水彩でスケッチしたいなんていう生徒が出てきたり。
とにかく、モダンテクニックを添え物みたいな扱いにするのはどうかと思っていたので。KAJIOKAさんの記事が何かよかったんです。
というわけで、愛読していますよ!Bside.

Commented by yumemasa at 2008-05-14 23:44
saibikanさん、コメントありがとうございます。
実はこの「絵の具遊び」あるいは「モダンテクニック」似ていて違うということも結構あります。
今回記事で取り上げた生徒のものは造形遊びに近いです。
これは、物理的に大きいことがその傾向をさらに強めています。
色を使ってわくわくする感覚は、小学生と同じでしょうが、中学生だとやっている最中に手をとめて、しばらく作品を見たり、また、続けるとか…。絵の具を楽しみながらも全体の調和を考えていたりするわけです。
by yumemasa | 2023-02-15 01:15 | 美術の授業(山崎) | Comments(11)

「美術教育」や「自然」に関するブログ。人々がより幸せになるための美術教育について考え、行動します。北海道北広島市在住。中学校教諭32年、大学で幼児教育・初等教育担当8年。現在、時間講師。


by 山崎正明
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